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3-2-5

 野菜サンドを口いっぱい、ギュウギュウに詰まらせた俺を恍惚の表情で見下ろすアンナ。上気した頬に手を当てご満悦だな、コノヤロウ。

 普通なら窒息するところだが、味わう間もなく強引に飲み込むことで事なきを得る。

 一仕事終えた感で額の無い汗を拭うアンナ。ローザに厳しく注意されると、表面だけ反省して別の話題に切り替えてきた。


「さっき小耳にはさんだんですけど、今回の合同演習はブタ王子のとこが全面出資するそうですよ? アクセシアンいびりの為なら金に糸目をつけないあたり、らしいっちゃらしいですがね」

「そんな横暴、父が了承するとは思えませんが……」


 名前だけはよく聞く『合同演習』。

 ローザ達に説明を聞くと、冒険者学校で学んだことを実戦形式で確かめる武闘大会みたいなイベントらしいけど。

 今回は、俺への嫌がらせ目的でブタ王子が一枚かんでいるとのこと。


「ノイエ王から結構良い条件を提示されたみたいで、かなり乗り気と聞きました。近いうちサプライズな発表があるかもしれませんねぇ」


 意外にその発表は昼食後とタイミングは早く、千人近い生徒達が講堂に集められた。

 壇上の王様兼校長であるロードリア王と、その隣に立つスキンヘッドにサングラスの恰幅がよいオッサンに注目が集まる。


「ローザ、あの人は? あの黒いスーツ着たSPみたいな強面のオッサン」


 王様のとなりを小さく指さし、前にいるローザにこっそりたずねた。


「あの方がブフィール国の王、ブフィリハム・ノイエ様です」


 まさかの王様! 食べ過ぎのヒットマンか、百歩譲ってロードリア王のSPだと思った…… あの人が、派手で嫌味なブタ王子と真面目なレンガーノ君の父親だったとは。

 ブフィール組の親分って方がしっくりくるビジュアルのノイエ王にマイクが渡ると、メタボ腹を揺らして威風堂々前へ出る。


『えー、生徒諸君。えー、あれだ。私がブフィール国王だ。ブフィリハム・ノイエだ。紹介をあずけましてだ。えー、よろしく』


 何を言ってるのかわからねぇ!

 見た目に反して支離滅裂な挨拶は生徒を凍りつかせるのに充分だった。


『えー、今回の合同演習はアレだ。かなり本格的なやつだ。油断してるとガッてなるアレだ。命の保証はない』


 大雑把すぎてさっぱりだよ! 最後のワードちゃんと説明してくれ、アンタの外見でそれは洒落になんねぇ!

 当然のごとく生徒全員がザワめく。


『ワシが簡単に説明しよう』


 さすがロードリア王。マイクを放さないノイエ王にやんわりと下がってもらい、選手交代。


『今回は孤島での野良モンスター討伐を兼ねた実戦となる。もし戦闘中に死亡しても、ノイエ王の好意により無料で蘇生してもらえるので安心してくれ』


 蘇生保証があるのは心強い。考えようによっては、死に至るまでの判断ミスとか貴重な経験になるだろう。


「あー、アレだ。とにかくアレだ、ブフィりまくれ!』


 時折ノイエ王が割り込み、中身のない冗長なスピーチで時間をとられ、纏めれば三十分そこそこの説明会も二時間に及んでいた。なんだよ、ブフィりまくれって……


『冒険者を目指すには良い機会だと思うが、特殊なケースなので参加は自由とする。詳細は掲示板に貼り出したので各自確認するように』


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■ 


 件の掲示板前にて。

 校内各所にある掲示板前は、やる気のある生徒達でごった返していた。

 俺も内容を確認しようと背伸びをするが、人だかりの山からのぞく『ブフィ祭』という力強い筆文字のタイトルしか見えない。


「なんなのあれ? ブフィサイ? ブフィマツリ?」


 ローザが俺の手を引き、別フロアの比較的すいている掲示板へ案内してくれた。


「ブフィフェスと読むみたいです。モリサギ様は参加なさいますか?」

「俺はホラ、諸事情で強制参加決定だから。ローザは出るの?」


 俺が言うのもなんだが、この可憐なお姫様がモンスターと戦う姿が想像できない。


「差し支えなければモリサギ様とご一緒したいのですが」


 はにかんだ笑顔を俺に向けるローザ。桜色した指さきが示す項目には、

『参加者は三人以上でチームを組むこと』とある。

 十日後に開催されるブフィ祭をざっくりまとめるとこんな感じ。


■ 学年を問わず三人以上のチームを組む

■ 孤島での野良モンスター討伐

■ チーム同士のバトル上等

■ 死んでも生き返れる

そして、

■ 孤島制圧後、最終的に残ったチームが二つ以上あれば後日頂上決戦が行われる


 だ。良くも悪くも肝は『死んでも生き返れる』だろう。

次回更新は6月8日前後の予定です。

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