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4-8

「10倍の防護魔法を上掛けしてもこの有様ですか……」


 あちこちヒビ割れた広間を巡回し、床や壁を魔法で修復する鳩野さん。


「紅音ちゃんが怒るからって、二人とも一応は気を遣ってたみたいよ?」

「それより早く母さんを起こしてください。多少強引にでも」


 静香のチート即死で仮死状態のマミさんとクラブ国王。このまま放っておいても数時間後には蘇生するらしいけど。


「おじゃましますぅ〜。ウチの国王がノされたと聞いて引き取りにきましたぁ」


 根っこワークで情報を得たであろう侍女姉さんが、タイミングよく訪れる。


「気付け薬を持ってきましたよぉ」


 こんもり盛られた粉薬。


「これを飲ませれば一発です、あの世に!」


 良く効く薬みたいにサラッと危険な効能を説明したよね!? いや、ある意味良く効くんだろうけど!


「侍女姉さん? 俺の聞き間違いかなぁ。ただの気付け薬ですよね?」

「モリサギ様ぁ、当たり前じゃないですかぁ。ただの気付け薬ですよ? 国王に飲ませて世代交代ですっ♪」


 侍女さん口調でニッコリと、後半は不穏な本音を極めて明るく漏らしている。


「ぜひ私の母にも飲ませたいので、分けてください」

「いいですよぅ。タンゴ博士が作ったと言われる『ラ・クンパルシータ』です。どうぞ」


 ソレ飲ませちゃいけねぇやつ!!


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■


 もともと桁外れな二人。爆散することもなく、数分で目を覚ます。


「で、どうなんですか? 母さん」

「非力な娘の頼みとあっては断れないけど、いいの? ゲームバランス崩れるわよ」


 気が抜けたのか「ふあぁ」と伸びをし、半目で聞いてくる。

 いつ見ても慣れない、なんちゃってセーラー服……裸になるのを抑える『制裸服』で、だらしなく胡座をかくマミさん。ダメージ具合(主に服の)もあいまって、あられもない姿だ。


「ゲームじゃないのよ? マミちゃん。ダイヤ国の女王も人質に取られて、結構大ごとになってるの。あと、ソレ隠して。楓麻クンには目のど……罰ゲームでしょっ!」


 自己修復が追いつかない『制裸服』のスカートからのぞくマミさんの健康的な脚と、繊細なレースをあしらった魅惑のシルク製品を小さな手で隠そうと奮闘するメリルさん。


「失っ礼ねー、見せつけるパンツだからいいのよ!! そしてなぜ言い直した? たいして意味変わんないけどねっ」


 見せつけるパンツってなんだよ……


「杜鷺君。鼻の下伸ばしているようですが、同年代に見えても年増ですよ? あっ、熟女「も」いけるクチでしたか」


 なにが「も」なのかわからないし、ちょっと目が怖いよ鳩野さん。


「もー、しょうがないわねぇ。ミケーニャ遠征中フウマちゃん寝取ってあげるから、紅音は私の代わりに女王でもやってなさいな」


 まばたきひとつの間で、ガントレットを装備した鳩野さんと母娘で力比べの態勢になっていた。無言だが、視線は火花が見えるほどに衝突している。

 マミさんが絡むとなんか短気になるよなぁ、鳩野さん。


「話すすまないっ!」


 両手の塞がったマミさんの鳩尾へ、業を煮やしたメリルさんが渾身の右スマッシュを決め、マミさんの脱線を強引に戻す。

 結果、この短時間で鳩野さんはまた両腕をもっていかれ、治療のためマミさんと入れ代わりに留守中の女王業を渋々務めることとなった。


「ところで、ワシも参加したいんじゃが?」


 ダメージの回復したクラブ国王が、誰に言うともなく声をかけてくる。


「実はこの勝負、男子禁制なんですよぉ。残念ですが国王様は参加資格がありませんねぇ」

「ソコのハート国勇者はどうなんじゃ! どう見ても男ではないか!」

「よーし、良い度胸だ。『セオリー・ブレイカー』!!」


 羽交い締めで静香をおさえる。


「ホント、話すすまねぇなっ!」


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