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翌日、エルマナにて。
侍女さんと侍女姉さんによる西の山エリアの大捜索が行われた。
『根っこワーク』能力を総動員し、『ダイバーだった老人』が籠もっている場所の特定を急ぐ。
地属性の面目躍如というか、植物の集合体である山全体が情報提供者となる『根っこワーク』の前では、侍女さんの言葉通り一時間も待たずに老人の居場所が判明した。
「ありがとうございます。助かりました」
侍女姉妹にお礼を言い、ピョン子とアンナを連れて深い山奥へと分け入る。
コースは獣道ですらない最短距離を選んだ。
おおまかな地図を頼りに、変わり映えしない風景に不安が募るが信じて進むしかない。
「そういえば、アンナは『根っこワーク』能力持ってないの?」
黙々と歩くなか、気分転換に聞いてみた。
「あるにはありますよ。まぁ先輩方と違って私の場合は修行不足なので、侍女ケット本部と連絡をとるくらいがせいぜいですけどねぇ」
昨晩、侍女さん達がすぐ来たのはそういう事か。
「でも腕っ節なら定評ありますし、先輩方にもひけをとらないと思います」
その暴力スキルは侍女としてどうなの?
「お前との初遭遇時に実感してるよ」
「あー…… アレは私の固有技『にゃっくるバスター』です。家事スキルを削ってでも武力に重きを置いた甲斐がありました」
「お前、侍女に向いてねぇよ! なんだ『にゃっくるバスター』て」
高威力の猫パンチにそんな技名が付いていたとは。
「侍女ケットに所属しているメンバーって、そんな連中ばっかなの?」
知ってるサンプルの三人中二人が頭オカシイんですけど。
「そんなわけないじゃないですかぁ。私なんかマトモな方ですよ?」
もっと酷い連中揃いって事か……
「まぁケットランクEのアンナでコレだからなぁ」
高ランクのケットBやケットAなんて想像するのも恐ろしい。
「未来の有能侍女にむかってコレとは失礼な。なんなら勇者様の専属になったってイイんですよ?」
脅し文句が独特すぎて逆に怖ぇよ。てか何の逆だよ、俺。
「有能を自負するなら少しは荷物持ってくれよ、俺に全部持たせやがって」
いや、それ以前に大問題が。
「なんで俺こんな獣道を冒険者学校の女子制服で踏破しようとしてんの!?」
「今更ですねぇ、そこ気付いちゃいましたか。校則で外出時は制服着用なんですからしょうがないでしょう」
侍女さん達も何故か触れてこなかったし、アンナの言うまま来ちゃったけども。
「一歩進むごとに擦り傷が増えて行く場所なんて想定されてねぇよ!」
制服ミニから剥き出しの脚は、堅い小枝や笹のような葉で無数の切り傷が出来ていた。
「あ〜、地味に痛そうですねぇ。私のストッキング使います?」
「そういう問題じゃねぇ! 苛酷な登山をする恰好じゃないだろって言ってんだ、俺達三人とも!」
メイド服のアンナとホットパンツのピョン子に抗議したところで意味ないけどな!
「でも勇者様。師匠となる老人て、たいがいスケベだったりするじゃないですかぁ」
フィクションならそんなイメージだけどな。
「見た目完璧JKの勇者様ならイチコロですって。自信を持ってください、絶対気に入られますって!」
それはそれでヤダ。
「嫌な第一印象だなぁ」
「ここまで来て門前払いよりはいいと思いますがね」
結界を張っているらしく、根っこワークを駆使しても相手がどんな人物かまでは調べがつかなかった。
あの短時間で居場所だけでもわかれば大収穫だから良しとしなければ。
「機嫌を損ねるなってことか……」
ピョン子を治療してもらわないことには始まらないからな。
「そうですよ。なんとか秘術をマスターして無力勇者の汚名を返上しましょう。できるもんならな!」
あげて落とすアンナ。お前ってヤツぁ……
次回更新は8月3日前後の予定です。




