3-3-15
「ロードリアでリーザ姫様の侍女をしております、アンナと申します」
以後お見知りおきをと、よそ行きのアンナが丁寧に挨拶をする。
「その侍女さんが大事なお姫様を放って杜鷺と何やってるのよ?」
「ウチの姫様は放っておいても逞しく育つんで大丈夫です。問題はむしろこちらの旦那様候補でして」
アンナに二の腕を掴まれ、強引に引き寄せられた。
「なんだよ旦那様候補って」
「今更なにすっとぼけてんです? 勇者様のことですよぅ。リィザ様とご結婚なさるのでございましょう?」
ございましょう? じゃねぇよ、即通報だよ。
「何をやっているのかと問われれば、姫様と釣り合うよう勇者様を教育中ってとこですかねぇ」
誰に言うでもなく、虚空を見上げ答える。
「ずいぶん怖い物知らずの泥棒猫ちゃんね」
「まぁケットシーですから」
挑発的な笑顔とともに霊仙寺へ視線を戻すアンナ。ウソつけ、お前ケットEっつてただろ。
「そう言う貴女は勇者様にフられた負け犬ちゃん————」
俺達の足もとを中心に一瞬で数メートルが霜に覆われ、衝突音と同時に冷たい白煙で視界をふさがれる。
予想はついていたが冷気が散ったあとには、薄笑いを浮かべ重冷気剣を素手で受け止めるアンナの姿があった。
「杜鷺ィ! なんなのこのコっ!」
刀身を掴まれあがく霊仙寺。イーストドラゴンを出してないので本気ではなかったのだろうが、双方少しやりすぎな気もする。
「見た通り、他国の姫に喧嘩売っちゃうサイコパスメイドだよ」
決め顔のアンナの脳天にチョップを入れ霊仙寺から引き離す。
「痛いじゃないですかぁ、先に手を出してきたのは向こうですよ?」
「ちょっとイイ? ことわっておくけど、ワタシ負け犬じゃないから。時代が追いついてなかっただけだから。ふられたのは事実だけど」
なんの時代だよ。
「むしろ金髪ツイン巨乳剣士なんて時代遅れなのでは?」
膝から崩れ落ちる霊仙寺。
「お・ま・え・は・混・ぜ・返・す・な!」
小刻みにアンナへチョップを入れていく。
「いえ、最大の障害は潰せるうちに潰しておこうかと……」
さも当然みたいな顔されても。
「お前、リィザのことになると見境ないのな」
「ハイスペックおっぱい巨乳剣士が相手なんですよ? 先にマウントとらないといろんな意味で勝ち目ないじゃないですかぁ」
いったい何と戦っているのか……
「まぁいいわ。今更ひとりふたり増えたところで大差ないもの」
気持ちを切り替えたのか、件のハイスペックおっぱい巨乳剣士が膝の汚れを払い立ち上がる。
「で? 結局なにしに学校へ?」
立ち直り早いな。
「俺の装備一式の受け取りついでに影武者になった姉が暴走してないか見に来た」
「シズカを? 一応それなりにこなしているわよ? アカネも付いてるし。もちろんワタシもね」
意外にまじめなようだ。
「帰る支度していたから、会うなら急いだ方がいいわね」
「わかった。……って、なんでついて来るんだ? フェンス登って帰る途中だったろ」
あわよくば下から覗こうと思っていたのに。
「なんかオモシロそうだし。ラビ庵でマッサージ受けて帰ることにするわ」
うわ、ニコニコしやがって。コイツうちまで来る気だ……
次回更新は10月31日前後の予定です。




