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「プロミディアさん復活したならお願いがあるんですけど」
リフレッシュ直後で気力が充実しているのか、極上の笑顔でフンフンと鼻歌をうたいながら邪神像を復元している。
「なぁに?」
「俺の装備一式、修理できてるか見てきてもらえますか?」
ステータスゼロの効果が切れていれば、カードホルダーを経由してスペード城へ行けるはずだ。
「おっけー、ちょっと見てくるわね」
手乗りサイズになったプロミディアさんが丸く歪んだ空間に飛び込み、待つこと数分。
「ただいまー。大丈夫みたいよ、フウマちゃん」
無事に慧依子先輩とコンタクトがとれ、ステータスゼロの効果は終了したとのことだった。
「もし取りに行くなら学校よ。静香ちゃんが受け取ってたわ」
そういや俺の影武者やってんだよな。話半分で聞いてたがマジだったのか……
「私、勇者様がそのカッコでご学友と鉢合わせしてへどもどする姿が見たいですぅ」
「へどもどて……」
「そぉねぇ、私も見たいかもー! その恥ずかしい制服姿でいいなら特別に学校まで送ってあげるわよ?」
マンガ脳だからかあまり気にしてなかったが、確実にコスプレと間違われるデザインだよな冒険者学校の制服。だが、女神の力で瞬間移動は魅力。楽だもの。
「アンタなに揺らいでるのよ。アタシが言うのもなんだけど、人として男として捨てちゃいけないもの捨てようとしてんじゃない?」
「そうは言っても学校まで一瞬だぞ? 揺らぐって」
ここから学校までの行程を考えれば魅力的な提案でしかない。
「まぁ勇者様の場合、そもそも捨てるプライドがあるのかって話ですがねぇ」
だいたい合ってるので否定はしないさ。
「どうせ学校の連中に見られたところで俺は静香として振る舞うから『痛いファッション』って評判下がるのはヤツの方だしな」
「「「うわ、クズい」」」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「さぁ、俺の静香っぷりを見るがいい!」
五限が終わる頃、屋上の片隅にある給水塔の陰ヘ転移完了。立体的にパイプが入り組んで上手く死角を提供してくれている。
フェンスから下を見れば、五限で終わりの生徒達がパラパラと帰り始めていた。通常はエルマナとの時差がほとんど無いのである程度予想はついたが。
「うちのクラスも今日五限で終わりだったかなぁ」
行き違いは避けたい。手乗りプロミディアさんには不可視化で隠れてもらい、右手のピョン子は制服の飾りっぽいマントをはずして被せておく。
「アンナのメイド服、どうにかなんねぇか? 校内歩くには超目立つぞ」
「あー、お気遣いなくぅ。鳩野製菓の『うっかりメイド』って設定で盛り立ててあげますから」
不安しかないんだが。せめて『うっかり』外せよ……
「まぁいいや。静香が帰る前にヤツの仕事ぷりを確認しておきたい」
教室へ向かおうと給水塔エリアから出てみれば。
「杜……鷺?」
白いふとももを露わに、フェンスへ足を掛けた霊仙寺と目が合った。
「お前、いつもそっから帰ってんの?」
こちらに活動拠点を持っていない霊仙寺。屋上からダイヤ国へ直って帰宅方法は効率がいいのだろう。
「そうだけど。ワタシの事より、なんなのそのカッコ。罰ゲーム?」
登りかけていたフェンスを降り、怪訝そうな目つきで俺を見ている。
「聞いてないのか? 俺の現状」
ロードリアへ飛ばされて以降、霊仙寺とは会っていなかった。
「シズカから聞いてはいるけど…… それ、向こうの制服なの? なんか似合いすぎてて腹立つわね」
カバンを置き、もの珍しげに近づいてきた霊仙寺は華奢な手を伸ばすと、俺の頬をかすめて耳の後ろへと手櫛を入れてきた。
「よくあのクセ毛をストレートに出来たわね」
品定めするように指の腹でサラサラ具合を確認する霊仙寺。
「いえぇ、恐縮ですぅ」
「アナタは?」
アンナが遠慮がちに割って入り、霊仙寺の興味はアンナに移ったようだ。
次回更新は10月25日前後の予定です。




