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3-2-3

 と、まぁそんなやりとりが朝方まであって。

 アンナの盛り過ぎ英雄譚を額面通りとらえて疑わなかったロードリア王。

 冒険者学校側へは既に『特別講師、ハート国の勇者来る!』と告知していて後へは引けない状態になっていたが、王様は俺の成長を憂えて冒険者学校への入学を勧めてくれた。


「私もリィザ様のためにひと肌脱ぎますよぉ。合同演習までに勇者様をフル装備状態へ戻せれば勝算も出てくるでしょうし」

「不死身の相手にどんな勝利のビジョンが見えているんだ?」

「それを私に言わせますか。いいでしょう、欲しがりなM体質の勇者様ですからねぇ」


 呆れ顔のアンナがオーバーアクションで「やれやれ」といった感じに頭を振る。


「私がケツもちヒロインズを連れて来ますので、彼女達がなんやかや活躍したあとに勇者様がいつもの調子で手柄を総取りするってビジョンですが?」


 あいかわらず心の抉り方に長けていらっしゃる。


「ねぇ楓麻。あの子、紅音ちゃんより剛速球投手ね」


 鳩野さんもたいがい毒舌だけど、微妙なフォローで気遣ってくれるからなぁ。


「都合よくブタ王子から合同演習の参加要請されてますしぃ、講師ではなく生徒としてなら勇者様も幾分気が楽なのでは?」


 確かに全然気が楽だ。


「わかったよ。どうにも逃げられないようだし」


 観念して冒険者学校へ入学することにした。


「決まりじゃな! さっそく編入手続きをせねば。朝までには済ませるので安心して登校してくれ」


 千鳥足で部屋を出て行くロードリア王。


「では私も準備しますかねっ! さ、勇者様。お着替えしますよ。朝までの数時間でシズカ様になりきりませんと!」


 手際良いアンナによってパンイチに剥かれる俺。


「フムフム。腕も足も胸元も、見える部分でムダ毛の処理はいらなさそうですねぇ。ベースがここまで良いと嫉妬する反面、魔改造のしがいがありますぅ! ヤベェ、勇者様ぁ? 私たぎってきちゃいましたぁっ!」


 手をわきわきさせて息も荒くにじり寄るアンナ。


「ミートゥーッ!」


 一拍遅れ、便乗した静香が逆サイドから迫る。二人とも深夜のテンションで我を忘れ、瞳が渦巻き状態になってそうな勢いだ。

 嫌がらせかと思えるほどのミニ制服を着せ替え人形のごとく試着させられる俺。

 若干貞操の危機を感じる場面はあったものの、女生徒らしい振る舞いを延々叩き込まれ寝不足のまま現在に至る。


  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■


「ではみなさん、合同演習までの短い間ですが彼女と仲良くお願いします。いろいろと力になってあげてくださいね」


 先生のはからいで、俺の席はローザの隣になった。


「モリサギ様、これからよろしくお願いしますね」


 優しい笑顔で公私を使い分けてくれるローザ。


「こ、こちらこそよろしくお願いします……」


 錯綜していたハート国勇者の情報は、ロードリア王やローザが手を回してくれたようで、大きな騒ぎにはならなかった。

 昼までは。


「あらぁ? 大きなトムボーイがふたつ、階段をおりてきますわ」


 昼食をご一緒にと、リィザに合流する俺とローザ。中庭へ向かおうと階下へ移動している時、下からあがってくる下級生の一団と遭遇した。

 久しぶりに聞いたぞトムボーイ。俺の家にあったのはスリンキーだったが。

 てか、リィザか? リィザのみょんみょん縦ロールのことか? 

 目的の分からないスプリングでできた昭和トイの名称を口にしたのは、リィザと同学年ぽい女の子。少しキツイ目をしているが、リィザに劣らず整った顔立ちをしている。


「イザベラ……」

「あらあら、ウソつきリィザさんでしたか」


 悔しさと哀しさの入り交じった表情でローザに寄り添い道をあけるリィザ。


「ふぅん。あなたがリィザさんご自慢の勇者様?」


 取り巻きを従え、この年齢でカースト上位の風格が板に付いているイザベラ。

 異世界女児に流し目で値踏みされる俺はそのプレッシャーで動けずにいた。


「わたくしはイザベラ・インダストリーズ。お見知りおきを」


 特殊なスタイリング剤を使っているのか、光の角度によって彼女のブロンドロングヘアが虹色に輝く。

 インダストリーズさん、さっきのトムボーイ発言はまんまブーメランになってますよ?

 久々のエルマナ思考に心の中で突っ込むのが精一杯の俺だった。

次回更新は5月25日前後の予定です。

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