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クラブの2

 さて。

 クラブ国に降り立ったわけですが。


「おっかねぇよ、なんだよこの国!」

 行き交う人々が、なんかこう、もう人じゃないよね? って感じの猛者ばかり。地属性の国だけあって、木々が生い茂るも陽光は十分で鬱蒼とした密林とかではない。なんなら軽い森林浴気分でリフレッシュできるほどだ。

 俺が歩いている町中も、建物自体の雰囲気はハート国と少し似ている。

 問題はこの国のルール。他国のVIPが入国するのは問題があるらしく、ここまでの移動中、同行できない鳩野さんと霊仙寺からクラブ国内での法律的な事をレクチャーしてもらったけど、無事にクラブ城まで辿り着けるのかすら怪しい。

 まず、力で解決ってなんなの? この国の基本姿勢は『自分の身は自分で守る』らしく、すべてのトラブルは己の力のみで解決するならば、『なんでもアリ』だ。極端な話し、殺人も殺された方が悪いとなる。


「分かりやすくてイイじゃない」

「お前みたいな思考の連中が集まってんだろうな」


 ただ救いは、ステータスを筋力に全振りしたような姿でも、ヒャッハー系のイカレた連中は思ったほど多くないところか。この国では勢いや暴力だけではのし上がれない、厳格な何かが基盤としてあるようだ。

 他国と比べ、地元の地属性モンスターとの交流は友好的な関係を築いていて、昭和の漫画でありがちな、互いの力量を認め合って友情が生まれた結果だと聞いた。

 ちなみに、ダイヤ国TCUのジャックもクラブ国出身だ。基本的にどの国でも魔王軍以外の各属性モンスターは、敵軍との戦いに共闘して当たるので、うまく共存できているのだろう。

 格別人間と仲が悪いわけではないが、それぞれの国内で棲み分けができていて、クラブ国のように境界線なくモンスターが町中を闊歩する風景は他国からすれば珍しいそうだ。


「そういえば、縞ウサギって何属性なんだ?」

「考えたこと無いわ。たまにエクストラストって呼ばれるけど」

「ここへきて初めて聞く単語だが、詳しく」


 とりあえず右手のウサギとブツブツ会話していれば、そうそう絡んでくる連中もいまい。


「人間が勝手に分類した事だから、よく知らないわよ。痴女女神にでも聞いてみたら?」

「そうか」


 カードホルダーを取り出し、プロミディアさんとリンクする。今度は虚空に向かって呟く形なので、さらにヤバイ奴感が増したことだろう。


「なぁーに、フウマちゃん? 戦闘……じゃなさそうねぇ。何処にいるの?」

「クラブ国だよ。今、国王の孫に会いに行く途中」

「マッチョ? ねぇマッチョの国? マッチョ、筋肉祭なのね!」


 マッチョマッチョうるさいよ。なんだよ筋肉祭って。


「祭りはやってないけど。それより聞きたい事があるんだ」

「先に筋肉男子分を補充させてよ。フウマちゃんだけじゃカロリーがアレだからぁ、たまには違うタイプも採らないとねー。そんな訳でぇ、ちょとカードホルダーの平らな面を上にして持って、軽く撫でてね。あ、フウマちゃんの世界のスマホみたいな感じで」


 アレってなんだよ……残念ながら、俺はガラケー派でスマホは持っていない。一番の理由は、クアドラのQRコードがエースー社のガラケーにしか対応していない事。鳩野さんによれば、スマホに乗り換えた時点で大半の勇者候補がエルマナ行きのチケットを失うため、選定装置として採用しているらしい。料金安いし、故障もしないから俺は重宝してるけどね。都は進学したらスマホにしたがっているが、静香は俺とお揃いにこだわっていた。

 で、プロミ菫のレリーフがある面と対話していた俺は、言われた通りひっくり返して、カードホルダーの裏面に向かい、慣れない手つきで指を這わす。


「あぁん、フウマちゃんテクニシャン」


 スマホ画面っぽくなった裏面に魔法陣が描かれ、神殿をバックにプロミディアさんの顔がアップで映ったと思ったら、ググッと這い出してきた。


「よぉい、しょっとぉ!」


 リアルすぎる立体映像というか、重さを感じないから実体ではないんだろうけど。


「あんた、なにやってんだ!」

「フウマちゃんの指使いが上手くて、お姉さん出ちゃった!」


 出ちゃった! じゃねーよ。過去形じゃなかったらパチンコ雑誌だよ! いろいろ言葉、足んねーよ! ちなみにパチンコ・パチスロはしませんよ? アニメ本放送より気合いの入った新規カットの情報収集で雑誌は見たりするけどね。


「大丈夫よぉ。他の人にはわたしの姿、見えないから」


 画面から抜け出た霊体プロミディアさんは、行き交う屈強なイケメン住人に突撃していった。貞子って、アグレッシブだったらあんな感じなのかな?

 事態を見守るしか出来ない俺は、実害がない以上大声を出すわけにはいかず、ただ心の中で叫ぶのみだった。


 ——みんな、逃げてー!!


「なぁ、ピョン子。女神にも効くのかなぁ、お前のクリティカル」

「出来ればやってるわよ、無料で」


 ひとしきり暴れ回った痴女女神が、息も荒くツヤツヤして戻ってきた。


「ふぃー。でぇ、なんだったかしらぁ?」

「エクストラストって知ってる?」

「んー、魔物のランクや特徴みたいなものねぇ。一番弱くて個体数が多いのがノーマルでぇ……」


 落ち着いたと思ったのも束の間、タイプの漢達とすれ違うたび目を奪われるオノボリ女神の解説は途切れ途切れになり、なかなか進まなかった。


 要点をまとめると、こんな感じ。

【ノーマル種】(N)

 種族や個体数が多く、特殊能力は持たない代わりに腕力や体力が高い。傭兵に迎えた場合は最低コストで雇える。人間との体格差はあるが極端に凶暴ではなく、町中で出会うのは友好的なノーマル種が多い。

【レア種】(R)

 ノーマル種の高位種族。高い身体能力はそのままに、各属性ごとの特殊能力を持つ。知能も高く、商店を経営する個体もいる。TCUのメンバーはこのクラス。

【ストレンジ種】(S)

 種族数はノーマルと同等だが個体数が少ない。一芸に秀でた多種多様な特殊能力を持ち、身体能力にはバラつきがある。積極的に人間とは関わらないため、クラブ国以外の町中で出会うことは稀である。

【エクストラ種】(EX)

 種族も個体数も少ない。特殊能力も身体能力も総じて高く、魔王軍で発生することが多い。ルビーナはこのクラス。


 そして。


「ピョン子ちゃんのエクストラストは更に上、都市伝説レベルって言うのぉ? レア、ストレンジ、エクストラのいいトコ取りしたチート種族の個体かしらぁ」


 右手の人差し指を細いあごでしならせ、左手で指折り数えるプロミディアさん。【ExtRaSt】とは、それぞれの頭文字と最後という意味でラストを掛けた造語のようだ。


「ゼットンみたいなノリか。実物みると安っぽいけどなぁ。いつでも会えるエクストラスト種って、どこのアイドルだよ」

「うるさいわよ」

「高位なほど見分けがつかないしぃ、鑑定能力か計測器がないと判別しにくいかもねぇ」


 基本、エクストラスト種は複数属性を持っていて、ピョン子がどこの国出身かは分からずじまいだった。

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