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「ち、父上、なにを仰るつもりですか!」
慌てたローザ姫が国王に詰めより、俺から引き離すと、何か小声で諌めているようだった。
「勇者様、勇者様」
アンナがその隙にそっと俺の背後へ移動して囁く。
「モテモテですねぇー。姉妹揃っていっちゃいますか勇者様! ちなみにローザ様、結構ムッツリですよぉ?」
「そんなわけないだろ」
猫の口でニヤニヤしやがって。
「俺は『ローザ姫しっかり者』説に一票なんだ。それにお前、リィザ様は渡さないとか言ってたよな?」
「ま、リィザ様は私がイロイロ仕込んだ後の納品になりますけどねぇん」
「とりあえず猫の口で舌なめずりやめろ」
俺がこの地へ飛ばされたのは、この女からリィザを護るためなんじゃないだろうか……
リィザを見れば、人間嫌いのアーシャをすっかり手懐けているようだった。
あのアーシャが耳をへにょんとさせ、倍以上に脹れあがったお腹をさすられて気持ちよさそうだ。
「な、なに見てんのよ人間、イイ笑顔で親指上げるのヤメなさいよ!」
ヤツを警護に付けておけば、そうそう間違いは起きないだろう。
「勇者様、なに猫の口でニヤけてんです? キモイですよ」
お前に言われたくないよ。
「モリサギ様。先程ははしたなく取り乱してしまい、大変失礼いたしました」
そんなご丁寧に……
タイミングをはかっていたのか、ローザ様が遠慮がちに話しかけてきた。
「気にしないでください。様は小恥ずかしいので楓麻でいいですよ」
「わかりました。それでは私の事もローザとお呼びくださいませ、フウマ……様」
癖はそうそう抜けないよな。顔赤らめて可憐だなぁ…… まぁ徐々に慣れてくれればいいさ。
「勇者様? なんか上から目線なオーラがプンプンしますぅ。まさかローザ様と対等なお立場だとでも?」
ですよねぇ。鳩野さん達が悪い訳じゃないけど、異世界の初っぱなが初っぱなだったからなぁ。
「ごめん、気をつけるよ。どうもお姫様とか言われても、一人の女の子として見ちゃうんだ」
「素直ですね…… それもどうかと思いますが」
アンナは意外そうな顔で目を丸くパチクリしていた。ゴニョゴニョ言ったあとは追加口撃もなくバツがわるそうにモジモジしている。
「で、静香。お前はさっきからナニやってんだ?」
おとなしくなったアンナの頭上周辺を、何かを掴むかのように虚空を切っている。
「ここフラグ建ってんなぁって」
「そんなWi-Fiみたいに……」
「はっ! これが一級建築士のテクなんですねぇっ、危うく違法建築されるところでしたっ。ありがとうございます、静香様」
「バカか」
「でも取れたみたいよ? お姉ちゃんのも修復できればいいのに……」
「静香様の場合、彼の理性が既存不適格建築物判定してるんでしょうねぇ」
二人してウンウン頷いてるけど、ソレ意味あってんのか?
「静香、お前が騒ぎの元凶だって自覚してんのかよ。深く土下座してとっとと帰れ」
「仰せのままに」
「なんで芝居がかってんだよ」
気持ち悪いほど素直な静香。ロードリア王の前に恭しく跪く。
「王様、先程のお話は無かった事に。どうやら愚弟が私の代役を買って出ていますゆえ」
あやしい敬語で意味不明なことを言っている。先程の話ってなんだよ。
「美しい姉弟愛じゃのう」
よく分かりませんが、王様? そこは泣くところじゃないと思います。経験上、俺が泣く流れになるのではないかと。




