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1-3

 二人に見守られるなか、俺は引き摺られたまま庭へ。


「なんか、こんな都市伝説あったわよね?」


 お前ら見てないで助けろよ! 


「都、ヘーーーールプッ!!」


 藁をもつかむ思いで、離れにいるであろう妹の名を叫ぶ。

 この増築した小さなプレハブ『ラビ庵』は、焼け出されたピョン子たち首狩屋の新しい本部だ。

 表稼業の動物マッサージが施術される隠れ家的空間は、民家の中にありながらも繁盛している。

 今の時間はミヤコが中で開店準備をしているはず。


「きゃっ、お兄ちゃん何やってんの!? え? リアルひきこさん!?」


 おお、頼れる妹。


「この可憐なひきこさんが、都市伝説に成人向けの一説を加えようとしているんだ!」

「ほっときゃいいのよ、フウマイ。コイツ、半分喜んでんだから」


我関せずとばかり両手にケーキを持ったピョン子が俺を足蹴にする。


「ピョン子! 心読めるとはいえ、情報は正確に! イメージ悪い方しか開示されてないぞ!」


 なんとか鳩野さんの暴走を止めようと、無い知恵をフル動員させている健気な俺を皆に知らしめるがいいよ! あと、楓麻の妹でフウマイ? センスねぇな!


「アンタの兄貴は、これからハートの魔法使いにイロイロされた挙げ句、結婚すんのよ」

「あっ! これが例の婚前なんたらってやつね!?」


 霊仙寺、今頃そんなネタ回収かよ!


「アカネさん、お兄ちゃんをよろしくお願いします」


 お兄ちゃんと結婚するんだと俺を悩ませていた妹が……まぁ、ある意味結果オーライだが。


「ミヤ、やっと兄離れなの? じゃあ、遠慮なくお姉ちゃんが取っちゃうわよ?」


 静香、お前も弟離れしろ。


「お兄ちゃんとの結婚貯金が全部ゲームメダルにすり替えられてて、ちょっと距離を置いてるの」


 俺が無断で全額借りパクしていた事にご立腹の妹。


「小学生から巻き上げるなんて、杜鷺サイテー」


 SOSも虚しく、暴走気味の鳩野さんにライトバーンヘ放り込まれる俺だった。


 ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   


 道中、ちょっとだけ話してくれた鳩野家の事情。

 まだ鳩野ママが今の鳩野さんくらいの時代。


 ハイスペック過ぎる鳩野ママは、発生する魔王軍をことごとく潰していった。

 その暴れっぷりは、大魔王を先頭に魔王軍一同が菓子折をもって謝りに来るほどえげつなかったそうだ。


 どこに惹かれたのか、鳩野ママは大魔王に一目惚れしてしまう。

 その好機にハート国が動き出す。国内でも厄介者だった鳩野ママを大魔王に差し出したというのだ。


「このまま娶らなければ母を嗾けるって脅迫だったのでしょうね」


 けしかけるって、犬じゃないんだから……


「結果、二人は結婚して産まれたのが私です。さ、着きましたよ」


 『ナスノ事件』以来、数ヶ月ぶりのエルマナ。ハート領はもちろん、ハート城内も心なしか活気が感じられた。


「お帰りなさいませ、姫様」


執事であろう、爺やチックな老紳士が恭しく出迎えてくれた。


「二人の様子はどう?」

「先ほどワタクシが確認した時は、マミ様の右スマッシュがキレイに大魔王様の鳩尾に決まる瞬間でしたが」


 悪びれもなく報告を続ける爺や。


「廊下にまで響く呻き声でしたので、お急ぎになられた方が良いかと」

 

 俺は走り出す鳩野さんの後を追った。


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