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2-6

 爆煙が晴れ、近距離で受けた『怒りの矢』により俺の周囲は、さながらヘビ花火を一気に点火したように黒タイツの連中がのたうつ。

「こ、これが現役勇者の力か……」


 大ダメージを受けてもなお、俺にすがりつこうと這って来る連中の根性はさすが元勇者だ。


「ダイヤ国女王や邪神像を誘拐した犯人グループだよな? たぶんダイヤ国女王は俺の仲間が救出してる頃だ。あきらめて邪神像も返してくれよ」


 足首を掴む男の正面へしゃがみ、お願いしてみる。


「フウマちゃん、邪神言わない!」

「キサマの仲間……だと?」

「隊長、あの巨乳ツイン少女では? こいつリア充かも知れません!」


 霊仙寺のことか……俺がリア充て。


「その思考がリア充なのよ、イライラするわ」


 心を読んだピョン子が呆れ顔で俺の鼻をブニブニする。


「まさか、スズメたんやスペード国のロリっ子とも繋がりがあるのかっ!?」

「まぁ、持ちつ持たれつ的にはあるかなぁ」


 スズメさんとは会った事ないけど。


「隊長! よく見りゃコイツ、可愛い顔してますぜ!」

「ん? フフッ、なるほど……そう言うことか。なるほどな……ハハハッ」


 なにがそう言うことなんだ? ジェイショッカーの連中、一斉にヨロヨロと立ちはじめたぞ?


「我らジェイショッカーは野良勇者のふきだまり。キサマのような『持つ者』は絶対に許さん! 絶対になっ!!」


 全員が立ち上がると、連中から陽炎のように滲み出る黒いオーラがたちこめる。


「凄い負のオーラね。アンタのなんちゃって負の感情なんか足もとにも及ばないわよ。こんな精神的にヤバそうなの初めて見たわ」


 やっぱり、もと勇者の集団だったのか。この人達が召喚勇者第一世代……魔王軍のハニートラップや村人の接待恋愛で犠牲になったっていう。


「キサマみたいな美少女顔イケメンに我々の悔しさなど分かろうはずもないっ!」


禍々しいオーラで連中のダメージが回復し、振り出しに戻ってしまった。俺に対する理不尽な敵意が上乗せされた分、状況は悪化している。

 さっきより魔力多めで、もう一度『怒りの矢』を発動したが全て弾かれてしまった。


「無駄だ。野良勇者に『リア充』や『持つ者』認定されたヤツの攻撃など効かぬ!」


 にじり寄る野良勇者にピョン子が『即死九割』を繰り出すも反応がない。


「ほほぅ、縞ウサギが使い魔か。魔王さえ即死確率90%のチート能力。……いいよなぁ、チート持ちでリア充。それに比べて我らときたら……」


 さらに黒いオーラがます。


「なんで効かないのよっ!」


 ヘラヘラ笑う連中に、連打したり噛みついたりするピョン子。


「あっ、隊長。噛みました! 縞ウサギが噛んだんです」

「本当か、縞ウサギ」


 うすら笑いながら、参謀次官とその愛人チックな小芝居をする野良勇者たち。


「ピョン子の攻撃を受けてんのに、なんで平然としてるんだ……」

「当たり前だろう? イケメン、ハーレム、チート持ちなんかに負けるわけがない。相手の幸福度が高ければ高いほど、キサマらリア充勇者の攻撃は無効化されるのだからな!」


 あーもう、手がつけられねぇ……

「こうなると逆に憐れよねぇ。どうするのフウマちゃん」


 プロミディアさん、そんな他人事みたいに。ピンチには変わりないんですよ?


「ヤツらもオタク、最後の一手があるにはある」


 疲弊している右手のピョン子を見て呟く。


「アンタなに言ってんの?」

「ピョン子、脱兎だ! 脱兎しろ」


 もちろん逃げる方の意味ではなく。


「わ、わかったわよ。脱兎!!」


 俺の右手、ピョン子が光に包まれる。


「なんだっ? キサマ、まだ奥の手を隠し持っていたのか!!」

「最終兵器さ! お前ら全員、この可愛さに萌え死ぬがいいっ!」


 光量が減衰し、俺の前面にちょこんと佇む留奈モードのピョン子。

 ————そして絶句。

 からの、ブーイングの嵐。


「ふざけてんじゃないわよっ!」

「イケると思ったんだよっ! ってゆーか、俺ならイチコロだけどなっ!!」


 頬を赤らめた留奈ちゃんの姿で、思いっきりグーパンチ。ご褒美でしかねぇ。

 けっこう本気の作戦だったんだが、不発に終わる。


「なんだぁ? このお嬢ちゃん。なにかのコスプレか?」

「隊長、たぶん最近のクアドラヒロイン、留奈ちゃんですよ」

「キサマ、二次元ヒロインまで侍らせて! 自慢かっ? 自慢なんだなっ!?」


 そうか、こいつら第一世代で召喚されたままエルマナ居着いてるから、現役ヒロインを知らないんだ。

 最終手段も火に油だし、もう打つ手がねぇよ……


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