3-3-11
ナスノ課長戦以来、久しぶりに訪れた『約束の台地』。
なだらかだった丘は歪に抉れ、神殿に通じる階段もボロボロ。まだ戦いの傷跡がそこここに見られる。
「なんか殺伐とした景観ですねぇ」
ピクニック気分で丘を登り切ったアンナが額に手をかざし、尻を突き出して周囲を見回す。
「どうだピョン子。あの神殿に見覚えは?」
目と鼻の先にちんまりと建つ石造りの小屋。
プロミディアさんの神殿再建は完了しているのだが再現はされていない。原型を留めてない上、言っちゃ悪いが手抜き工事感がハンパない。神殿というより小屋だもの。
まぁ観光名所でも利用者があるわけでもないからいいのかな。
「ちなみに、神殿の地下にお前達首狩屋の本部『縞村』があったんだが……」
「覚えていません。ごめんなさい」
ピョン子の心情にシンクロしてか大きなウサ耳風リボンも垂れ下がる。
「ダメかぁ」
いよいよ本命のプロミディアさんに賭けるしかなくなったな。
「じゃあ入りますか、勇者様」
二回りほど小さくなった神殿には木製扉が付き、押し開けるとそれなりに重厚な軋みを伴った。
神殿内は以前のような美術品など無く、中央の豪華な台座に邪神像がそびえるだけだった。
「−−って、邪神像!?」
若干洗練されたデザインになってはいるが、あの人のセンスが前面に滲み出ているもの。まさしくMADE IN プロミディア、 Copyright プロミディアだもの。
「禍々しいですねぇ」
「んー、アレには何か見覚えが……」
険しい表情で右に左に、しきりと首を傾げるピョン子。
「さすがピョン子先生が一歩も譲れないと評した造形! 記憶の片隅に一撃食らわしてくれたのか?」
「勇者様、他国の私が口を挟むのも何ですが、四大国の中心にコレって大丈夫なんですか? いろいろと」
俺も何故コレがあるのかサッパリだよ! だいたい何で邪神像がこんな所に?
「あ、もしかして……」
内ポケットを探り、プロミディアさんから受け取っていたメモを取り出す。
「なんです? その日付と可愛らしいシールは?」
興味を持ったのか、アンナが無遠慮に覗き込んでくる。
「(俺が)危険な日カレンダーだよ。やっぱり今日だったか」
つくづく運がない。狙いすましたようにSD女神の「ごめんなさいシール』が今日の所に貼ってあった。
「マジすか! すでにお二人は爛れた関係なのですね? さすが痴女女神と名高いプロミディア様。職権乱用すぎる」
「まずその口をやめろ、色々間違ってるから」
「ところで先程からピョン子さんがなにやら祀り始めていますがよろしいので?」
半目で猫口のアンナを押し退けた先では、ピョン子が怪しいステップで邪神像の周りをまわっていた。
「ほんだら へんだら どがびが ふんだ……」
「おまっ、早く言えよ! ヤベェ、いよいよ末期か?」
ぐるぐる目のピョン子を取り押さえ落ち着かせる。
「勇者様ぁ。そこから離れてください、邪神像にヒビが入りましたよぉ」
振り返ると、邪神像のヒビ割れが大きくなり内側から光が漏れ出す。
仁王像より登場するゼロワンのごとく、ガラガラと内側から邪神像を崩してプロミディアさんが出現した。
「あれ? フウマちゃん? ち、ちょっと、いきなり抱きつかれても! あ、あれれ? 嬉しいけどなんか勝手がちがう?」
いろいろ突っ込むところが多いが、不運続きで心がピークだったのだろう。
いくら頼りない女神だとしても、溺れる者は藁をもつかむ的にすがってしまう俺だった。
次回更新は9月26日前後の予定です。




