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3-2-8

執筆時間がとれたので、予定より早い更新です。

「みなさん、落ち着いてください。兄なら大丈夫です!」


 どうしていいか分からずオロオロしている俺と違って、揺らめく蒼い炎の向こう側ではレンガーノ君が冷静にパニックを収拾してくれていた。


「あのちっこいのが言う通り大丈夫なのよ! ワタシやシズカの能力は効くけど効かないの!」


 俺の手から抜け出たアーシャはリィザの頭上へ陣取り小刻みに床ドンする。

 頭の上でタッピングされるリィザはたまったものではないだろう。

 茫然自失として微動だにしないリィザとは対照的に縦ロールは振動でみょんみょんと上下している。


「落ち着けアーシャ、言ってる意味がよくわからない」


 が、直後に謎が解けた。


『生命換金完了。ゼロ円でご利用になれます』


 ブタ王子が消滅した付近の空間より女性の事務的な声が響くと、空間を割ってその声の主が現れる。


『よっこらせ』


 裂けた空間に手をかけ、段差を気にしながら慎重に降り立つ。

 なんとものんきと言うかマイペースな言動は、かなりこの場との温度差が激しかった。


「アイツ、アイツ! また変な能力使う気だわ!」

「とりあえずお前はリィザから降りろ。揺れが凄いことになってっから」


 静香とアーシャが敗北したというブタ王子の契約モンスターを注視しつつ、手探りでアーシャを掴み自分の頭に載せかえる。


「あれが蘇生能力を持つS種モンスター……なのか?」


 魔物と呼ぶには抵抗がある外見。

 パッと見『休日のOLさん』って感じだもの。

 あざとく鼻背までズレた赤フチ眼鏡からのぞく眠そうな目。

 床すれすれまであるストレートの黒髪に、寝起き感たっぷりのアホ毛。


『ご主人、まぁた殺られたんですかぁ……ふわぁあ』


 ブカブカのTシャツ一枚を、だらしなく素肌に直で被ったという姿は魔物としてどうなのか。

 魅惑の谷間を惜しみなく披露している反則ギリギリのデコルテラインに気を取られていると、


『いくらタダだからって、死に過ぎでしょー…… まぁ仕事だからやりますけどぉ〜? くぁあ〜ふぃ〜』


 その場にペタンと女の子座りをする魔物。倦怠感すごいな、何かボヤいてるし。

 片手でアクビの口もとを押さえ、もう一方の手に集めていた光の粒子をブタ王子が消滅した跡地へ振りまく。


「すげぇ……」


 光の粒子を纏うブロックノイズ片が急速にブタ王子を形造っていく。


「勇者様、あれがブタ王子と契約している魔物『プライスレイス』です」


 周囲がブフィリハム王子の再生を見守る中、アンナが小声で説明してくれた。

 

 ■名 称:プライスレイス

 ■ランク:ストレンジ種モンスター

 ■能 力:自分を含め、死んだ者を生き返らせる事が可能。

 ■戦闘力:十代女子の平均以下。


「見た目通り隙だらけな残念女子ですが不死身ですし、あの能力ですからねぇ」


 ブタ王子復活の儀式は終盤のようで、光の輪が等身大フィギュアの原型にも似た純白の王子像を頭から足もとへスキャンするようにゆっくり移動。

 リングが通過した部分から色がつき、三分もかからずにブタ王子が蘇る。


「ご苦労だねぇ〜。プライスレイス」

『ポンポン死なんでくださいぃ。 死の直前の感覚がタマランとか、ぶっちゃけ引くんですよぅ。ウフフ〜』

「コラコラ〜それはないしょだぞぅ。アハハハ〜」


 死に慣れてるのか、あっけらかんとして休日のOL風魔物とイチャついている王子。


「全身焼かれていたけど、大丈夫なのか?」


 身体も、ついでに頭も。むしろ頭の方が心配だよ!


「ん〜なんだい、君が気に掛けてくれるとは予想外だねぇ〜 何度殺されたって大丈夫さぁ〜。ボクは他人の痛みを知らないから、自分の痛みも知らないんだよ〜」

『ご主人の自分からクズいとこ言ってくスタイル、素敵ですぅ』


一歩上な回答だなぁ。「自分の痛みを知らないから」じゃない所がなんとも……


「うわ、勇者様と違うタイプのクズですねぇ。クズ合戦なら良い勝負かも」


 距離を詰めるブタ王子に合わせ、俺のとなりから背後へと身を隠すアンナ。


「おやぁ〜? 数日見ない間にずいぶんキュートになってぇ〜。うんうんボクは今の方が好きかなぁ〜。お淑やかな感じがグッとくるねぇ〜」


 シズカ、どんだけ暴れたんだよ…… そして圧がすごい! メタボ腹を揺らし舐めるように観察される俺。

 まぁ、ニセモノだとバレていないだけ良しとするか……

 いや、良いのか? コレ。

次回更新は6月19日前後の予定です。

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