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3-3-3

 結果から言うと、医師からは匙を投げられた状態。診ててくれた先生が悪い訳ではなく、脱兎した姿は人型でもピョン子は魔物なわけで。


「当然モンスターじゃ専門外だよなぁ……」


 人間だとしても記憶喪失を治すのは簡単ではないだろうけど。


「最後の希望もなくなりましたねぇ。いよいよ勇者様の実力が試される時ですよ」


 ブフィ祭までにピョン子の記憶が戻る保証はない。これもステータスゼロの効果なのだろうか。


「アンナは俺をどうしたいんだよ? ブタ王子に負けるところが見たいのか?」


 リィザに無様な姿を見せるなと言いつつ、俺の無力さを愉しんでいるフシがある。


「私が手を貸すのは簡単ですがね。見極めたいだけですよ」


 肩をすくめたアンナは少しあきれ顔で、でも眼差しは厳しく俺と向き合う。

 何をだよ……


「そう言えば尻拭いヒロインズがどうとか言ってたよな。俺が最後にいいとこだけかっさらうとかなんとか」

「そのつもりでしたけどね。勇者様にイジワルしてみたくなったんですよ」


 次の瞬間には真面目なアンナは消え、小さく溜め息をつくと普段の調子に戻っていた。


「あのぉ…… お取り込み中のところ申し訳ありませんが、私はどうしたら良いのでしょう?」


 不安げなピョン子が「恐縮です」とばかりに小さく挙手する。

 まぁ、ここに居ても進展は望めないだろう。

 ピョン子の記憶を取り戻す糸口として有力なのは『侍女さんのニンジン料理をおみまいする』と『首狩屋メンバーに会わせる』ってとこか。

 我ながら冴えていると思ったのも束の間、今のピョン子にクラブ城への石段はキツイだろう。いや、それ以前に俺が登りたくない。


「とりあえずお前の仲間の所へ連れて行く。何かしら思い出すきっかけになればいいけど」


 となれば、まずはラビ庵からだ。クラブ城のニンジン料理を後回しにして、当初の目的通り自宅へ戻るためハート城へ向かうことにした。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■ 


 連日ハードなイベント続きで時間の感覚がマヒしているのだろう。最後に訪れてから10日も経っていないはずのハート城が懐かしく感じる。

 マミさんが復活して以降、母娘喧嘩の絶えない鳩野家。俺達は謁見の間ではなくハート城地下広間に通されている。


「お久しぶりですね、杜鷺君。すっかり可愛くなられて」


 ごめんなさい着替えが無かったんです。

 俺達が来るまでにひと勝負あったようで、マミさんが大股をひろげ色気の欠片も無くのびていた。


「鳩野さんもあいかわらず……」

「あいかわらず何ですか? 空気ヒロインですか? たしかに私、ミケーニャの時から活躍していませんものね」


 凄い勢いで距離を詰めてきた鳩野さんは、グーで眼鏡のふちを押し上げると若干見上げ気味に俺を見据え冷静にまくしたてる。そう、矛盾しているぽいが『冷静にまくしたてる』がしっくりくる感じ。あいかわらずカワイイなぁ。


「可愛いコが訪れていると聞いて」

「うわぁっ! ちょ、マミさんスカートひっぱらないでくださいよ!」


 さっきまで倒れていたはずのマミさんに、いつの間にか背後をとられていた。


「イイわねぇ、その制服。あとで着てみていい?」


 あんた既になんちゃってセーラー服着てるじゃないですか……


「で? あそこの二人は誰子ちゃん? ひとりはピョン子ちゃんぽいけど、なんかイイ感じに抜けてるような……」

「ロードリア城で侍女をしているアンナと記憶喪失中のピョン子です」


 アンナとピョン子は持ち前の危機察知能力でいち早くマミさんの間合いから離れたところに避難していたようだ。


「やっぱりウチの子と違って滲み出る美少女オーラが違うわねぇ〜。こう隙だらけな雰囲気がなんとも」


 新人さんに興味が移ったのか、俺から離れたマミさんはホンワカした表情でヘロヘロ〜とピョン子アンナ組へ流れて行く。

 身の危険を感じたアンナは見たこともない事務的な顔で深く一礼をすると、節度ある挨拶をのべマミハラを上手くかわす。

 一方後手にまわった記憶のないピョン子はまさに「隙だらけ」で、マミさんからいいようにマミハラを受ける。


「ピョン子がご覧のありさまなので首狩屋メンバーと対面させようと思って」


 等身大留奈ちゃん人形と化したピョン子のあられもない姿を横目に話を続ける。


「マンガとかなら衝撃を与えると記憶喪失って治るコト多いわよねぇ」


 虚空を見上げウンウンとひとり頷くマミさん。ヤバイ予感しかしねぇ……

次回更新は7月11日前後の予定です。

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