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第4章 1

 トレーディング・オブジェ。

 退治したレアモンスターなどを特殊な魔法装置でフィギュア化したもの。

 国や個人の勲章的意味合いが強く、城内や庭園に飾られることが多い。

 近年、急速に発展した技術で対象を生きたまま小型化可能に。

 裏世界では、この『まるで生きているような(実際生きている)』オブジェが高額で取引されている。


「と、まぁエルマナより遙か東の国では、密かな生体フィギュアがブームのようですねぇ」

「ミツバ姐さん、人身売買の商品にされちゃったの?」


 メリフェス消滅から一夜明け、ミツバ姐さん救出の緊急会議がなぜか俺の家で行われている。

 参加者は長いセンターテーブルを挟んで俺の右にプロディちゃん、左に侍女さん、対面は静香、鳩野さん、霊仙寺だ。

 脱兎したピョン子は一人キッチン側のテーブルを占拠し、侍女さんがお土産に作って来たプチケーキを頬張っている。


「ねぇ、楓麻。お姉ちゃんの知らないコが2人増えてるんだけど」

「あぁ、こちらは……えぇっと。あれ? そう言えば俺、侍女さんの名前知らないや」

「おかまいなく~。『侍女さん』のままで結構ですよぉ? ちなみに、私の名前を知ったら『侍女さんルート』に入るので気をつけて下さいね」


 控えめなメイド服を着た侍女さんが、あはははと明るく笑う。


「琴ちゃんの侍女さんね。で? あんたにくっついてる男子の妄想体現者みたいな女児は誰よ? 見た目、破壊力バツグンの幼女よね」


 幼女って……都とたいして変わらないと思うけど。プロディちゃんの白く尖った顎をクイッとして、プチケーキを「あーん」させる静香。


「この子はプロディちゃん。プロミディアさんが造った依り代なんだけど、いろいろあって……」


 口の端にできたチョコのヒゲを拭き取ってやると、屈託ない笑顔が左右に揺れた。


「杜鷺君、一級建築士ですものね」

「何本立てれば気が済むのよ? お姉ちゃんのトコ折れてないでしょうね!?」


 安心しろ、もともと実姉妹にフラグは立ってねぇから。


「今はそんなバカ話してる時じゃないんだよ! 早くミツバ姐さん助けなきゃ」

「冷静に考えると、相手は現役の黒帯王と互角以上ってことよね? ワタシの時みたく、誰かさんに裏切られた訳じゃないんでしょう?」


 心を抉る霊仙寺。まだ根に持っているご様子。


「アタシ分かっちゃった。もくもぐ……ヤンキーギャルだからだわね、逆に。アンタもギャルとかヤンキー苦手よね?」


 そうか、野良勇者にしてみればミツバ姐さんは楽勝の相手なんだ。


「うるさいよピョン子、だまって菓子食ってろ。確かに苦手だけど、攻撃無効を純粋な力だけで押し切れるんだよ姐さん達は」


 夕日をバックに野良の山頂で一服していた侍女さんがその証拠だ。


「それがぁ~……大変申し上げにくいのですケド、私の姉が一枚噛んでるぅゴニョゴニョ……」

「「「はぁ!?」」」


 予想外の事態だ。力がすべてのクラブ国じゃなかったら大問題間違いなしの案件。


「はいぃ。姉もそうですが、厄介なのは出荷先でぇ……蒐集家、それもプリンセス・コレクション、プリコレとかプリシタンとか呼ばれてる『お姫様専門』のコレクターなんですよぉ。ちなみに、騎士専門はローディスト、剣闘士専門はグラファーなどというそうです」


 なんか馴染みのある黒歴史的語感がするよ? いずれにせよ、専門の蒐集家なんて俺を含め、総じて厄介だからなぁ……なんか申し訳ないです。


「国王はなんて?」

「はぁ。美少女巨乳剣士でもなく、魔女っ子メガネでもなく、ヤンキーギャルのミツバ姫さまが選ばれたことに感激していてぇ……」


 ダメだ、あのジジィ話しになんねぇ。そしてエントリーされない慧衣子先輩……哀れすぎる。


「無事に救出できれば姉も私もお咎めなしですのでぇ、どうか皆さまのお力添えをお願いします」


 深く頭を下げる侍女さん。


次回更新は5月30日の予定です。

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