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3-2-9

「リィザ、ちょっとこれ持ってて」


 俺の頭上で尻を高く上げ、ブタ王子に狙いを付けているアーシャを我に返ったリィザに渡す。


「お、王子? ハレンチ行為は俺……わたしの世界ではセクハラで訴えられますよ」


 スカートの中を覗き込もうとするブタ王子の頭をやんわり押しのけ距離をとる。


「いやいや〜、お構いなく〜。単なる嫌がらせだからさぁ」


 今度はモグラ叩きさながらの攻防戦がはじまる。

 片手で制服スカートの裾を押さえつつ、なおも捲ろうと伸びてくるブタ王子の手をはたいていく。


「ワラーノ兄さん! やめてください、下品ですよ」


 ナイスタイミングで仲裁に入るレンガーノ君。


「プライスレイスも見てないで止めてください!」

『ほぇ? なんでぇ? い〜じゃない、パンツ見えたってぇ』


 レンガーノ君が全身でブタ王子とプライスレイスを押し戻し、正座させる。


『ご主人、代わりにわたしのパンツ見ますぅ?』

「ダメですっ、あなた下に何も着てないでしょう!!」


 いい大人ふたりが小学生に叱られている。で、2サイズ以上大きなTシャツの下はまっぱかよ……


「今回は僕が兄さん達のチームに入るんですから、問題は起こさせませんよ!」


 きつく説教するレンガーノ君だが、ふたりの態度を見るに右から左のようだ。


「モリサギ様、ローザ様、リィザ。誠に申し訳ありません! 言っても聞かない兄ですが、出来る限り僕が抑えますのでお許しください」


 できた弟は俺達に謝罪すると、できの悪い二人の背を小突き去って行った。

 残ったギャラリー達もちりぢりに捌けていく。


「縞ウサギのおかげで良くも悪くも意義のあるデモンストレーションになりましたね。勇者様に対して半信半疑だった連中もヘラヘラしていられなくなったと思いますよ?」


 プライスレイスの能力を目の当たりにした俺はといえば、ピョン子が戻ったとしてもどう攻略していいのか皆目見当が付かなかった。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■ 


 翌日、掲示板前で起きたアーシャとブタ王子が絡んだ不測の事態に対して一報が入る。

 イザベラをはじめ、アーシャの放った即死九割の一部始終を砂かぶりで鑑賞してしまった生徒さん達には心のケアが必要と判断され本日休校となり、ブフィ祭は一ヶ月延期される事になった。

 俺はアーシャの主人という立場になっているため、入学そうそう一ヶ月の謹慎処分の身となる。退学でも良かったが、ブタ王子とロードリア王がそれを許さずブフィ祭と同時に復学の予定だ。

 長期休学の身となり気分転換に城の周辺を散歩していると、城の裏手に位置する陽当たりのよい場所でシーツ群に囲まれているアンナと出会う。


「こんな人も来ない所で何やってんだ?」

「シークレットミッションですよ」


 アンナの足もとを見れば、大きなカゴに寝具らしき物がくるまれている。


「洗濯物干してるだけだよな」

「散歩とはいいご身分ですね勇者様。しかし生徒も生徒ですよね、トラウマになるくらいなら冒険者に向かないんですよぉ。ま、チームロリサギにとっては貴重な一ヶ月ですけどもね」


 いやいやアンナ。目の前でボリューミーな男が焼け死ぬ光景を見てしまったんだから当然だろう。ましてや年端もいかない子達だ。


「ほら、リィザ様なんかこの通り」 


 城の片隅にちょこんと立て掛けられたベッド。目を凝らせば派手な世界地図が描かれていた。


「アンナー! パジャマもってきたー…… っれ? 勇者さま!?」

「ご紹介しましょう。アーティスト・リーザ様です!」

「————————ひぅっ」


 リィザの瞳がぐるぐる回転したフリーハンドの円になり泣き出しそうだよ。


「アンナ、しーーっ! ないしょでって言ったでしょ!」


 どうやら俺は来ちゃイケナイ場所へ来てしまったようだ。


「でもリィザ様ぁ、こんな陸地ばかりの大作描かれちゃ外で乾かすしかないですから。怖くて一晩中おトイレ行けなかったんですか? 70%の水分使い切るレベルですよ、まったく」


 俺は気配を悟られず忍びやかに青空展覧会場(リィザ個展)をあとにした。

次回更新は6月22日前後の予定です。

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