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本題に入れたのは、夕食にお呼ばれされて豪華な料理をごちそうになった後。
それも俺が帰る間際になってからで。
「ごめんねぇ、マミちゃん毒耐性強いからこんな時間になっちゃって」
さらりとメリルさんから不穏なニュアンスの内容が。そう言われてテーブルの方を振り返れば、白目のマミさんが突っ伏していた。
「私も盛ったんですけど、メリルさんもでしたか」
鳩野さん、盛ったってのはサラダとか料理の『盛りつけ』って意味ですよね?
「せっかく来てもらった楓麻クンには悪いけど、マミちゃんはワタシが全力で説得するから。吉報を待ってて?」
「私はメリルさんの全力(武力)を全力でサポートする事になりましたので、残念ながら見送りはできません」
二人ともすっごいヤる気だ。
結局、俺は何も出来ないまま、執事さんの運転するライトバーンで帰宅した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
翌日。
昼休みが終わる頃、遅れて登校してきた鳩野さん。
その姿は、身体のあちこちに巻かれた包帯が痛々しく、満身創痍だった。
「大丈夫? 鳩野さん!」
俺が帰った後、何があったのか……想像はつくけども。
「ご心配なく。母を縛り付けておけるなら、腕一本くらい安いものです」
不自然に垂れている鳩野さんの右腕を見れば、俺とピョン子の接合部に巻かれている特殊な包帯と同じモノが巻かれていた。
「その包帯ってことは、かなり酷いケガなんじゃ……」
「毒を盛ったくらいで実の娘に、浸食系魔法と打撃で折りにくるとは、私の認識が甘かったようです」
浸食系魔法を受けた部分は、鳩野さんの魔法でも回復できないらしく、効果が薄れるまで右腕が使えないと嘆いていた。
「でも、その甲斐あって、条件付きで女王継続を承伏させました」
「条件?」
「前に「大魔王と魔王軍は別物』って言ったのを覚えていますか?」
「甘いものは別腹みたいに、サラッと言ったやつだよね」
「その魔王軍との和解が条件です」
すごい条件提示してきたな。ムリゲーすぎるよ。
「和解できるなら毎回魔王軍なんか発生しないんじゃないの? できたとしても、また次の魔王軍が誕生すると思うんだけど」
「いえ、毎回発生する魔王軍の根っこは1つで、ある目的実現のために、毛色の違うタイプの魔王軍をリリースする事で試行錯誤しているのです」
鳩野さんの話しでは、魔王軍は考えなしに発生している訳じゃなく、本来はメリルさんがよかれと思って造った人工知能が勝手に暴走しているからだと言う。
『ナスノ事件』の魔王軍はやはりイレギュラーだったようで、ナスノ課長が人工知能を悪用した結果だった。
で、本来のメリルさんの魔王軍構想と誤算は、ザックリ以下の通り
理想:
1. 戦争がエスカレートしないよう、強大な力で威嚇
2. 各国の団結を促す
3. 頃合いをみて敗北
4. みんな仲良し
現実:
5. 異世界人召喚で、容易に超戦力を得られるようになって4の期間が短くなる
6. 際限がない勇者インフレを危惧した人工知能がキレて暴走
7. 結局のところ上記1〜4の繰り返し ←イマココ!
「人工知能を説得できたとして、団結するきっかけが無くなっちゃうけど、各国の対立はどうなるの?」
エルマナ人が好戦的な人種だとは思わないけど、なんとなく4国が対立している空気はある。
「メインの火種が消えれば、考えも変ると信じたいですね」
「そうだね」
「ところで、橙愛さんは? 私がこんな状態なので、加勢をお願いしたかったのですが」
「なんか急用らしくて、鳩野さんと入れ替わりで帰ったけど」
今回はタイミングが悪いようで、魔王軍との交渉クエストはソロプレイになりそうだった。




