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第3章 1

「ねぇ。この痴女女神、アタシには透けてるように見えるんだけど?」


 ピョン子の言葉に、輪の中心で浮遊する手乗りサイズのプロミディアさんを注視。


「俺が無理させたからだ! ごめん、プロミディアさん」

「大丈夫よ。フウマちゃんにしばらく憑依しとけば、そこそこ回復するから」


 透明度70%のプロミディアさんが「おやすみー」と、俺の中へ消えていった。

つらそうな笑顔をしてたし、カードの使用はなるべく控えよう。


「戦いになったらワタシとアカネでサポートするわよ」

「アタシ、またあんな連中とやり合うの勘弁だわ。アンタのせいで即死無効化されるし」


 俺も嫌だよ。


「ワタシが追ってた連中もJSYOCKERなのよね? エルマナ人の過剰接待が原因とは言っても、こじらせ過ぎだわ」


 野良勇者の総数は知らないけど、少なくとも霊仙寺が逃した一団とバトルの可能性がある。

 俺の場合、たまたま運が良かった……と言うと、野良勇者に怒られるな。召喚当日に「過剰接待義務化」について鳩野さんから説明されてたのは大きなアドバンテージだ。伏せられたままだったら、俺も野良勇者の仲間入り濃厚な気がする。

 敵にまわったからこそ得た能力だが、「リア充無効」はそのパーティーメンバーも含まれてしまう点が厄介。


 上手く立ち回られたら『JSYOCKER』が掲げる、勇者を倒す→エルマナ人、野良勇者に頼らざるをえなくなる→YO・JS・JC・JK・Rady・Extraと、全年齢を網羅した女性陣から接待モテの栄光再び……と、不毛な理想が実現しそうで恐い。いろいろ穴があるけど。


「いっそのことダイコンの時みたく、アンタと魔法使いが変身して城ごと潰したら?」


 短絡思考のピョン子。


「メリフェスやプロディちゃんに直撃したら目も当てらんねぇだろ」

「無くてもよくない↑?」


 まぁ、そうなんだが……語尾の抑揚になげやり感はあるが、的確な感想だ。


「ねぇ杜鷺。気になってんだけど、魔王城ってどこ? 地図の場所ならここから見えるハズよね?」


 背伸びして山間部をキョロキョロする霊仙寺。言われて地図を確認すれば、指摘通り見えるはずの魔王城が無い。


「琴宮先輩が気がかりです。魔王城のあった場所へ急ぎましょう」


 いったい何が起きてるんだ、魔王城。ミツバ姐さんは無事だろうか。

ジェイショッカー対策もできていないまま、魔王城へ急行することになった。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■


 ビイワ湖から鬱蒼とした森を分け入り、獣道を歩くこと約1時間。最後に緑のカーテンをくぐると、いきなり人工的な拓けた平地へ抜けた。

 何か舞台のようなものを建設しているのか、黒タイツに身を包んだ数百人規模のジェイショッカー隊員が、広大な敷地内をせわしなく動きまわっている。

 全貌はわからないが、ここが魔王城跡で間違いなさそうだ。


「あいつら何やってんだ?」


 岩陰に身を潜め、遠目から動向を探る。ついでに、鳩野さんの魔法でジェイショッカー隊員服の魔法をかけてもらう。


「アンタ、似合ってるわよ」

「うるさいよ。お前もな!」


 ご丁寧に右手のピョン子も耳と鼻先が出た、黒タイツ姿にされていた。そして霊仙寺。どうしたってエロいな、お前は。

いっそ何も着てない方が健全なんじゃないかと思うほど、黒ボディスーツのピッチピチ具合にコーディネーターの悪意を感じた。


「アカネ、コレ胸とかきっついわよ。」


 当の本人はたいして気にしてないようだが。


「いろいろクイ込んでしまうがいいですよ。私はちょっと助っ人を呼んできます」


 自身には魔法をかけず、俺と霊仙寺を残して立ち去ろうとする鳩野さん。


「ちょっ、アカネ! どこ行くのよ」


 狭い岩陰では思うように身動きがとれず、鳩野さんを掴もうと身を乗り出した霊仙寺のけしからんボディがシュリシュリと俺の上を擦れて行く。


「あの人数ですよ? 野良勇者相手にたった三人では無謀すぎです。私の秘蔵部隊と繋ぎをとるので、杜鷺君達は無理せずここで情報を集めてください」

「秘蔵部隊って……」


 そんな話は一度も聞いた事ないけどなぁ。


「実戦経験を積んでもらうには絶好の場とも言えますし、これは丁度良い投入タイミングかもしれません」


 部隊にリア充やイケメンがいなければ、数が多い以外問題無いか。


「野良勇者は鳩野さんの部隊に任せて、その間に俺達は魔将軍とメリフェス狙いって線だね」


 よし、俺は鳩野さんが戻るまで、やつらに紛れて情報収集だ。

 だが、霊仙寺、お前は動くな。


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