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クラブ城謁見の間。
玉座には国王の姿はなく、その理由は。
「おたくの腹黒姫さまの母君が復活したと聞き、千日手装備でハート国へ向かいましたから、どちらか倒れるまで戻ってこないでしょうねぇ」
純粋な格闘勝負なら、クラブ国王とどっこいのマミさん。元・黒帯王として血が騒いだのか、マミさんの国外脱出を足止めする口実で、趣味と実益を兼ねタイマン勝負を挑みに行ったそうだ。
「そんな訳で、しばらくは実力3位の私がクラブ国王ですよぉ? 『短ぇ夢だったな』的立場ですが、なんでも聞いてください!」
トップに立ち、浮かれている侍女さん。
「て事は、ミツバ姐さんの帰還もまだ先なんですね?」
「はい。なんかアヤシイ集団が動いているようで、まだ魔王城で調査中です」
魔王軍エリアは『根っこワーク』能力の圏外で、ミツバ姐さんの行動を把握するのもやっとらしい。
「俺達の追っている誘拐犯の仲間かな? メリフェスと交渉する前に謎の集団と一戦あるかもな」
「やっぱりアタシが必要になったわね。仕事料、つり上げるわよ」
さっき俺が契約を渋っていたのが気に入らないらしく、高くついてしまった。
「あ! じゃあ、私がその仕事料を払うのでぇ、ウチの姫様をサポートしてもらえます? ついでで構いませんから」
右手から滝のように流れるヨダレ。クラブ国の料理を絶賛してたからな。
「わかりました。では、コイツにシェフ侍女さんの夏野菜を使った絶品料理をおみまいしてください」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
脱兎したピョン子が、取り憑かれたように仕事料のニンジン料理フルコースを食べている中、俺は侍女さんが『根っこワーク』で集めた情報を聴いていた。
「謎の集団を指揮しているのは、金色に輝く将軍クラスの魔物みたいです」
詳細までつかめないが、また『食材の四天王』みたいなヤツなのだろうか?
今は追ってきたダイヤ国と交戦中らしい。
「霊仙寺とTCUならスズメさんは大丈夫かな。邪神像の行方はわかりますか?」
「邪神像言わない! わたしの器になるんだから」
プロミディアさん、本当にあのデザインでいいのかなぁ。
「もう一方の集団は『ビイワ湖』の南あたりまで追えたけど、残念ながら『根っこワーク』圏外ね」
エルマナの法則かは知らないが、『ビイワ湖の南』『金色の魔物』『邪神像』って……
「なんかデジャブを感じるワードだけど、気にしたら負けだな。気持ちを切り替えて『ビイワ湖』方面を探ってみます」
侍女さんの好意で飛竜を手配してもらい、空路で一気にショートカットすることになった。前回はダイコンの襲撃で乗れなかったからな、飛竜。
「これを持って行ってください」
「地図?」
「はい。むかしミツバ姫様がよつば姫様だった頃、ビイワ湖の南で恐ろしい呪術が蔓延してると噂がありまして……」
真相を探るため、国王から呼ばれた侍女さんが当時制作したビイワ湖周辺図だった。
「もう既視感しかねーよ!」
俺のツッコミは飛竜の飛翔音と共に大空へかき消された。




