表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/154

3-3-9

「お主、運がよいぞ。ワシは冒険者相手にそこで講習を開いておるのじゃ」


 それは願ったりだ。塾みたいなものだろうか。

 老人が指さす藪の中には寂れた堂があり、助手っぽい人がおいでおいでしていた。


「勇者様、なんか法外な値段で絵とか壺とか買わされそうな雰囲気ですねぇ」


 仮にも元勇者の老人だ。そんなハズないだろう。


「せっかくここまで来たんだし、何かしら得て帰りたいんだ」

「得るものが無価値の絵や壺でない事を祈りますよ」


 選択したのは六日間の短期コース。

 講習料は団体割引が適用されたが、所持金のほとんどを持っていかれた。


「高ぇなぁ……」

「ここで六日間修行するだけで術が身につくなら安いじゃないですかぁ」

「お前達までわざわざ付き合うこともないんだぞ?」

「どうせヒマですしぃ、お一人様の講習料とたいして差がありませんでしたので」


 意を決して堂へ入る俺達。ふと、掛けられている大きな看板が目に入った。


『水平思考六日間コース』


 あ、これダメなやつだ。


「さ、みんな帰るぞ!」

「えぇ〜何かしら得て帰るんじゃないんですか? いいじゃないいですか、水平思考。発想貧困な勇者様にはちょうどイイ講習内容だと思いますよ?」

「ちゃんとした水平思考ならな」


 まぁそれもどうかとは思うが。現状、『エルマナ思考』臭がプンプンだもの。


「わがままですねぇ。じゃあ『睡眠思考』か『ナルホドハハーン』にコース変更しますぅ? 私もピョン子さんも勇者様に任せますよ」


 エルマナ思考確定ーーーーっ!!


「帰るって選択はないのかよ」

「支払った講習料は返還されないようですし、もったいないじゃないですかぁ。私達は受講していきますが。勇者様お一人で帰り道わかりますか?」


 クッソ、無駄時間確定かよ!

 結局、貴重な時間をよく分からない怪しげな講習で潰す結果となってしまった。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■ 


一週間後。


「それは災難でしたね杜鷺様。申し訳ありません、私達が余計な噂話をしたばかりに……」


 最後の希望として後回しにしていた侍女さんのニンジン料理をおみまいすべく、俺達は現在クラブ城に来ている。


「いえいえ侍女さんのせいではないですよ! コイツらは何か得るものがあったみたいだし、無駄ではなかったと思いたいです」


 俺にはサッパリだったが、アンナとピョン子は熱心にアヤシイ講習を受けていたのだ。


「一週間も勇者様を足止めさせた割に得たものは無かったんですけどねHAHAHA」


 このやろう。


「お前ふざけんなよ、返せ貴重な一週間!」

「まぁまぁ。私はともかく、ピョン子さんは得るものがあったようですよ?」


 アンナに押し出されたピョン子を見れば、なるほど多少は精悍な顔つきになったように思える。相変わらず記憶喪失のままだが。


「板垣死すとも自由は死せず!」


 キリリとした顔でなに言ってるのこの子。


「ピョン子さらに壊れてるっぽいんだけど? ホント、お前らあの講習でなにを得たんだよ」


 これは早急にニンジンフルコースをおみまいしてもらうしかない。


「と、とりあえずそこ座れ。な」


 目の方が座っちゃってる状態のピョン子。腫れ物を触るように、やんわりとテーブルへつける。


「意外と静かなんですねぇ、クラブ城って。私もっと体育会系の活気溢れる職場だと思っていました」


 職場て……


「普段はもっとにぎやかよ。今、国王はマミ様にリベンジすべく三日前にハート国ヘ行ったきり、姫様は学校で姉さんは非番なの」


 侍女さん女王ふたたび! 国王が留守中は力順で代理を務める風習だっけ。


「先日は杜鷺様に海鮮フルコースをご馳走になりましたので、今日は私が腕をふるいますね」


 侍女さんは優しい笑顔を残し、厨房へと退室した。

次回更新は9月7日前後の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ