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ライトバーンの運転を携帯用ガンパンマンに任せ、揺れる車中で地図を開く。
魔王城初心者の俺は、移動時間を使ってプロミディアさんとピョン子から概要を教えてもらうことにした。
まず、魔王城の位置。
イメージ的には大きな二重円を描きます。
その中心にある漢字の『田』がスペード、ダイヤ、ハート、クラブの4国。
外周の円には交流のない国や、未知のエリアが広がっている。
で、『田』を囲む内側の円が「なんとなく」魔王軍エリア。そこに百近く点在するのが、過去の魔王城跡地になる。
ダイヤとスペード国で起きたふたつの誘拐事件。それぞれ逃走経路を直線でなぞっていくと、ナスノ課長時代の魔王城跡で交差した。
「メリフェスが今もここに居るのかは不明だけど、手がかりは掴めるかな」
「アンタ、仕事料前払いしなさいよ。親玉倒すんでしょ? アタシの助けがいるんじゃない?」
癒しの前足で俺の頭をポンポンするピョン子。
「一応言っとくけど、戦闘じゃなくて『交渉』しに行くんだからな」
「どーせ手がつけられないほど暴走してんじゃないの?」
やなフラグ立てんなよ……まぁ、エルマナの成り立ちを考えれば、地水火風の属性対立が基盤にあるから、好戦的な空気は感じてるが。
交渉メインと言いつつも、保険をかけてピョン子先生と契約するため、進路上にあるクラブ国へ立ち寄る。
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国王への挨拶を兼ね、ミツバ姐さんの現状を教えてもらいにクラブ城へ、と思っていたけど。
「もう登りたくねぇよ、この石段」
クラブ城が気の遠くなる数の石段を登らなければ辿り着けないのを忘れていた。目の前に伸びる段差の違う階段に心を折られる。
「フウマちゃん、ファイトっ!」
「着いたら起こしなさいよ」
頭上と右手から声がかかる。
疲れるのは俺一人という理不尽さを振り払い、一歩踏み出したところで見上げた遙か先から、十段単位で軽快に跳び降りてくる人影があった。
「杜鷺選手、お久しぶりっ!」
その正体はミツバ姐さんの侍女さんだった。レフェリーやらコックやら多芸でとても有能な人だ。
「ホントだ! モリサギ選手だ!」
「え? どこどこ?」
「おぉっ、今度は侍女さんを存分にするらしいぞ」
あの時はなりゆきで出場しただけで、もう選手じゃないですが……
常時通る声の侍女さんによって周囲の人たちに注目されてしまった。
「お久しぶりです。丁度良かった、これで筋肉痛にならずに済みます」
クラブ国王には悪いが、侍女さんに話を通しておこう。
「ふふっ、バカげた段数ありますからねぇ。杜鷺様がゴネていると知り、出向いてきました」
なんて諜報力!
「コイツ、そういう種族なのよ。集音能力はアタシより優秀かもね」
俺が驚いていると、心を読んだピョン子が教えてくれた。
「そういうコトです。私、生粋の地属性っ子ですから!」
S種族……地属性ストレンジ種の中でも彼女は上位クラスらしく、『根っこワーク』という特殊能力持ちだそうだ。
「簡単に言うと『草花たちとお話しできる乙女チックな能力』なんですよぉ」
周囲の植物が得た情報は全て根伝いに送られて、侍女さんが内容を選別するらしい。
おどけて言っているが、彼女がいれば自然を排したコンクリートジャングルでもない限り、情報戦で負けることはないだろう。腕力9割のクラブ国を影で支えるこの能力は、かなり食えない。
「もりさぎせんしゅー! サインくださーい!」
「また揉ませてくださーい!」
「使い魔モフらせてくださーいっ!」
なんかギャラリーが増えてきた。
「姫様負かした上にドラゴン5体を倒した英雄ですからねぇ、杜鷺様は。ここは三十六計といきましょう」
侍女さんは俺を軽々と担ぎ上げ、降りて来た時と同じように十段以上抜かしてクラブ城まで駆け登る。
「ミツバ姐さんもそうでしたけど、凄い身体能力ですよね。重くないですか?」
「男の子なんですから体重なんて気にする事ないですよぉ、ダイヤ国の姫に比べたら軽い軽い!」
着地の衝撃が小さく、移動中も舌を噛まずに会話できるほどだった。
そういう意味で言ったんじゃないんですが……




