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第2章 1

 翌日。

 編入されちゃってます。ロードリア冒険者学校に。

 しかも女子の制服ですよ。


「どうしてこうなった……」


 まぁ昨夜、晩餐会の席で静香が『愚弟が私の代役を〜』うんぬん言っていたやつの結果なわけですが。

 詳細は後回しにして、文字通り姉の代役をやらされてます。

 憧れの転校生シチュエーションがこんな歪んだ形で実現するとは……

 小さく溜め息をつき、諦めて顔を上げる。

 見回した約10m四方の教室は白が基調で、所々に凝った彫刻の金色アクセントと併せ、どことなく上品な感じを受ける。

 意識的にそらしていた視線をやや下へ戻すと、男女合わせて20人ほどの生徒さん全員が俺を注目していた。

 その好奇心旺盛な眼差しに耐えきれず、視線防御力の心許ないミニスカートを抑え、脚をすり合わせモジモジしてしまう俺。何の罰ゲームなんだよ……

『おおー』と、勘違い男子達から感嘆の声や励ましのエールが熱い視線と共に贈られる。

 スマン、男なんだ。


「はいはい、美少女勇者だからって騒がない。彼女があのハート国の『勇者モリサギ』その人ですよ」


 白いローブを纏い、俺の隣に立っていたクラスの先生らしき笑顔の女性から、無言のオーラで自己紹介をうながされる。


「も、杜鷺……ふ、し、シズカ……です。よろしくお願いします……」


 稀な異性一卵性双生児のなせる技か、声色は無理すれば静香に寄せる事ができた。できていると信じたい。

 恥ずかしさに耐えきれず、手持ちぶさたで髪を掻きむしろうかと頭に手を当てるも、指通り滑らかでサラリとした感触。

 寝グセと紙一重のワイルドさを醸し出していた髪型は、早朝、異世界ヘアアイロンを携えたアンナによって見る影もなく矯正され、ちょっと長めのショートボブになっていたのだった。

 妙な指触りになんとなく弄っていた仕草がまたも誤解を生み、図らずも『シャイな女の子』感に一層男子からセクハラ混じりのラブコールが飛び交う。


「シズカちゃーん、カレシいるのー?」

「スリーサイズはー?」


 とか、ベタな質問はどこの世界でも共通なのかなぁ。と思っていたら、


「あ! ゴメンゴメン、頭と二の腕と足だからねー?」


 変化球きた。

 だから男なんだ…… って言えたらどれほど楽か。鳩野さんや霊仙寺ならこんなこと慣れっこで上手く返せるんだろうけども。

 女装癖のない俺が何故ここまで恥ずかしさに耐え忍んでいるのか。ぶっちゃけ、耐え忍ばない選択をした方がもっと苦痛だったから。

 そのもとを辿れば晩餐後の深夜、用意してもらった客室でウトウトし始めた頃。

 あれから更に飲んでいたのか、完全に出来上がったロードリア王が『腹を割って話そう!』と陽気に入ってきたのがはじまり。


「さきほどの話、モリリンが冒険者学校の講師を引き受けるということで解決かの!」


 寝入りばなに何の話でしょうか?


「すみません、ちょっと話がみえません」

「あんたが私のかわりに冒険者学校で講師をするのよ?」


 色気のない見せインナー姿でドレッサーに向かっていた静香は、髪を梳いていた手を止め、上半身だけこちらに捻る。


「初耳だよ」


 てか、相部屋をまずなんとかしようよ。用意してもらってなんだけど。


「ほら、ハート国の勇者誕生って経緯が特殊でしょ? 王様が欲しているのは私であって私じゃないのよ」


 鳩野さんの勘違いと、双子トリック的な紛らわしさをベースに一悶着あった高校一年の春。

 勇者と思い込み結構がんばった俺だったが、ハート国の正統勇者は双子の姉、静香の方だったというオチ。


「ワシ的にはどちらでも構わんのじゃ。あれ? 四人に増えておるのぉ」


 それは酔ってるだけですね。


「実際、ローザ姫やリィザちゃんにとっては楓麻が本物の勇者なんだから私の出る幕じゃないわ」

「警備を付けていたとはいえ、まさかブフィールの王子が召喚ゲートに悪戯をするとは想定外じゃったからのお…… いや、迷惑をかけてすまなかった」


 わざわざブタ王子にかわって頭を下げるロードリア王。


「仮に順当な手続きで俺を講師に招いたとしても、人様に教えられることなんてありませんよ?」


 この俺にどんな講義をしろと言うのだろう。


「チート能力とやらは……」

「貰えませんでした」


 治療に充てられられましたので。


「で、では剣術ならどうじゃ?」

「基礎練習中です」


 浮かれ半分で持った重冷気剣で骨折しましたし。現在はルビーナに指導してもらっているけど。


「さ、さすがに体術ならぁ……」


 声が小さくなっていくロードリア王。


「このファンシーな右手でどうしろと……」


 未だ戻らないピョン子の抜け殻をプラプラさせる。


「ダメじゃん! モリリン、ダメダメじゃん!」


 俺としては今更感で満腹なんだが、どうしてこうも上手く伝わっていないのか。


「いや、逆によくそれでミケーニャ帝国を退けたもんじゃの!」


 あまりの無能さに酔いが吹っ飛んだのか、目を丸くして驚く王様。


「このバカウサギをはじめ、ひとえに皆のおかげですね」


 思い返せばルビーナ戦に始まりナスノ課長、メリフェス、ミケーニャ帝国と…… ホント、よく生き延びてるなぁ俺。


「王様ぁ? ウチの子、問題が起きるたびに女の子にケツ拭かせたうえ、彼女候補を増やして帰ってくるんで困ってるんですぅ」


 しなを作っているつもりなのか、静香は身体をクネらせ頬に手を当てると、母親気取りでマヌケな訴えをする。


「うぅむ。本人が活躍しない英雄譚、斬新じゃな! よーし、わかった! 冒険者学校で真の勇者を目指すがよい!」


 加藤武ばりの閃きとアクションでトンデモ提案をしてきた。


「え〜……」

次回の更新予定は5月17日前後です。

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