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4-4

「まぁまぁ、モリサギさま。勝てばいいんです! 調子乗ってるワガママ帝王やっちゃって下さいよぉ」


 そんな乱暴な……


「ちょ、近いです」


 芸風の定まらない侍女姉さんが、ザマスフレームを少し下げ、上目遣いでネコっぽく肩からすり寄ってくる。


「杜鷺君を巻き込むのは勝手ですが、あなたに何のメリットが?」


 ザマス眼鏡を取り上げ、それとなく間に入ってくれる鳩野さん。


「そりゃ、ありますよぉ? 最初に言った通り『みんな』にもね」


 俺の頬に手のひらを添えたまま、クルリと身を翻す侍女姉さん。そのまま後ろに回り込まれ、しなやかな指先で両肩を掴まれた。肩越しに感じる甘い吐息と視角に入る高い鼻先の距離感に困惑する。


「まず、モリサギさま。勝負に勝てば、さらにモテモテ!」


 さらにの意味がよくわからないんですけども。


「次にアカネさまとダイアさま。意中の彼が、お二人のために奮闘する姿が見られますよ? あとが無い分、彼の必死具合……お二人への愛が確認できちゃいます!」


 少しだけ二人の視線にキラキラ感が混じって見えるのは、夏の日射しのせいだろう。


「でぇ、わたしは姫さま譲渡代金+ハート&ダイヤ姫紹介料がもらえる上、モリサギさまが勝てば姫さま奪還で無罪放免! お金しか手元に残らなぁい♪」


 清々しいポジティブシンキングだ。


「勝負内容も知らないし、正直、勝つ自信は無いんだけど……」


 いきなり責任重大な立場に置かれて及び腰の俺。

 そんな中、霊仙寺の携帯へジャックから緊急連絡が入った。


『申し訳ありません、姫! 女王様が誘拐されましたっ』


 またかよっ!? こう言っちゃなんだが、TCUの警備体制「ざる」だよな。

 電話口から漏れる声に聞き耳をたてる。どうやら、こちらの世界での仕事終わりを狙われたらしい。

 霊仙寺は彼らを気遣ってか「相手が格上だったと思いたい。そうでなければ立場がない」的な事を言っている。

 更にこのタイミングでミケーニャ帝国から強制通信が。


『ハロぉ〜、同士フウマ』


 全員が囲むテーブルの上に魔力のスクリーンが浮かぶ。


「誰よ、このイケメン。アンタの知り合い?」


 画面に映る猫耳男子の顔に前足を突き刺し俺を見上げるピョン子。


『初めましてだねぇ。僕がヤミの帝王だよ』


 少し長めのクセっ毛はウザを感じさせず、むしろワイルド感を醸し出している。


「コイツ、ダイコンと同じ臭いがするわね」


 アクター桜島か。ナルシストっぽい感じは似てるな……天然のダイコンと違い、仕草のひとつひとつが計算されたみたいでイラッとくる。


「あぁー……杜鷺や野良勇者が嫌うタイプね」


 まさにそうだよ、正論すぎるよ霊仙寺。


『なぁ〜んか煮え切らないっぽいから強硬策をとったよ。キミ、お気に入りの声優が絡むとモチベーションが跳ね上がるんだって?』


 犯人はコイツか!


「スズメさんは関係ないだろ」

『本気のキミと戦いたいんだよ。持ってるんだろ? 『魔界の姫』を。僕は彼女をコレクションに加えたいと思っている』

「なんだよ魔界の姫って」

「とぼけるなよ、魔王軍のお姫様さ。大魔王メリルの娘……メリフェスだっけ? 会ったこと無いけど、隷属させてると聞いたぜ?』


 メリフェス、ただの球体だけどな。メリルさんが創ったから、娘=姫ってわけか。たぶんプロディちゃんのことだろう。


「隷属ってなんだよ? 穏やかじゃねーな」

『おやおや『生プリスト』の言葉とは思えないね』


 まず『なまぷりすと』を説明しろ。


(モリサギさま、生きたプリンセスマニアの俗称ですよ。基本は「大きな声で言えない行為」で姫を隷属させて、生きたまま傍に置いている紳士のことです)


 理解してない表情を読み取ったのか、侍女姉さんがソッと耳打ちしてくれた。


「どこのエロゲ主人公だよ!」


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