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「ご主兄様……」
俺のダメ絶対音感が即座に反応する。その前に『ご主兄様』ってなんだよと思うが、些細な事。
「この声って」
テレビ版7番目の姉妹を想起させる、すき通った声質+同・6番目のマスターを加味した、舌足らずギリギリのキューティーボイス。
「アンタの好きな大野スズメじゃないの? 分かりたくないケド」
さすがピョン子。俺が毎日スズメさん登場作品を強制視聴させた成果だな。僅かなフレーズだけで判別できるのは縞ウサギの能力なのだろう。
「大丈夫か? プロディちゃん」
「らい丈夫。敵を排除する」
やっべぇえーーっ! 大野スズメさんの声で、『だ行』が『ら行』になっちゃう女の子!!
「破壊力(俺特化)ハンパねぇーーっ!! ありがとうございますっ、生きててよかった!!」
周囲がドン引きする中、思わずプロディちゃんをギュッとして感謝をのべた。
「ちょ、ご主兄様。危ない。離れて?」
カワイイ両手を「ん〜」とつっぱる。どちらの意味も受入れて、プロディちゃんから離れた。
メリフェス同士の戦い巻き込まれない位置まで後退すると。
質素なスリップドレスに近かったプロディちゃんの服は、良いメリフェスと超粘土の特性なのか、俺が声質からイメージしたゴスロリ風の衣裳に変化していた。
「無敵すぎる……」
「何に対してよ? バカなの?」
『『『おぉー』』』
野良勇者一同からも感嘆の声が漏れていた。ピョン子、これが世論だ。超狭いけど。
「さぁ、プロディちゃん! 反撃よっ」
ヘッドドレスに腰掛けるプロミディアさん。本来の持ち主である彼女がプロディちゃんをサポート。
「両うれのコアを廃棄」
両腕を交差し、自らの肩へ爪を立てるプロディちゃん。ズブズブと手首まで押し込むと、悪いメリフェスごとダメージの大きい磁気球体を引きずり出し、投げ捨てる。
見かけによらず硬派な部分もあるのかな?
ひび割れた磁気球体とはいえ、1基でも莫大な魔力を生み出すコア。メリフェスは直径5cmほどのそれを両サイドに浮遊させ、プロディちゃんを攻撃。
「この子のダメコン能力を甘く見ないでよぉ! 2基のコアが無くても残り6基で四肢の制御を補えるんだから」
鉄人かよ!
「凄いですね。あれだけ地水火風を織り交ぜた攻撃を受けているのに、ダメージは軽微です」
俺の隣で、あまり見せない驚きの表情をする鳩野さん。本当にハイスペックだと言う証だ。
「しかもノーガードなの」
「慧依子先輩!? いつの間に」
観戦に夢中で気がつかなかった。
さらに周辺をみまわすと、うずたかく積まれた野良勇者の山がひとつ。その頂に腰をおろし、落日を背に煙をふかす侍女さんは絵になっていた。
俺の視線に気づくと、あわててタバコを隠し笑顔で手を振る。
「私が知らない間に超進化してるの。でも、あそこまでの能力は無いはずなの」
「姫、おそらく我々が用いた『女神の欠片』の影響かと……」
隊長さんが進言する。そういえば、あの変な呪文で融合させてたっけ。
「女神の欠片?」
「キヤロト様が神殿跡で回収した女神の頭部だ」
斬首されて、炎の中ころがっていたプロミディアさんの頭……石化充電中だったのが救いか。
「だから魔法が透りにくいわけですね」
なるほど。するともうひとつの材料は……
「あ! サンプルって、スズメさんのボイスサンプルか!」
それならプロディちゃんの声にも納得がいく。
「うむ。機械的な声で命令されるより何倍もやる気が出るのでな」
俺だってそうだ。
「プロディちゃんの構成要素が判明してスッキリしたよ」
「甘いのモル鷺君。まだプロディちゃん8の秘密が残ってるの」
ネタじゃなかったのかよ。




