第2章
ストックが切れました。
更新ペースは文字数据え置きで3〜4日の予定です。
スローペースですが、おつきあい宜しくお願いいたします。
夏休み初日。
いよいよ交渉クエスト開始となり、俺はスタート地点のハート城に来ていた。
ここ数日、俺のあずかり知らぬところで事件がおきていたようで、鳩野さんから重大発表を受ける。
「ダイヤ国女王が誘拐されました」
ダイヤ国女王、つまり俺のイチ推し声優・大野スズメさんだ。
「えっ、また!? なんでスズメさんが!?」
「目的は分かりませんが、犯人グループは魔王軍です」
「魔王軍発生って、そんな短いスパンなの?」
休眠期を狙って交渉する予定だったのに、まさかの急展開。ほんと、タイミング悪いな。
「ごめんねぇ杜鷺クン。メリフェスの暴走が末期みたいで、交渉は無理かも」
ちなみに『メリフェス』とは、メリルさんが創った人工知能の名称。
本来は4国の結束を促す目的で機能するはずだったが、ここ数年の召喚ブーム+チート能力のラッシュに対応しきれずに暴走進化。
創造者のメリルさんから完全に独立して、今では発生する全魔王軍の大首領にまでなってしまった。
「橙愛ちゃんがTCUと一緒に追跡してるから、共闘をお願いしてみるのも手ね」
「わかりました。なんとか合流してみます」
運が良ければ、魔王城を調査中のミツバ姐さんがまだ居るかもしれないしな。
「杜鷺君。途中のスペード国で、コレの修理を兵藤先輩に依頼してください。私もケガが治りしだい追いかけますので」
鳩野さんから手渡されたのは、赤と青の壊れたガントレット。一人用に改造され、鳩野さん単体でも攻撃魔法が撃てるアイテムだ。
「母は初見のはずでしたが、真っ先に粉砕されましたので。そのままもってかれた右腕がこのざまです」
上がらない右腕を押さえる鳩野さん。
左腕も結構なケガだと思うけど……生傷が絶えない魔法使いの親子ゲンカって。
「マミちゃん勘がイイからねぇ」
「あとこれを護衛に」
鳩野さんから、少し大きめのトランプを3枚受け取る。絵柄はハートのA、2、3。
「携帯用ガンパンマンです。杜鷺君に合わせて調整してありますので、お役立てください」
軽く使用法をレクチャーしてもらい、まずはスペード国へ向かった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「どうよ、フウマちゃん! わたしの御神体っ!」
「痴女女神と創ったの。会心の出来なの」
慧依子先輩のラボに通された俺とピョン子が目にしたもの。
「邪神像だよね? 君らの美的センスは知らないけども」
『会心』と言うよりは『怪神』がピッタリくるような造形。慧依子先輩の所から数週間も帰ってこないと思ったら、こんなクリーチャーを創造していたのか。
「鎖骨のフォルムなんか、特に女神らしさが滲み出ちゃってるんじゃない?」
「そこはとても苦労したの。二人の方向性の違いを議論した結果なの」
「ねーっ!」
「ねー」
ねーって、いや、もうどこが鎖骨とかのレベルじゃねぇ……そもそも辛うじて人の形かなぁ? ぐらいだぞ?
「もしかすると、百歩譲ってモデルはプロミディアさんなの?」
「アンタすごいわね、アタシ一歩も譲れないわよ?」
不毛な品評会だが、ピョン子審査員が正解だろう。
「痴女女神とのコラボ作品『プロディちゃん』なの」
150cmそこそこの邪神像は『プロディちゃん』と名付けられていた。こんなのに女神inして動き出したら大騒ぎになってしまう。
「まぁ、前衛的って点では評価するよ。それより慧依子先輩、ガントレットの修理をお願いしたいんだけど」
差し迫った現状を説明して、魔王城へ急ぐつもりだったが、ドリフシステムのメンテナンスをすることになりスペード城で一泊する流れに。
ここは素直に急がば回れだな。




