3-5
「メリフェスと話し合いが目的で来たけど、こんな状態じゃそれも無理か」
ここまで末期っぽいとは予想していなかった。言葉を交わす事も叶わない。
「時間切れだ。勇者に邪魔されるくらいなら、フェスを強行する!」
キャトロが発光すると同時に、メリフェスが祭壇ごと上昇して行く。ちょうど舞台がせり上がる感じだ。
「メリフェス、行け! 忌まわしい記憶とともに」
「忌まわしい記憶って、さんざんピョン子に食われたことだよな? やっぱニンジンじゃねーか!」
右手に重さが戻り、俺の目線まで上がる。
「ニンジンが食べれると聞いて」
「どこ行ってたんだよピョン子、なんか色々ピンチだよ」
食い意地が張ってるのか、考えあって戻って来たのか。
「援軍が来たか。……ジェイショッカー部隊は邪神像をステージの上に」
独り言のように外と通信するキヤロト。
「私の勝ちだな。今計算してみたが、メリフェスのコアは邪神の磁力に引かれて融合する」
「ふざけるな! たかが磁石ひとつ、ピョン子で引き剥がしてやる」
「だーかーらーっ、アタシを巻き込むなって!!」
飛行能力の無い俺は、180度ターンで来た道をダッシュで戻る。
扉と衛兵をピョン子に任せ、目を切ること無くキヤロトの追撃に備えていたが。
「メリフェスと一緒に上がったか……」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
遠回りの末、未完成のステージ上で目にした光景は。
魔改造途中のプロディちゃんが禍々しい放電を伴ってドス黒く発光する姿だった。
「間に合わなかったのか? いや、突っ込むぞピョン子!」
「ちょっ、バカな事はやめなさいよ!」
「やってみなければわからん」
ピョン子には悪いが付き合ってもらう。
あとでいくらでもご馳走してやるから許せ。
「メリフェスの融合は始まってんのよ!!」
「ハート国勇者は伊達じゃない!」
「あーーっ、もうっ! いい!? 超高くつくわよっ!!」
なんだかんだ文句は言うが、最終的に助けてくれるピョン子。
プロディちゃんに取り付き、頼れる右手が気合いを入れる。
縞ウサギの特徴であるラインが輝き始め、ドス黒い光と拮抗。やがてピョン子のパーソナルカラーが圧し勝って、俺達を綺麗なエメラルドグリーンで包む。
「副隊長! ハート国の援軍を確認。スペード国からも来ます」
「スペード国に召喚勇者はいないはずだ、幻術じゃないのか?」
「リアル勇者です」
光の内側からでは外の状況が不明だが、鳩野さん達が来てくれたようだった。
「ピョン子、まだ引き剥がせないか?」
「無茶言うなっ! 磁球8個もあんのよ? くっつかないように留めるので精一杯ねっ!!」
「いっつも任せっきりですまないな……」
情けない事に俺は何も出来ないでいる。勇者と言っても、現実はこんなもんだろうか。
「何言ってんの! 他人の力でノホホンと勝利を得る、それが主人公でしょ? アンタの読んでる本とかだいたいそうじゃない。重要な場面は『アンタ以外』ががんばるから、黙ってなさいっ!」
痛烈ですな、ピョン子さん……実際なにも出来ないんだけどさ。
己の矮小さを突かれ、心がポッキリいく寸前、光の中へ飛び込んでくる人影。
「隊長!?」
鳩野さんに別の意味で心をポッキリいかれた、ジェイショッカー隊長だった。
「なんだ? どういうことだ?」
「リア充勇者だけにいい思いはさせませんよ」
マスクを取り、脂ぎったイイ笑顔を向ける隊長。何があったんだ?
「しかし、その精神状態じゃ……」
心折られてから、一日も経ってない。
「新人隊員まで! 無理だよ、みんな下がれ!」
「スペード国の姫様から聞いた。我々の『萌える想い』が磁球と超粘土を暴走したメリフェスを昇華すると!」
慧依子先輩が? とりあえず「もえる」の意味合い違うよね?
「いい感じに願えば、暴走が止まるってこと?」
「邪神が駄目になるかならないかなんだ。やってみる価値ありますぜ」
そうか……みんな球体でもなく、邪神でもなく、理想の首領を求めているんだな。
プロミディアさんには悪いけど、ここはプロディちゃんを皆の『萌える想い』ってヤツで昇華する! これなら俺でも力になれる。
「き、巨乳で三つ編みメガネ!!」
「アンタ、突然なに言ってんの!?」
いきなり俺が変なことを口走り、目を丸くするピョン子。だが、かまわず続ける。
「『だ行』が『ら行』になっちゃう!」
巨乳三つ編みメガネも素人にはオススメできないが、『だ行』が『ら行』はゆずれねぇ。
「さすがハート国勇者。迷いがねぇ!! 我らも続くぞ!」
ここからは恥ずかしげもなく、属性告白の応酬。絶対、他人に聞かれたくない魂の絶叫大会となる。
ドン引きギリギリのオーダーをする俺を見上げたピョン子の目が印象的だった。
次回の更新は5月8日夜の予定です。




