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3-2-10

 ずっと気を張っていたところにポッカリ時間が空いてしまうと、少しばかりホームシックにもなるというもの。

 静香は俺の代役をしっかりこなしているだろうか。

 心配の度合いの方が大きく、謹慎期間中を利用して数日ほど実家に帰省したいと申し出た。

 一応『使い魔の徹底教育』という謹慎中の課題も出ていたが、もともとアーシャは使い魔ではないうえ、当の本人は姉のピョン子を捜すため早々に行方をくらませていた。

「すみませんが暫く帰省してきます。ついでに装備の修理とピョン子の足取りを追うつもりです」

 いまだ抜け殻の右手を撫でつつ、見送りに来ているロードリア王達に挨拶をする。

「早く見つかるとよいな。ブフィ祭での活躍が今から楽しみじゃ」

「モリサギ様、道中お気を付けて」

「勇者さまー! 早くかえってきてね」


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■ 


 ブフィリハム王子の悪戯で召喚ゲートが故障中のため、ロードリアからハート国へ戻るには片道2〜3日かかるらしい。

 地球文明を取り入れているエルマナだが、地域によっては技術差がありライトバーンではなく人馬型モンスター2頭だての『原付馬車』みたいな乗り物で陸路をのどかに進む。


「で? アンナが俺に同行してるのはなんでだよ」


 ロードリア王家仕様の箱形車中でアンナと向かい合わせに座る俺。


「ローザ様とリィザ様の為に、ライバル陣の拝顔を得ようかと思いまして」


 ライバル? ブフィ祭出場者でもいるのだろうか。


「あー、ピンときてないですねぇ。なんでコイツらアクセシアンはこうなんでしょうかねぇ。鈍感になる呪いでもかかってるんですか? はっ、まさか新種のウイルス!? 私、大発見?」

「落ち着けアンナ」

「ここだけの話、どうなんですぅ? 女の子から向けられた好意に気付いてないとかアリエナイんですけど」


 前にピョン子が言っていた勇者の特徴みたいな事を言っているっぽいな。


「実際、恋愛に鈍感になるのは勇者の仕様みたいだぞ? モテモテ接待で暴走しないためのリミッターじゃねぇの」

「言いますねぇ勇者様。なんか自分はモテてる口ぶりですが」

「まぁ霊仙寺に告られてるからな、お断りしたけども」


 あんまり思い出したくねぇ。


「噂に名高いハイスペックおっぱい巨乳剣士の『ロゼンジ=ダイア』その人からですか!?」


 スゲェ称号付けられてんぞ霊仙寺。


「お前の言う『真っ赤な赤』みたいな称号のその人からだよ」

「マジか…… 合体してロリザ様になっても太刀打ちできない相手じゃないですか!」


 ローザとリィザ合わせちゃった! なんだ『ロリザ様』って、おっかねぇ……


「ん? でもでも今は勇者様フリーってことですよねぇ…… 田舎娘に勝機!」

「お前、二人がいないと言いたい放題だな」


 半目でニヤリと微笑むアンナが俺の側へ移りすりよって来た。


「ダンナぁ〜うちのローザ様なんてどうですぅ? 病みの帝王お墨付きですしぃ」

「まず猫の口をやめろ」


 確かにローザは儚く気高く、お近づきになりたい女性だ。


「なんか護ってあげたくなるかな、ローザもリィザも」


 俺の実力が伴うかは別として。


「今のリィザ様はともかく、ローザ様にそんな心配は無用ですよ。逆に勇者様が護られる側ですね」


 そう言えば静香を助けてくれた時、「大剣を振るっていた頃より」うんぬんとブタ王子が言ってたっけ。


「華奢で物静かなお姫様って印象だけどそんなに強いの? 芯が強いのは知ってるけど」

「傷が癒えればですけどねぇ…… ま、癒えたら癒えたで問題アリといいますかゴニョゴニョ……」


 なにか聞いちゃいけない事情がありそうだ。


「ローザのケガってひどいの? 全然気付かなかったよ」

「剣を振るえないほどには。日常生活には支障ありませんが」


 カードが使用可能ならオール治癒ですぐにでも治せるんだがなぁ。


「先にスペード国ヘ寄ってくれない? 誰かさんのせいで壊れたカードホルダーを修理したいんだ」


 見事にひび割れたカードホルダーをアンナにつきつける。


「こっち向けコノヤロウ、お前だよお前」

「ささ、そんなことより今夜の宿に着きましたよ!」


 明日もコイツと二人旅なのかと考えると先が思いやられる……

次回更新は6月28日前後の予定です。

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