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2-9

「モル鷺君、いつまでも見苦しいモノ晒してないでズボンを上げたまへよ」


 ビリビリのジャージで露出狂手前の慧依子先輩に言われたくないです。


「ありがとうございます、助かりました」


 何を考えているか分からない隊長が、律儀に待っていてくれるからこそだが。


「1対4になりましたが、まだ続けますか? こちらとしてはメリフェスとの交渉が目的ですので、下っ端のアナタ達に用は無いのですが」


 隊長との間に割って入る姫騎士姿の鳩野さん。

 俺を庇うように広げられた両腕には、慧依子先輩作であろう残念造形な赤青のガントレットが装着されていた。

 どうやらマミさんから受けた浸透系の魔法は解けたみたいだ。


「たかが貧乳二人が増えたところで、大差はない。逆にそいつのハーレム度が増した分、こちらのジェラシックパワー上がるぞ」


 なんだよジェラシックパワーって。嫉妬の度合いが恐竜的って事か?


「失礼ですね。彼女よりはありますよ?」


 心外とばかりに数秒、顔を大人モードの慧依子先輩へ向け、冷たい視線で隊長を射抜く。


「諦める事だな。ぶっちゃけ、三次元女子に興味はない。だがモテ男子は最優先で許さない。それが野良勇者というものだ」


 なんか、またメチャクチャ言ってるよ。


「なるほど、暴走した橙愛さんでも手にあまるわけですね。私と慧依子先輩で杜鷺君を存分にしたところでダメージは望めませんか……」

「はははっ、紅音クン。私もハーレム要員に含まれてるみたいだが、まだデレ要素のあるイベントを彼と過ごした記憶はないのだが?」


 俺が一方的にお世話になってるだけだからなぁ。当然、装備的な意味で。

 そしてノーマルモードじゃ技の発動に耐えられないのは理解してるけど、やはり馴染めない大人モードの慧依子先輩。


「つまり世代の古い杜鷺君て感じですか。だいたい把握しました」


 ひとり納得し、頷いている鳩野さん。

 赤のガントレットを外すと、慧依子先輩の右手に付け替え、取り出した赤い指輪を左中指にはめるよう指示。鳩野さん自身は青い指輪を右中指へ。


「これって……」


 俺がダイコン戦の時使用したもの。再現性のバカ高い変身アイテムだ。

 中指に嵌めたアクセスリングをガントレットの窪みへ差し込み、変身コードを叫ぶと劇中同様にクアドラ初代ヒロインに変身してしまう。そう、文字通り『変身』だ。男の俺でさえ、身体の構造すべてをひっくるめて。


「こ、小娘! それは『アクセスリング』か!? なにをする気だ!」


 この隊長、見抜いたよ! 世代の古い俺って評価も納得だよ! 崩れたデザインのガントレットはさすがに気づけなかったようだけど。


「精神的にアナタを倒します! クア・ルテミス!!」

「……はぁ、私もやるのか。クア・ポロン」


 慧依子先輩はやる気ないなぁ。


「……真っ赤な炎はル——」

「先輩、名乗りはいいです」


鳩野さん、頑なに名乗りスルーだな。


『うおぉぉぉぉーーっ!! ルテミーん!!』

 変身を目の当たりにした隊長は、本日最高の凄いテンションだった。

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