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3-3

 その存在感ゆえ、発見されるのも時間の問題だった霊仙寺。

 俺の機転で適宜処理し、なんとかジェイショッカーに潜り込むことができた。


「では、お前が隊長の最後を?」

「はい。自分たち新人隊員は『イケメン勇者』と合流した先ほどのビッチに卑劣なリア充っぷりを見せつけられ、軒並み精神を折られました……隊長を除いて」


 俺が実際にあの場で見て、体験した事を真偽織り交ぜてオーバー気味に語る。


「お前だけでも帰還できたのは奇跡かも知れんな。あの女にそれだけ見せつけられて良く戻れたものだ」

「自分、『リア充、許すまじ』が信条ですので」


 副隊長に対して片膝を付き、恭しくこうべを垂れる。

 俺の守備範囲である昭和特撮をベースに「首領を前にするステレオタイプの幹部」風に振る舞ってみた。


「うむ、心強い新人だな。少し休んだら今話したことをキヤロト様に報告してくれ。たぶん地下神殿におられるはずだ」


 ん? 『キヤロト様』? 初めて聞く名前だ。 おそらくメリフェスが創りだした件の魔将軍なのだろう。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■


 怪しまれず単独行動が可能になったざる魔王城で、それとなく聞き込みをする。


「まずは『プロディちゃん』が搬送されたガレージへ行ってみるか」


 人目をはばかることなく敷地内を歩き回れるとは言え、プロミディアさんが充電中のためカードは使用不可。ピョン子はばっくれてるし、仲間も捕まった。まぁ、霊仙寺は保身のために差し出した訳だが。


「頼りは『ドリフシステム』だけか……野良勇者相手じゃ防御一辺倒だな」


 鳩野さんが戻るまで、戦闘になったら逆転の目はない。戦闘になりませんように。


 完成すれば直径30mほどの円形ステージ脇を進み、メイン舞台から離れた場所に仮設された小屋を覗き見る。

 中は塗料臭く、工房のような造り。白タイツ姿の男達が7〜8人で作業をしていた。

 モデラー班による手際の良い魔改造っぷりは、敵ながら惚れぼれする職人技だ。


「プロディちゃんにとっては、逆にモデラー班任せの方が将来勝ち組な気がする」


 しばらくその無駄に高度な技術を眺め、プロ集団のテクニックを目に焼き付けていると。


「ここに『邪神』と『サンプル』と『女神のカケラ』があるじゃろ? これをな……」


 聞き覚えのあるフレーズに我が耳を疑うが、なるほど、本当にああいう『呪文』なんだな。

 魔改造を施された『プロディちゃん』に、ふたつの素材が吸収されていく。

 よく見えなかったけど、『サンプル』と『女神のカケラ』ってなんだ?

 別段『プロディちゃん』に変化はなく、素材の正体は分からなかった。

 不本意だが『プロディちゃん』のリファインを彼らに託し、金色の魔将軍がいる地下神殿を探す事にした。


「すっかり忘れてたけど、ミツバ姐さんはどうなったんだ? 簡単に捕らわれるような人じゃないだろうし」


侍女さんの情報だと魔王城で調査中って話だった。


「その城自体がフェス会場に生まれ変わろうとしてるんだけど……」


 地上部分はあらかた調べたと思う。残る地下エリアの規模や造りが変わってなけりゃいいなぁ。

 侍女さんからは周辺地図の他に、各国要人が拉致された時、わざと残ったクラブ国王がマッピングした城内図も貰っている。


「抜け目ないなぁ、あの爺さん」


 城内図とにらめっこしつつ、地下神殿らしきスペースへと進む。

 不用心なのか警備する必要がないのか、薄暗い地下フロアは誰もいない。全員会場造りに出払っているのだろう。

 しばらくウロウロしていると、流氷が発するような蒼い光の漏れる重厚な扉の前に辿り着く。

 さすがに重要ポイントらしく、でかい木製扉の両脇には黒タイツの野良勇者が二人立っていた。

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