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「礼を言うぞ小娘! 新兵には効果もあろうが、私には逆効果だ。ビッチ認定されたお前になど、その勇者同様負ける要素がない!」
「あちゃ、ヤリすぎた」
ペロリと小さく舌を出す霊仙寺。
いつまで続くんだよ、この哀しい戦い……
「でも、残るはアナタひとり。素直に投降するなら、まだ面目保てるわよ?」
「ジェイショッカー隊長の誇りにかけて、退くわけにはいかぬ!」
睨み合う隊長と霊仙寺。それ、かけちゃいけねぇ誇りだから!
「ワタシ達のラブラブアピールに心折られるか」
「こちらの嫉妬力が上回るか」
「「勝負!!」」
なんで熱血バトルみたいになってんの? バカなの?
「で霊仙寺よ。今お前、ワタシ『達』って、さらっと俺を巻き込んだよな!?」
「あはっ、どうしよう杜鷺ぃ! なんかワタシ変なテンションが止まらないっ! どこまでヤッちゃう? どこまでならイイ!?」
奴らの黒いオーラにあてられたせいか知らないが、瞳孔がハートになってそうな勢いだ。
対する隊長は眼光鋭く腕組みをし、仁王立ちで俺達を見下ろしている。
結局あれだよなぁ、つまるところ『俺達がイチャつくところをジッと見守る』ってだけだろ?
「やめるんだ、隊長さん! 虚しいだけ……」
いや、違う! これは罠だ!
「ほう、お前は気づいたようだな。お察しの通り、私は『NTR』と『ドM』のスキルを持っている」
この状況で無敵の組合せじゃねーか! やっぱり、ただ見たいだけだったよ、この人! お前の彼女じゃないけどな!
「待て、霊仙寺。お前の攻撃は逆効果だっ」
攻撃なのかも疑わしいが。
「いいから、いいから。黙って練習の成果みてなさいよ」
マジやべぇ、正気じゃねぇ。なんの練習成果だよ!
味方からも襲われてるってのに、ピョン子どこ行った?
脱兎したまま、いつの間にか戦場から姿を消しているピョン子。こんな時のために仕事料払ってんだぞ。
そして俺ピンチ! 見た目のスタイルから想像できない重量で俺を組み敷いたあと、器用にスネの上へ正座している霊仙寺。膝まで固定され、起き上がるのも容易じゃない。
「たいちょおぉ〜! 見てないでなんとかしろよ!」
暴走した霊仙寺を引っぺがしてくれるなら、敵でもかまわないさ。
「いや、正直ここまで積極的にヤられると、このビッチを自分の彼女へと脳内変換するのも一苦労でな」
ダメだこいつら……
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
抵抗むなしくベルトを外され、霊仙寺のたおやかな指がファスナーにかかる直前、俺が背にしている岩とその周辺に魔力の矢が牽制気味に撃ち込まれた。
「両者そこまでっ!!」
一線を越える直前、澄んだ声が木々に木霊する。
鬱蒼とした森の中、飛竜が拓いた一本道にビイワ湖を背負い、逆光で立つシルエット。
「鳩野さん? 慧依子先輩も」
忍者装束が鳩野さんと大人モードの慧依子先輩の前へ立ち、『アート・ショット』を構えていた。
「貧乳コンビの声が聞こえたから連れて来たわよ……って、なんでアンタ巨乳女に襲われてんのっ!?」
右手に帰還したピョン子が、迫る霊仙寺を全身でブレーンクロー。
「んぐぐぐっ、相変わらず重いわね!」
二本の前足だけでは防ぎ切れず、ピョン子は再び脱兎。今度はフェイスロックで引き剥がしを試みる。
悪戦苦闘する俺達に焦った感もなく、マイペースで歩み寄る鳩野さん。
「ガンパンマンを使ったらどうです? 渡しましたよね。あ、あえて忘れたふりですね? もしかして、お楽しみの邪魔でしたか」
そうだった。懐から取り出した三枚のトランプを投げると、みるみる拡大して屈強なトランプ兵になる。
No.2と3のガンパンマンが霊仙寺の両腕を掴み、いとも容易く引き剥がしを完了。Aのガンパンマンが無表情で容赦なく彼女に往復ビンタを食らわす。
「アンタそんな便利なもんあるなら、ハナッから使いなさいよっ!この女が言うとおり、なんか期待してたんじゃないでしょーね」
「すっかり忘れてたんだよ」
ウサパンチ、ごもっとも。
霊仙寺が木陰へ連行され、なおもビビビビンと弧を描く擬音が見えそうなレベルで頬を張られる。
「痛っ!イタッ、イタイイタイ! 痛ったいっ! 痛いって言ってるでしょ、重冷気剣!」
ひんやりとした冷気が漂い、刀身に纏う氷の竜。
「イースト・ドラゴン、食ってよし!」
3体のガンパンマンは両断され、6枚の紙切れと化す。
重冷気剣の竜、『イースト・ドラゴン』て名前だったのか。東?ああ、ダイヤだからか。
エルマナ思考に即応できるほど馴染んでしまったようだ。




