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2-5


 一直線に飛ぶこと約二時間。俺を気遣ってゆっくり飛んでいたのもあるが、陸路よりはるかに早い到着だろう。

 地図によれば、眼下に見える歪なサツマイモみたいな形状の水溜まりが『ビイワ湖』だ。


「想像してたより小さいな」


 俺が名前からイメージした「琵琶湖」の半分くらいだった。


「フウマ、真下!」


耳を立て、飛竜の背中を透した地上を見据えているピョン子。

 敵の姿を求め湖上をゆっくり旋回していたのがアダとなり、地上より放たれたエネルギー弾に飛竜の片翼を貫かれる。

 バランスを崩した飛竜はキリモミしながら落下し、俺達(実質ヤバイのは俺一人)は十階建てビル相当の高度で振り落とされた。

 地面と衝突する直前、ピョン子だけでもと右手を突き出したまま、仰向けに落下。

 背中への衝撃に備えたが、接地と同時に『ドリフシステム』が発動。

 結果、小爆発を伴って地面に人型の大穴を開けただけで済んだ。


「ぷふぁっ! 今回ばかりは慧依子先輩に感謝だな」


 土埃を吹いて穴からはい出る。


「アタシを巻き込んでんじゃないわよっ!」


 見ればピョン子も可愛いアフロになっていた。


「アフロになるだけで命が助かれば儲けものだろ?」


 周囲を見回すと、飛竜が墜落したコースの木々が薙ぎ倒され、数百メートル先に湖面が確認できた。


「フウマちゃん、このコを治療してあげて!」

 グッタリとしている飛竜の頭上を飛び回るプロミディアさん。オール治癒で傷を治し、飛竜には一足先にクラブ城へ帰還してもらう。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■


 飛び立つ飛竜を追ってきたのか、俺達はついに謎の集団と邂逅を果たす。

 規模は五十人ほど。全員がふくよかな身体にフィットした上下の黒タイツ姿で、顔の部分だけバラバラな白いアスキーアートが描かれている。巨大掲示板で見るようなタイプのアレ。


「なんだよコイツら、顔面パーツだけならスゲェなじみ深いんだけど!」

「我々は大首領メリフェス様を守護する『ジェイショッカー』!!」


 ネコっぽい絵柄のマスクが一歩前に出て、右手を掲げて名乗る。


「我らマスクの意匠を知っているところを見ると、キサマも勇者だな?」


 『も』? 今『キサマも』って言ったか? 訝しんでる俺をジリジリと囲み、なおも続ける。


「どうだ、我らの仲間に入らぬか? お前からは『こちら側』の匂いがするが」

「仲間って……どんな匂いだよ」


 こいつら俺と同じ、召喚された勇者なのか?


「我らの組織『JSYOCKER』が意味するもの、それは……」


「Jは女子のJ! S、C、Kは小中高! Rはレディ! Eはエクストラ! つまりは思春期男子の妄想対象がオールレンジで蔓延る理想の世界を創るのだ!」


 なんかヤバイのは分かる。


「あれ? 『YO』が抜けてるじゃん」

「キサマ、あえてスルーしたと言うのに! 当然、幼じョ……」


 マジヤベェ! いろんな意味でっ!


「怒りの矢!」


 幸い、360度包囲されている。左足を軸に一回転し、横薙ぎにマーカーを撃ち込む。


「おっけー」


 肩に腰掛けるプロミディアさんが耳元で承認。


『オイースッ!!』


 うぐいす色の精霊が連中を光りの渦に巻き込む。

 現状、プロミディアさんのパワー充電が不可能な状況で魔力全振りはしたくなかったけど……やれたのか?

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