表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/154

4-3

 気まずい数分の沈黙を経て。


「別の意味でヤバいな、病みの帝王」


 ホントに病んでますもん。斜め上すぎますもん。


「欲望にまっすぐな、かなりの上級者と聞き及んでおりますぅ……」


 上級者ってレベルじゃねぇ。


「ミケーニャ帝国って初めて聞いたんだけど、どこら辺にあるの?」

「海に浮かぶ猫だらけの孤島です。ケットシーをはじめ、猫系のモンスターが多く生息することからマーシー島と呼ばれています」


 セミロングをはずませ、可愛く「ニャー」とする侍女さん。たぶん漢字表記の島なんだろうけど、マーシーが何かは聞かないよ。


「その猫の島を支配している『病みの帝王』は、やはり魔物でしょうか?」


 気を持ち直した鳩野さんが問う。


「はい二つ尻尾の『キャット・トゥー』です。何百年ぶりに誕生した三毛タイプのオスでしたので、ワガママ放題に育ったようですねぇ」


 エルマナでも三毛猫のオスは貴重なのかな。


「先代は凄い方で、あの三蔵法師さま御一行と旅をしていたと聞き及んでおりますぅ……」


 いやいや俺の知ってる西遊記は、猿・豚・河童・馬(龍)のパーティーですよ?


「イィーーッキシッ!!」


 突然ピョン子が変なクシャミをする。そうかそうか、ミケーニャ帝国といってもエルマナだもんな……

 ヒント:キャット・トゥー=Cat Two


「その西遊記、正史じゃねーよな!? 酒瓶持ってるイメージしかねーよ!」


 侍女さん相手に、普通にツッコんでしまった。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■


 軌道修正して。


「交渉のテーブルが用意できればいいんだろうけど、その材料がないからなぁ」

『お困りのようね』


 侍女さんの背後の空間が波打つように歪み、ブロックノイズが人の形に変わる。


「姉さん!?」

「だまって聞いていれば、わたしを守銭奴みたいにぃ。ま、そうなんだけど。こんにちはモリサギ選手。ちょっとオジャマしますよぉ」


 侍女さんの隣に並ぶ双子のお姉さん。やや癖っ毛であることを除けば、俺には区別できない。


「なのチビ以外、皆様お揃いのようでぇ」


 ホント、その場にいない他国の姫には容赦ないな。


「姉さん! 姫様売り渡してどういうつもり!?」

「まぁ聞け聞け聞け」


 てさぐり部の初代部長にも似た口調で妹を制すお姉さん。


「みんなが得するお話しを持ってきたんだからさぁ。それなりにリスクはあるケドねぇん」


 ニャハハと笑うお姉さん。基本は侍女さんに合わせているのかもしれないが、明るい振る舞いの中に、侍女さんにはない妖艶さが見え隠れする。


「わたしの計算通りぃ『病みの帝王』が勝負を持ちかけてきましたぁ」


 どこから取り出したのか、鳩野さんのザマス眼鏡を拝借したお姉さん。キッチンのホワイトボードを外し、インテリ上司気取りでテーブル辺の短い位置へ移動する。


「まずウチの姫様の件ですが。ハート国勇者が助けに行くことを見越して帝王と取引しています。つまり、モリサギさまが出張るということはぁ当然キミを放っておけない、腹ぐ……ハートの姫様と重りょ……ダイヤの姫様もくっついて来るってことでぇ」


 どうにも要領を得ない。


「ま、ザックリ言うとこうです!」


 ザックリ好きだなアンタ達。家族の連絡ボードに殴り書きするお姉さん。


   『勝て!』


 ザックリすぎて一悶着あったけど、こういうことらしい。

 ●ミツバ姐さんを賭けて『病みの帝王』と勝負。

 ●俺が勝ったらミツバ姐さん奪還。

 ●負けた場合は鳩野さんと霊仙寺俺が『病みの帝王』のものに。


「なんで俺が鳩野さんと霊仙寺の所有者みたいになってんの?」

「話を円滑にするため、モリサギさまも同じ蒐集家だと私が吹き込んでおきましたぁ」


 なんてことを!


次回更新は6月5日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ