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「杜鷺君はゴネてないで、さっさと挑戦受けましょう。何をもったいぶっているんですか?」
そんなつもりはないんですが……
「アタシもハートの魔法使いに賛成ね。サクッと即断しなさいよ! 結局勝負するんだから」
バトルは不可避と諦めているのか、意外にもピョン子はやる気だ。
「うちは女王取られてるし、ナルシストな男は個人的事情で敵認定してるの。杜鷺がどうあれワタシは受けるわよ」
霊仙寺はダイコンがトラウマになっているようだ。
「私も嫌いなタイプだわ。琴ちゃんには大きな借りもあるし、手伝ってあげる」
普段、無関心な静香まで……うちの連中はみんな好戦的だなぁ。
『お嬢さん方は乗り気のようだね。勝負方法はクラブのお姫様にちなんで試合形式なんてどうだい?』
「「手加減できないわよ?」」
ピョン子と静香がハモる。確かにこの二人なら能力発動で一発だ。
「コイツら文字通り手加減できないんだよ。話し合いとかはないのか?」
『舐められたものだね。こちらのメンバーはミケーニャ帝国の七大将軍だよ? そんな手踊りウサちゃんや女の子相手に負けるわけないさ』
俺達の情報は行ってないのか、自信があるのか。無知って凄いな。
「……って七大将軍!? ニンジンやダイコンみたいのが七人もいんのか!」
『ぽっと出の食材と比べられるのは心外だね。ま、三日待つから、七人集まったらおいでよ』
キザな投げキスを残し、スクリーンが消失する。
「七人集めろって言われてもなぁ」
俺+ピョン子、静香、鳩野さん、霊仙寺、侍女さん。グルリと見回してざっと五人だ。
「あ、私は中立なので勘定しないでねぇん。会場の準備とかあるからまたねぇ」
やる気だよ! 侍女姉さん、絶対ブックメーカーとかやる気満々だよ!
「あと二人か……」
人選を考えていると、下の方から袖を引かれる。
「ご主兄様のおてつらいする」
非常に心強いプロディちゃんの申し出。自分が賭けの対象になってることも理解していないと思うが、自ら運命を切り開くか。
「ありがとう、期待しているよ」
つま先で背伸びをし、丁度良い位置に頭を差し出しているプロディちゃん。置いた手の平から心地よいサラサラの質感が伝わり、勝手に指先で左右に撫でてしまう。
「楓麻。あんた最低ね、こんな幼女を頭ポンポンひとつで戦場に駆り出すなんて」
それを真似て突き出すお前が言うな。とりあえず戦力としては一級品なので、妥協ラインとして揺れるポニーをクシャリと雑にあしらっておく。
「あら、意外。もっと姉にデレてもいいのよ?」
みんなの前で何をさせられてんだか……あきらめにも似た溜め息が漏れた。
「杜鷺君。私に名案があります!」
頬を赤らめ、少しだけ頭が近く感じる鳩野さんが挙手。
「ャッ……あの人、母をぶつけましょう! 上手くいけば共倒れを狙えます」
今、鳩野さん「ヤツ」って言ったような? そんなにマミさんと仲悪いのかな……
「橙愛ちゃんは混ざらなくていいんですか? あの腹黒姫さえ勇気ふり絞ってるみたいですよぉ? 肝心のモリサギさまは「いつも通り」気づいて無いようですけど……ププッ」
冷めた目で俺達を眺める霊仙寺と、なにやらニヤニヤ耳打ちしている侍女さん。
「もういいかしら? あと一人は誰にするの」
「あと一人?」
「たぶん、当然のようにアカネも入れてるわよね? 残念だけど彼女は戦力外よ」
勝手に強いと思っていたけど、そうか。かつて鳩野さんの無双装備だったリフレクトメイルは現在、彼女から託されて不甲斐ない俺専用となっている。ガントレットで単身でも攻撃魔法が撃てるとはいえ、格闘や剣術のスキルを持たない鳩野さんに不利なのは当たり前だ。
「そうだったんですか? 私を買い被りすぎですよ、杜鷺君」
離れ際、一瞬さびしい笑顔に見えたが、まばたき一つの間にいつもの鳩野さんに戻っていた。




