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少し早めの更新です。
「以前お前におみまいされた一斤の野菜サンドでいいよ、今度はちゃんとカットしたやつで」
「お口への押し込みサービスはお付けしますかぁ?」
「頑なに詰め込む気な。味は結構良いのにそれだと堪能するヒマねぇんだよ! ってか詰め込みサービス、オプションだったのかよ!」
「ほほぉう。あれだけギュウギュウに押し込まれてなお私の手料理を味わう余裕がおありでしたとは。まぁココのメニューじゃないんですけどね」
やべぇ、図らずもアンナの腕前を褒めてしまった。
「では勇者様の胃袋からつかんでいきますか。ローザ様もそれでいいですね?」
少し上機嫌のアンナが頭のタンコブをさすりながら厨房へ消える。
「ピョン子、ヤツを見張るついでに何か作ってもらえ」
「しょうがないわねぇ」
悪い意味で本当の飯テロ対策だ。脱兎したピョン子にアンナの監視を頼んだ。
しばらくして。
「は〜い、リィザ様ぁ! 念願のミルフィーユですよぉ」
リィザの前に置かれるケーキセット。白と茶のカワイイ三角柱が二つ並んでいる。
かたや純白の層が幾重にも積み重ねられたミルクレープ。
かたやココア色した層の間に黒蜜が挟まれたミルフィーユ。
「ささっ、どうぞ召・し・あ・が・れ!」
リィザは瞳をキラキラさせ、嬉しさからか「んきゅーーー」とラスカルより数段高い、声にならない声を発していた。
「よかったね、リィザ」
「うんっ! いただきます!」
ニコニコしながら白い方をひとかけ口にする。こうしていると年相応の女の子だなぁ。
「……あれぇ?」
頬を膨らまし、もきゅもきゅしているリィザから笑顔が消えてゆく。
「どうしました? リィザ様」
「ねぇアンナぁ…… あじしないよ?」
「まぁ、湯葉ですから」
やってくれたな。
「お前、ほんっとやってくれんなぁ! リィザの笑顔返せよっ!」
喜ぶリィザにばかり目がいってて油断した。
「なんなんですか! シロップかけないで食べるから味しないんですよ!」
「醤油をシロップとは言わねぇ! いやいや待てリィザ、順応するな」
しぶしぶ湯葉に醤油をかけようとしているリィザを全力で止める。
「ケーキ……」
それケーキじゃないから。どっちかって言うと精進料理だから!
「幼女にする仕打ちじゃねーだろ」
「みるひーゆぅ……」
涙目のリィザが残るもう一つの茶色い山へプルプルと手をのばす。
「待てリィザ! そいつも罠だ!」
「人聞き悪いですねぇ、勇者様。そっちはちゃんとミルフィーユですよぉ」
…………
「ミルフィーユ『カツ』じゃねーか! なんでカフェにちょいちょい和食はさもうとすんだお前は!」
「隙あらばサバの味噌煮など積極的に行こうかと」
いこうかと、じゃねぇよ。
「無駄に精巧な調理しやがって」
表面を覆っている『ころも』は砕いたサブレ等ではないし、黒蜜と思っていたのは中濃ソースだった。
悲しみに沈む幼女の涙を拭い、今一度アンナの脳天に助走をつけた一撃を喰らわす俺だった。
次回更新は12月20日前後の予定です。




