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3-3-12

「なんですか、このビックリショーは。ついに勇者様の妄想が具現化しちゃったんですか?」


 腐っても女神、いっぱいいっぱいの精神状態でプロミディアさんに「よしよし」され、疲れ切った心が幼児退行してしまうところだった。


「取り乱してすみません」

「弱ったフウマちゃんはそれはそれでなんだけど、私が可憐な器を製作している間にいったい何が……」


 そりゃもういろいろとありましたさ。あと邪神像を「可憐」と表現しないでください。


「勇者様、ココ本当に女神様の神殿なんですかぁ? 私にはアヤシイお店でサービス受けているクソ野郎の姿しか見えないんですけど」


 端から見れば『ピチピチのメイド服着たお姉さんに頭ポンポンされている冴えない男子』って絵面だからな。


「て、プロミディアさんまだそのメイド服着てたんですか!?」

「まぁ初めて貰ったお供え物だしねぇ」


 供えたつもりじゃなかったんですけども。


「あと、言っちゃなんだけどフウマちゃんのカッコもどうかと思うわよ? とっても可愛いけどね」

 そうでした。女子制服でした、ごめんなさい。


「勇者様! 女神にコスプレって、どんなプレイですか! 詳しく!」

「詳しく! じゃねーよ、なんならドン引けよ! なんで前のめりなんだお前は」


 それ以前にプレイじゃねぇけどな! 


「この程度のキモさで私が引くとでも? 勇者様、どんだけ自分がマトモだと自惚れてんですかまったく。キモオタに失礼ですねぇ」


 やれやれと大げさに首を振るアンナ。


「お前が失礼だよ!」

「いいですか、勇者様はキモオタ上級者なんですよ? もっと自覚を持ってください」

「え、お前の中の勇者像てか俺への認識ってそんなマイナスからスタートだったの?」


 あえて否定はしないが。


「メイド服女神が顕現するや迷い無くその胸に飛び込んでバブらせてもらう光景を見せられても『これが通常運転なんだろうなぁ』と思うほどには…… ですかねぇ」


 細い顎に指先をあてて可愛く逡巡した割には紡ぎ出された言葉と、虚空に浮かんでいたであろう俺のクズイメージは最低だな。

 判定基準を深い位置にしているから一般人がドン引く思考や行動でも動じないのか。ダメ人間として認識されていることに変わりない。


「なんか毒舌はそのままに、ポジティブ脳天気な紅音ちゃんて感じのコねぇ……」


 毒舌に愛が無い分タチ悪いですけどね。言葉がガード無効ですもん。


「私をドン引かせたいなら溢れる妄想剥き出しの方向で! お持ちなのでしょう? もっと凄いの」

「なのでしょう? じゃねぇ! ホント、お前の中の俺、どんだけダメスペックが高いんだ! てかお前黙ってろ話進まねぇ」


 満足したアンナがよそ行きの顔で恭しく挨拶と自己紹介をすませ、俺はこれまでの経緯を愚痴まじりにプロミディアさんに語った。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■ 


「……そう。大変だったのねぇ」

「女神様? なんで私の方を見ながら言った!?」


 プロミディアさんに抗議するアンナ。

 さも心外そうな顔してるけど結構な割合でお前が係わってるからな?


「で、ピョン子の記憶を戻す手段ってありそうですか?」


 無表情になったピョン子に顔を近づけじっくり観察するプロミディアさん。


「あきらか時間が経つにつれ記憶喪失とは別におかしくなっているんだけど」

「そうねぇ。私は専門外だけど、大概は……」


 腕組みで深く瞑想していたプロミディアさんが口を開き、ピョン子の両肩に手をかけ回れ右をさせると。


「ここんとこをやく60度の角度でなぐるのがこつよ」


 脳天に手刀を振り下ろす。


「ピぎゃっ!」


 そして声にならない声で床をのたうち回るピョン子。

 すげぇデジャブッ! 見覚えあるもの、この光景!


「ちょ、プロミディアさん! 流行ってんですかその昭和チックな治療法!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜!! ぃいっっったいじゃないの! 痴女女神!!」


 転がった態勢から身体のバネを器用に使って天井スレスレにジャンプするピョン子。そのままプロミディアさん目がけて蹴り込むも、僅かに目測がずれたのか不発に終わった。

そんなことより。


「戻ったかピョン子!!」


 留奈モードでありながら四つんばいの威嚇態勢をとり、尚もプロミディアさんに狙いを定めるピョン子。

 俺はその射線上に割り込み飛びかかるピョン子を抱き止める。


「どこ行ってたんだよ……」


 ……あぁ留奈ちゃんなのに獣クセぇ。 


次回更新は10月10日前後の予定です。

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