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3-4

「キヤロト様へご報告したく、探しているのですが……」


 意を決して慣れない敬語で尋ねてみる。敬語かどうかも怪しいけどね。


「ベイ副隊長から話しは聞いている。お前がトルベロ隊の生き残りか」

「キヤロト様はこの奥だ。がんばれよ、ルーキー」


 霊仙寺の犠牲は無駄にならずに済んだようで、俺の評判は良い感じ。

 衛兵の励ましを背に、いざ神殿内へ。

 天井は灯りが届かないほど高く、広さはマミさんとメリルさんがキャットファイトをしていた部屋の倍くらい。 魔法でともされた蒼白い炎が神殿内を幻想的に照らしている。

 後ろで扉が閉まり、数十メートル先に祭壇と黄金に輝く人影らしきものが確認できた。


 一歩ずつ慎重に近づき、とうとう単独で魔将軍と対峙する。

 まばゆい光を纏った魔将軍・キヤロト。俺に気がつくと、調整がきくのか光量を落としてその全貌を現す。


「ニンジン!?」


 若干デザインや装飾品に変更はあるものの、ベースは『贖罪(食材)の四天王・ニンジン忍十面相』に間違いない。


「やっぱり逃げ延びていたのか、ニンジン!」

「ニンジン? 私は『キヤロト・バジール』だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「人参にキッチンハーブ追加しちゃってんじゃねーか!」


体色が朱色から金色になり、トレードマークのシルクハットもなく、モノクルをサングラスに変え、タキシードもノースリーブになっているが。


「滲み出るカリスマ性とボイスは隠しきれてないぞ! メリフェスと組んで何を企んでんだ?」

「君は人違いをしている。私はニンジンではなく、マンドラゴラだよ」


 マンドラゴラ:『ナス』科の植物。


「いや、まあまあの確率で正解だよ! やっぱり、ナスノ課長の置き土産じゃねーか!」


 俺が倒し損ねたばかりに、今度はニンジンが跡を継いだのか。


「私はメリフェス様の代行として、争いのない世界を実現を目指しているのだ」

「志は良いと思うけど、そのメリフェスが暴走しているのを知った上でか?」


 豪華な祭壇にまつられている球体がメリフェスなのだろう。

 2mほどの球体だが、本来の形状を保とうとしてか、時折バチバチと放電を伴って、いびつに歪んでいる。いまにも破裂しそうな印象だ。


「メリフェス様のコアが限界なのは知っている。だから女神の器を利用させてもらう。あれには八つのコアがあるからな」


 磁気球体関節のことか? メリフェスが1個で稼働しているなら、『プロディちゃん』に乗り換えれば単純に8倍だ。安定して正常に戻るか、危険度が8倍になるのか俺には判断できない。


「さらに暴走したらどうするんだよ! 魔王軍で埋め尽くされて人が住めなくなる」

「エルマナに住む者は自国の事しか考えていない」


 もともとは神々のゲーム盤と駒として創造されたエルマナだ。

 対立が基本で創造されたわけだから、自軍陣営を第一に考えるのも無理はない。それを統べる駒の誕生もルールの内かもしれないが。


 どうにも気になって、俺も流れに乗った返しをしてみる。不本意だけど。


「エゴだよ、それは」


 おそらく次は——


「「磁球がもたん時がきているのだ」」


 ですよね! ベタなエルマナ思考で予想できちゃったよ……


 一気に緊張感が無くなったと感じるのは俺だけだろうか。

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