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リィザとローザ二人のお姫様の父親、ロードリア王との謁見も済み、急場ながら豪勢な晩餐会も開いてもらった。
晩餐会とは言っても堅苦しいものではなく、『王家の晩ご飯にお呼ばれされた』的意味合いの方が強い。正式な晩餐会は日を改めてとロードリア王は言ってくれたが、マナーも知らないうえ、そんな器じゃないので丁重にお断りした。
「事故とはいえ結果オーライじゃ! ホレ、お前達が恋い焦がれる生モリリンじゃぞ」
ロードリア王の第一印象は風格もあり、精悍な顔立ちに整った口ひげともみあげがセクシーな戦士系国王だった。が、
「なまモリリンて……」
実際はかなりフランクな国王のようだ。今もスキンシップが激しい。健全な意味で。
「しかし、本当ソックリじゃな。どうかね? モリリンもシズカ殿と同じメイド服を着てみては。似合うと思うぞ? ハッハッハッ」
屈強な腕で肩を組んできた国王から、なすがまま首をロックされてしまう。結構酒入ってんのかなぁ……
「で、なんでお前はメイド服なんだよ?」
はにかんだ笑顔でチラチラ俺を見る静香。
「楓麻こういうの好きなのよね? みんなに配り歩いてたじゃない、私はプレゼントされてないけど」
「配り歩いてねぇよ!」
人聞きの悪い。鳩野さんに着てもらうつもりが、結果的にプロミディアさんとルビーナに渡っただけだ。
「勇者様、超キメェ……」
アンナ。もっともだがオブラートに包みなさいよ、リィザを引き寄せてあからさまに嫌な顔をするな。
「あいかわらずキモイわね、人間」
アーシャも何ずっとリィザに抱えられてんだよ。
「お前、違和感なくとけ込んでんな」
オママゴトの人形に接する要領でニンジンスティックを与え続けるリィザと、処理が追いつかないまま食べ続けるアーシャ。
「しばらくここをワタシの定位置とする!」
くわっ! と両前足、後ろ足をエックス字に伸ばすアーシャ。そんな『ここをキャンプ地とする』みたいに……
「リス頬パンパンにしてバカ言ってんじゃねーよ。少しはマシなヤツだと思ってたけど、ピョン子と変わんねぇのな」
「当たり前でしょ! 姉妹なんだから」
加減が分からない幼女から、ギュウギュウに詰め込まれたニンジン同士が擦れて喚くたびにオレンジ色の汁が飛び散り、そのたびにリィザが甲斐甲斐しく汁まみれになったアーシャの口元を拭っていた。
「しっかり口の周りもキレイにしてもらって……リィザ完全に母性本能目覚めちゃってんじゃねーか」
跳ねっ返りウサギが僅かでも情操教育的な足しになってくれる事を願うばかりだ。
「さて、モリリン」
砕けた雰囲気から一転、威厳を感じさせる国王顔。そしてモリリン定着ですか。
「手順が狂ってしまったが、君を招待しようとしていたのには訳があってな。ミケーニャ帝国を半日足らずで壊滅させ、ローザを始め他国の姫を救出した話は聞きいている」
誰から聞いたかが重要。
「まるで見ていたかのようにライブ感たっぷりで語るアンナの話を常々聞かされていて、ぜひ我が冒険者学校の講師にと考えていたのじゃ」
ダメな方に聞いちゃってた! 元凶のアンナへ振り向けば、俺と同期するようにそっぽ向きやがった。
「ち、ちょっと待ってください王様。俺はみんなに助けてもらう一方で大して役に立っていませんよ? アンナの盛りすぎ話は忘れて、原典であるローザ姫様の話を採用してください」
清純で、もの静かなローザ姫。かと思えばブフィリハム王子と対峙した時に見せた気高い凛々しさも合わせ持つ。
俺がエルマナで出会って来た女性の中では一番の常識人に感じていた。当然まっ先にミケーニャの件は国王に話しているだろう。
救出劇をどう語ったかは知らないが、アンナが伝えた内容よりぜんぜん信憑性があるはずだ。助け出された本人なんだから。
「おいおいモリリン。いきなり結婚の話かね?」
斜め上の語られ方されてた! なに結婚て!? 講師うんぬんって話題が霞んじゃうよ?




