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カフェで一波乱あったものの、対アンナのエキスパートである侍女姉さんが同席してくれる事となった。
懲りずにところどころ茶々を入れてくるアンナに容赦ないカウンターで対処する侍女姉さんはとても頼もしく、俺達は安心してミーティングを進められた。
「……で、このスマホみたいな端末は何なの? 参入したスポンサーの支給品って聞いてるけど」
「そにょ説明はわたしがいたしにゃしょう」
いつのまに着替えたのか、侍女姉さんは見慣れたメイド服からドラマで見る社長秘書のようなパンツスーツ姿になっていた。
髪をおろして伊達眼鏡をかけると、しなやかな中指で持ち上げ、ベタなインテリ演出をする。方言は丸出しだが。
「ドヤ顔でスチャッってるとこ悪いんだけど、なぜ侍女姉さんが?」
「スポンサーだからですにゃ」
「え、マジにゃ!?」
思わず身を乗り出してしまう。
「マジにゃ。モリサギ選手、ミケーニャ訛りが伝染ってますにゃ」
連絡してすぐ来たのも、妙に似合っているスーツ姿も、ロードリア王との打ち合わせのため冒険者学校の近くまで来ていたからだった。
「なんでまたそんな事に……?」
「先代ミケーニャ王の依頼が終わってにゃいからですにゃ」
あー…… 『バカを甘やかすな』とか聞いた気がする。
侍女姉さんは病みの帝王を裸一貫から鍛え直してくれと依頼されているのだ。
「俺達に実質ストレート負けしてから真面目にやってるじゃん、アイツ」
「おぉう、勇者様上から目線……」
「うるさいよ」
ルビーナに一目惚れした帝王は、今じゃ彼女と一緒のケーキ屋で働いている。
部下である七将軍の蘇生費用を捻出するには非効率的と思っていたが、バカ息子とはいえ甘いマスクは大量の女性客を熱狂的なヘビーリピーターへと変えてしまった。
「まぁ勇者様ではバカ帝王ほど集客率アップは見込めないでしょうねぇ」
「うるさいよ、分かってるよ! ミケ猫の、しかもレアなオスが両手あげて店頭に立ってりゃ商売繁盛だろうさ! 実際ヤツとルビーナのツートップで新たに店舗出してんだからな!」
イケメン生招き猫さまさまだ。
「もうヤツのことはどうでもいいよ。で、侍女姉さんてお金関係かなり「がめつい」イメージがあるんだけど、出資するメリットってあるの?」
「大ありですにゃ。依頼も完遂できるうえ、大儲けしちゃいますにゃっ☆」
「にゃ☆ ってカワイイなあんた……」
口にするのも恥ずかしいスタンダードなキメポーズ。
おちゃらけて見えても、先にある利益はちゃんと計算済みなのだろう。
「先輩姉さん、☆はさすがに痛い、痛いですぅ」
「お静かにアンにゃさん。あとモリサギ選手、がめついは聞き捨てにゃりませんよ?」
右の裏拳で吹き飛ばされるアンナを目で追っていた俺が視線を戻すと、涼しい笑顔が鼻先に迫っていた。
「き・き・ず・て・な・り・ま・せ・ん・にゃ☆」
「スチャスチャ怖いです」
左中指で何度も眼鏡を押し上げ無言の圧力をかけてくる。事実なのに……
「もーモリサギ選手には教えてあげにゃいです! 用途がわからず困るがいいですにゃ」
膨らました頬で綺麗な顔を可愛く歪め、去ってしまった。
「ほらぁ勇者様がゴメンナサイしないから先輩姉さんヘソ曲げちゃったじゃないですかぁ。いくら事実でも、もっとオブラートに包みませんと。ああ見えて繊細なんですよ? あの人」
俺の知る限りそうは見えねぇな……
「だ、大丈夫です! 私達を含め他の生徒は皆講習済みですので、一緒に使い方に慣れましょう」
しっかり者のローザに教えて貰えるなら安心だ。
「やりますねぇローザ様。年上の魅力で手取り足取りですか。ほらほらリィザ様? このままでは遅れをとっちゃいますよ」
「わ、わたくしもごいっしょにっ!」
「う、うん。リィザにも教えてもらおうかな……」
「ヘイヘェ〜イ勇者様ぁ、接待義務だとしても両手に花とは羨ましいですなぁ! ま、ウチのチビスケはガチですがね」
ホント、紛らわしいよな接待義務。
微妙な表情で頬を赤らめ俯くローザに限らず、鳩野さんをはじめ俺を気にかけてくれるエルマナの女性に、好意なのか義務なのか怖くて本心を聞けない自分がここにいる。
「あ〜ダメだ。ヘタレ勇者だわコイツ」
根拠の無いモテでも美少女達から言い寄られれば、高校生男子なら簡単に踊らされてしまうものさ。
次回更新は1月18日前後の予定です。




