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「しず……フウマ、彼の感想は至極当然だ。いやいや、だから絞めるなって!」
静香の脳天にチョップを入れ丹羽から引き離し正座させる。つられてなのか、友達思いなのか丹羽もその隣に正座した。
さて、どう収拾つけたものか。とりあえず静香に責任取らせる方向は確定として…… うーん。
腕組みで考え込んでいると、いつのまにか俺の横に鳩野さんが立っていた。
「つまり杜鷺君は学園祭当日、『優しい』お義姉さんに入れ替わってもらいクラスの出し物をサボる算段だったのですね?」
「「え?」」
俺と静香がハモり、俺は少し意地悪な笑顔の鳩野さんと目が会う。
そうか。鳩野さんのパス、活用させてもらうぜ。
「し……しょうがないわねぇ~、カワイイ弟の悪巧み、この『超優しい』お姉ちゃんが叶えてあ・げ・る」
ウィンクと精一杯のセクシーポーズで静香の額をつつく。が。
あっれぇ? 鳩野さん、冷めた目で一歩ひかないで?
おい霊仙寺、俺渾身の静香っぷりを見て笑いを堪えるのはやめろ。逆にアンナ、お前は清々しいほどの爆笑だな!
「いえいえお義姉さん。彼を甘やかさないでください。当日は私が杜鷺君にかわって校内をご案内しましょう」
頬を赤くし、完璧な作り笑顔で俺の左腕に密着する鳩野さん。お姉さんのイントネーションが変だったのは気のせいだろうか。
「それでいいですよねぇ? 『杜鷺』君」
俺の腕を絡めたまま、眼下で正座する静香に圧力をかける。
「は、はい……承知いたしました。謹んでお受けします」
力無く、ふたつの意味で返答する静香だった。
「やるわねアカネ」
「オッパイさん、いいんですか? 彼女に独占されて。あの女、ぜってぇ出店でタコ焼きあ~んとかやりますぜ」
「オッパイ言うな! アンタともそのうち決着付けないとね!」
こっちの学園祭に間に合うのかさっぱりな現状。バーターとして静香が働いてくれるなら俺も楽できるかもしれない。
鳩野さんの『鳩の一声』で強引に事態が収拾された後。
「ねぇねぇ、あなたが『本物の』杜鷺くんだよね?」
着替えのためトボトボと静香が退室し、睨み合うアンナと霊仙寺の仲裁に鳩野さんが苦戦している隙をついて小声で話しかけてきたのは丹羽たちと一緒に残っていた山田さんだった。
「事情は聞かないし、誰にも言わないから安心して? なんか大変そうだねぇ、わたしこんな生々しい恋の鞘当て初めて見ちゃった」
さすが優等生の山田さん。気が利く上、空気も人間関係も読めちゃうコ。鞘当てかどうかはアヤシイけどね。
「オジョウサン、ヒトチガイダヨ」
珍妙な女子制服を着た俺が本人だと見抜いているとは。山田さん侮れねぇ。
「でもね、わたし『あ・げ・る』はどうかと思うの」
「いやぁ、お恥ずかしい。でもなんで静香が俺のニセモノとわかったの? 同じ服装で並ぶと妹くらいしか見抜けないのに」
「ふふ~ん、だてに隣の席を占有してる訳じゃなくてよ?」
姫カットのセミロングを弾ませ、控えめにエッヘンとする山田さん。異世界ヒロインズが気付く前に「じゃあね」と笑顔で小さく手を振り、何事も無かったかのように静香と入れ代わりで教室を出ていった。
「わかる人にはわかるんだなぁ」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
帰宅後。
機能回復をした燕尾服を受取り、さっそくエルマナでの勝負服に着替える。
一息つきリビングへ戻ると、ラビ庵で施術中の霊仙寺を覗いていたサイコパス侍女が重い空気を背負ってうち拉がれていた。
「どうしたアンナ」
「あの女、揺れてるんっすよ…… くそ、着やせにもほどがあんだろ! なんなのよ、まだ本気出してなかったって事? そうだ、もがなきゃ! もいでリィザ様に装備しなきゃ!」
「まてまてまて、なにを見てしまったかはだいたい想像つくが落ち着け。自分が何を言ってるのかよく考えろ」
「そうでした。今のリィザ様にあのブツは捌けねぇ…… 逆にアンバランスっ! バランス大事!」
「そっちじゃねぇ!」
なかなか重症のようだ。
「杜鷺君。こんな人と一緒で大丈夫なんですか?」
まぁ俺的にマミさん程では…… とは言えない。
「ハァ!? 貴女も他人事じゃないですよ? 巨乳テロです、危機感! 危機感大事!」
鳩野さんに詰め寄ったアンナは両肩を掴んで訴えかけている。久しぶりに聞いたよ、巨乳テロ。
「失礼ですね。私は杜鷺君を満足させるくらいにはありますよ」
「勇者様は『そうかなぁ』ってお顔してますけど?」
「してねぇよ。とにかくお前はその全方向にケンカ売ってくスタイルをやめろ」
「ねぇ、サイコ侍女はなんでこんな必死なの?」
「俺に聞くな」
脱兎したピョン子が冷蔵庫を漁り終え、不思議そうに聞いてくる。
「何言ってるんですかピョン助! あなたもその2.5次元態にあぐらかいてると足元すくわれますよ!」
誰だよピョン助って……
次回更新は12月7日前後の予定です。




