ダイヤの3
ハート国が牧歌的でどことなくノンビリした印象だったが、ダイヤ国は逆に洗練された都会のイメージだった。高層ビルにも似たダイヤ城に入ると、いくつかのセキュリティを通り、エレベーターで地下の防衛本部へ到着。ダイヤ城の地下にあるTCU本部は、暗い照明を採用しているものの、全面ガラス張り構造のため見通しがよく圧迫感がない。少し強めの空調は多数設置された器機類を冷やすためなのだろう。
TCU。ダイヤ国の防衛チームの名称、トレーディング・カード・ユニットの略。ハート国で言う「ガンパンマン」にあたり、ダイヤ国に属するモンスターを状況に合わせて編成した三体一組のユニットからなる。ガンパンマンが中世っぽい風貌に対し、こちらは近代的だ。ただ、スーツを着ているのが獣人であることを除けば。
霊仙寺からスズメさんの護衛に付いていた三人を紹介される。いずれもクアドラカードで種族自体は知っていた。まず、リーダーのイノシシ男。頼りがいのある野太い声の彼は、たまに鼻をすすり、職業柄か周囲を見回し独特の間をとって握手を求めてきた。
「ジャック・ボアーだ。宜しく頼む」
次に彼の部下のウマ男。少し往年の井上順に似た甘いマスクをしている。
「ポニー・アルメイダです。よろしく」
最後に紹介されたのは、なんか不機嫌そうな、目つきの悪いカラス女。
「……クロウ・オブライエンよ。アナタ女の子?」
思っている事をずけずけ言ってくるタイプらしい。ただ、ハート国の無機質なトランプ兵と比べると、意思疎通が可能なのはありがたい。
「霊仙寺。出オチ感しかしないんだが、大丈夫か? それこそ色んな意味で」
「腕はいいハズよ? 毎回の代表護衛任務以外にも国内で起きた数々のテロを未然に防いだり、経験は積んでいるわ」
これ以上は聞かないでおこう。
そんなエキスパート連中を出し抜き、要人誘拐を成功させる「贖罪の四天王」とは。
「フウマ、その馬違う!」
「どうしたピョン子。たしかに馬といいつつポニーだが……」
急にブンブンと暴れ出すピョン子。
「そいつだけハートの魔法使いに付いてたのと同じ魔力が出てる!」
ポニーを囲む全員が一瞬で身構え、緊張が走る。だが、ポニーは慌てる様子もなく余裕の態度だ。
「いい鼻をお持ちだ。どこの陣営だい? フリーなら新生魔王軍に招待するよ」
「貴様! 本物のポニーはどうしたぁっ!」
ジャックの怒声が響く。
「生け贄のメンバーになってもらったよ」
「クソォッ! 両手を上げろっ! 両手を上げるんだっ!」
銃を構え激昂するジャック。
「アナタ、何者なの?」
クロウの質問を待ってましたとばかり、大見得を切るニセ者ポニー。
「ボクは、アクター桜島。君達が捜している『贖罪の四天王』のひとりだよ!」
ポニーからジャック、クロウ、霊仙寺、俺と目まぐるしく姿を変えていく。
「ご覧の通り、一度触れた相手なら誰にでも化けられるんだ」
ついに正体を現す贖罪の四天王の一角。
「大根……だよな?」
うん。ダイコンだった。野菜の。
空中にプカプカ浮かぶ、長さ一メートルくらいの大根。簡素な手足と目、口がついている。
「どぉだい? このスノーホワイトのボディ。とてもみずみずしいだろう?」
大根だからな。九割水分じゃねーか。
「こんな奴にダイヤ国の中枢まで侵入されてたなんてね……」
とても悔しそうな霊仙寺。まぁそうだろう、三百円でお釣りがくる奴に振り回されているんだから。
「ボクの正体を見られてしまっては、残念ながら皆さんには城ごと消えてもらうしかありませんねぇ」
自分から明かしたクセに、理不尽なテンプレセリフを……
「一応聞くけど、誘拐した人達はどこだよ!」
こちらもベタに返す。
「鼻のきく腹話術師さん。ボクの完璧な演技を見抜いた功績を称えて、良いこと教えてあげるよ」
言ってみるもんだなぁ。
「ボク達四天王が責任を持ってお預かりしているよ。あぁ、ハート国を担当したマヌケは取り逃したようだけどね。取り返すつもりなら、いつでも魔王城へおいで」
なんて余裕だ。ご丁寧に場所を教えるなんて。迎撃準備はバッチリってことかよ!
「場所がわかれば十分だわっ!」
ダイコンの挑発に耐えかねた霊仙寺の怒りが冷気となってうねり、頬に風を感じた時にはすでに重冷気剣で斬りかかっていた。
「速っ!」
屋上で戦った時よりも数倍速い気がする。が、誰もが両断したと思った瞬間、ドライアイスが充満したように冷気の煙幕が二人を包む。全ての冷気が足下へ流れ、俺達がみた光景は。
「霊仙寺が二人!?」
「重冷気剣!? ワタシしか扱えないのに!」
重冷気剣同士で鍔迫り合いをする二人の霊仙寺。剣が衝突するたび冷たい白煙の層が増し、俺の膝から下が隠れはじめる。
「言い忘れていたよ。ボクは天才だからね、姿だけじゃなく相手の能力もコピー出来るんだ」
やべぇ、超ヤベェ。挨拶の時ピョン子つかまれてた!
「大丈夫よ。アンタがコピーされても無能力だし、アタシになった所で動けないもの」
「芸は盗むものだからねぇ。一度見たものは完璧にコピーしちゃうはずなんだけど、キミの腹話術は複雑で無理そうだよ。キミの言う通り、たいした能力じゃないから不要だけどね」
ただの腹話術師だと思われているのは好都合だ。なんにしてもダイコンに手の内、特にピョン子の即死九割を見られるわけにはいかない。
「姫様、ボクは次の仕事があるからね。続きは魔王城で」
もとのダイコンに戻り、頭の茎から小さなスイッチを取り出す。アニメでよく見るシーンだが、このダメデジャブによれば爆破スイッチでビンゴのはずだ。
「では、お待ちしていますよ。生きていたらですけど」
「やばい、こっちだ霊仙寺!」
「ちょっ、なによ杜鷺! は、離しなさいよ」
霊仙寺を抱き寄せ、一足早く非常階段を目指す。
微かにカチリとスイッチ音が聞こえ、爆音と大きな地鳴りが起きた。用意周到に城のあちこちに仕掛けた爆発物なのだろう。轟音の中、振り返れば俺達に続くTCUメンバーの後方で、湾曲した空間へ悠然と姿を消すアクター桜島が見えた。危機一髪、地上に出た俺達が何もできずに見た光景は、炎に包まれ崩壊するダイヤ城とパニックで逃げまどうダイヤ国民だった。
「やってくれたわね、あの大根! ジャック、隊を編成して避難と救助を急いで!」
「わかりました、姫!」
俺達を含め、脱出したTCUメンバーと非番で難を逃れた隊員が合流し、ジャックを中心に事態の収拾に奔走する。霊仙寺は炎の中へ飛び込み、重冷気剣で大量の水を発生させ消火作業にあたった。水属性の面目躍如といったところか。幸い各国の特徴をバランスよく備えているダイヤ国は、治癒魔法を扱える人材が居るようで、俺のオール治癒と併せ、城の崩壊と近隣施設への大ダメージはあったが、死者を出さずに済んだ事はなによりだった。
「ありがとう杜鷺、アンタがいてくれて助かったわ。一つ借りができたわね」
「ほとんどプロミディアさんのおかげだよ」
魔力残量に比例してか細く発光するオール治癒のカードを霊仙寺に向け、重冷気剣の過剰使用でできた凍傷と火災による火傷を癒す。
「使い切ったか。ギリギリだったな」
光が消え、魔力がカラになったカードを見つめる霊仙寺。
「プロミディアって、痴女女神の?」
「間違っちゃいないが……え、あの人どこでもそんな認識なの?」
『失っつ礼ねぇ! 今回のMVPに対してぇー』
「わっ、カードが喋った! なにコレ?」
霊仙寺が詰めより、カードホルダーに戻そうとした俺の手を胸元に引き寄せ、食い入るように観察する。その姿は好奇心たっぷりの仔猫のようで可愛かった。
カードを渡せば済む事はわかっているよ? でも、あえて無意識に当ててくる柔らかい弾力をもって、俺も霊仙寺に癒してもらうのさ。心は紳士で。
「思い出した! 屋上で聞こえてた声だわ!」
『女神プロミディアでぇーす! ダイヤのお姫様としては初めましてかしらぁ』
「は、はじめまして、女神プロミディア様。ダイヤ国第一王女、ロゼンジ=ダイアです」
あぁ、ロゼンジ=霊仙寺、ダイア=橙愛か。
『女王にソックリなのねぇ。人生勝ち組でうらやましいわぁ……でも、この大きなモノでフウマちゃんを誘惑するのはヤメテもらえるかしらぁ?』
谷間に埋没する俺の腕に気づき、慌てて離れる霊仙寺。
このあと俺が理不尽に怒られたり謝ったりと、ありがちな展開を踏んでいる頃、ダイヤ国の大臣達は緊急会議を開いていたようで。姫の安全が最優先と考えた彼等の総意により、ダイヤ国復興の指揮は大臣とTCUが中心となり、俺は霊仙寺を連れて日本への避難を任される。
ライトバーンでの移動中、プロミディアさんを交えて俺側の経緯をザックリ説明し終えた頃、専用駐車場へ転移完了した。時刻は夜八時過ぎ。俺の世界ではダイヤ国の惨事が夢だっだかのように穏やかで、ライトバーンを降りれば春独特の生温い夜風が頬を撫でる。
なんか目まぐるしい一日だったな。
「霊仙寺の拠点てどこなんだ? 最寄りの駅くらいまでなら送っていくけど。当然、徒歩な」
「は? 何言ってんの? ないわよ、そんなの」
お前こそなに言ってんのだよ。
「鳩野さんみたいに、こっちの世界での活動拠点って無いのか?」
「ええ。ワタシの場合はエルマナから直だったから。さぁ、行くわよ。荷物持ちよろしくね」
最後まで付き合ってやるかと諦め、大きめのスーツケースを受け取る。漫画喫茶は霊仙寺のイメージじゃないから、駅前のビジネスホテルあたりかな。
一人でスタスタと先行する霊仙寺の後を追い、ガラガラと重いケースを引いて角を曲がると、彼女の姿は消えていた。
唖然と立ちつくす俺。敵の襲撃? 警戒して周囲を見回すが、くたびれたサラリーマンとコンビニ袋をさげたカップルしかいない。
「フウマ、気をつけた方がいい。アタシは外れる」
霊仙寺の消えた方角を気にしながら耳を立て、留奈モードへ脱兎したピョン子は後を追うように走って行った。ピョン子の姿が暗闇へ溶け込むのと同時に、十メートル先から勢いよくドアが開かれる音と、ポニーテールを振り乱しながら高速で迫る鬼を確認する。
「フゥ・ウゥ・マァァァァ!」
狙い澄ました静香のドロップキックはスローモーションで俺の鳩尾へときれいに入り、モビルスーツ同士が格闘した時に生じる『ドゥヴィイイイン』みたいな効果音の幻聴を伴って、軽い呼吸困難に襲われた。
「アンタ、際限無しなの!?」
「ま、待て、俺にもなにがなんだか……」
姉に胸ぐらを掴まれ、ガックンガックン揺すられる。
「なんなのよ、あの金髪ツイン! 巨乳テロ? ねぇ巨乳テロなの!?」
まず、巨乳テロがなんなのか説明しろ。
平均サイズよりやや小ぶりな姉をなだめ、意を決して門をくぐる。霊仙寺の行き先は俺ん家だったのか……俺の安全はともかく、敵に襲われていなくてなによりだ。重い足取りでリビングへの廊下を進み、磨りガラスの向こうから漂う怒気を感じてドアの前で深呼吸。
気を取り直して。心を強く持って。
さぁ、そんな訳でやってまいりました言い訳大会会場。都がツインテールを揺らし、いつも通りお茶を並べる。
「えと、こちらはクラスメイトの霊仙寺橙愛さん」
今回もテーブルコタツを囲んで正面に静香。右に霊仙寺、都は姉と対照的にニコニコ顔で霊仙寺が座る狭い空間へピッタリと入り込む。
「あれ? ルビーナは?」
いないに越したことはないが、場の空気に耐えきれず誰にともなく聞いてしまった。
「買い直しに行かせてるわ」
片道三時間のケーキ屋へ!?
「で? 楓麻を狙う新キャラ、巨乳ちゃんの作戦は搦め手ですか。みごとに外堀を埋めてきましたね」
静香は細めた目で霊仙寺に懐く妹を見る。
「杜鷺が二人いるわ」
訝しそうに俺と静香をキョロキョロ見比べる霊仙寺。
「俺達双子なんだよ。こいつは姉の静香。ダイコンじゃないからな」
「わかってるわよ」
「大根? ワケわからないわ。で、どんな関係なの? 第一声が『しばらくお世話になります』なんだけど、お姉ちゃんを納得させてみなさい」
なんだそりゃ。どう説明すればいいんだ? 俺ピンチ!
「もしかして、杜鷺困ってる?」
妹のツインを解き、今度は慣れた手つきで編み込みを始める霊仙寺。見ての通りだよ。助けろよ。さっきの借り、返すがいいよ。そんな願いを込めた視線を送ってみる。
「はい完成。アンタより指どおりが滑らかだったわ」
一本のデカイ三つ編みができあがっていた。妹を喜ばせてくれるのはありがたいが、今はどうでもよろしい。
「はいはい、そんなに睨まないでよ。助けてあげるから」
うむ、任せた。
霊仙寺はヤレヤレと大げさにかぶりを振ると、優しく都に囁く。
「都ちゃん、あとで仕上げしてあげるからお部屋で待っててくれる? チョットえげつな……大人の話し合いをするの」
都の両肩を支えにそっと立ち上がり、わずか数歩ながら気品溢れる所作で俺の隣に腰を下ろす。妹は少し不満そうだったが、素直に部屋へ戻っていった。
「お義姉さん、フーくんに代わって詳しく説明しますね」
お姉さんのイントネーション変じゃね? フーくん!?
「りょうぜ……」
「いいから。まかせなさいよ、盛り上げるから」
嫌な予感がして黙らせようとしたが、先手を打たれる。直前までの気品はどこへやら。二つの意味で静香に見せつけるように、わざとらしく俺に胸を押しつけてきた。
「今ぁー、ワタシの実家(城)が大変なコト(崩壊)になっててぇー、戻ったらワタシ達(敵に)殺されちゃうかもぉー! なんですよぉ」
「親に殺されるって……楓麻! この子にナニしたのっ!?」
弁解しようとした俺の口が、霊仙寺のしなやかな指先に遮られる。隣を見れば、身を乗り出した彼女が「いいから任せろ」とばかりにイイ笑顔でうなずいている。
「えっとぉー、学校の屋上でぇ、コンゼンコウショー? きゃっ恥ずかしい」
変な所で区切るなよ、俺が悪者の流れじゃねーか!
「フーくんにぃ、何発も(怒りの矢を)ぶち込まれた時はぁー、死んじゃうかと思いましたぁー」
「……つまり娘を傷ものにされた親御さんがご立腹と?」
「覚悟が決まったらぁ、三人(アカネも一緒)で挨拶(魔王城へ殴り込み)に行く予定なんですぅ」
「三人って、あなたまさか!」
愛おしそうに下腹部を撫でる霊仙寺を見た静香が立ち上がり、
「出しちゃった結婚なんて、お姉ちゃん許しませんよ!」
裏返った声で叫んだ。
「できちゃっただろ! いや、できてないけど!」
思わず俺も立ち上がってつっこんでしまった。
「結果は一緒でしょーがっ!!」
どう収集着ける気だと霊仙寺をみれば、この混乱具合に満足した顔でお茶をすすっていた。
「お前、すげぇかき回しっぷりだな!」
投げっぱなしかよ。都に使った気の一割でも俺にまわせよ。
大荒れの予感しかしない中、さらに追い打ちがかかる。
「静香殿、遅くなった。ご所望の南瓜のチーズケーキだ。それとまた玄関先でこの娘を拾った」
「ピョン子!」
嫌がらせ以外のなにものでもないお使いを実直にこなしてきたルビーナの後ろから、トテトテとピョン子が続く。
「そう! このコ! 朝はまんまと逃げられたけどっ! 楓麻の嫁とか言ってたわよね?」
あぁもう、どうしたものか。
「とりあえず、ケーキでも食べて落ち着こうぜ。都! ちょっと手伝ってくれ」
隣の部屋でドレッサーに映る新鮮な髪型を食い入るように見ていた妹を連れて、キッチンへ逃げることにした。
「おお、十五郎。すまんな、私がやろう」
「お疲れ。半日がかりのお使いなんて、断っていいんだぜ?」
「いや、人間に仕えるなど、とても不良行為じゃないか。それに、買い直しに行ったおかげで来客分のケーキが出せる」
ルビーナがそれでいいならかまわないが。食器の用意を都とルビーナに任せ、俺は強引にブレイクタイムへともっていくために、リビングのテーブルコタツを来客用の長いセンターテーブルと交換する。位置関係は、静香、都、俺の杜鷺家チームの対面にルビーナ、霊仙寺、ピョン子のエルマナチームになった。
「なんか、外人さんばっかりね」
「みんな同郷の出身なんだよ」
「で、リボンのあなた。そう、一番ユルそうなあなたよ。遠慮ナシな部分は好感もてるけど、一回ケーキ置きなさい。誰も取らないし冬ごもりの準備には早いわよ?」
ケーキでリス頬になったピョン子に可哀想なコを見る目で優しく声をかける静香。
「どこかで見たことある顔なのよねぇ……」
「お兄ちゃんの好きな留奈ちゃんに似てるんだよ」
「あ! 楓麻のバカでかい枕で見たんだわ。年下に見えるけど、いろいろ大丈夫なのよね?」
「コ、コイツもクアドラのオフ会で知り合ったんだ。えぇと、ハンドルネームはピョン子さん。嫁ってのは俺の好きなキャラクターを指してるんだよ」
「いつの間にか私とミヤ以外にクアドラの話題で盛り上がれる友達が出来てたのね。女の子ばかりだけど」
クアドラは昔から商品CMもアニメ化もしているのに、俺の周りでは誰一人はまっていなくて、子供の頃は姉妹に相手をしてもらっていた。
「お義姉さん、発言いいかしら?」
スマホをいじっていた霊仙寺がイントネーションの怪しいまま挙手。
「ひっかき回しといてなんだけど、誤魔化し切れそうにないし、茶番劇は終わりにしたいわ」
「どういう事かしら?」
「弟さんはモテモテじゃありませんよ、って事。彼が好みそうなシチュエーションを作ろうとしたら暴走したにすぎないわ。彼を取ったりしないから安心して。それと、シズカは暴力だけの痛いツンデレキャラを演じてないで、アメも適度に与えてあげた方がコイツの好感度も上がるわよ」
言いおった……都ほどではないにせよ、静香がブラコン気味なのは知っている。アメとムチのバランスが極端に悪いことも。あぁ静香、赤面して恥ずかしそうだ。うつむいてプルプルしている。状況打破が必要だったとしても、やり方が。みんなシーンとしちゃたよ……
「スマン、霊仙寺。嫌われ役にさせて」
「ワタシは先に進みたいだけ、早く助けに行きたいのよ。もう姉妹に本当のこと話したら?」
確かに隠す必要はない。エルマナ旅行は無理としても、俺達の能力を発動させればイタイ空想物語でないと納得させられるだろう。
「そうだな」




