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HBの鉛筆  作者: どっかのだれか
1/1

最も重要なこと

初投稿です



初めて指揮を執ったのは若干20歳の時、初めて自分の隊を持つことが許された。


組織では兵からの出世は有り得ない。


15の時から士官学校に通い、指揮者としてのエリートの道を通った自分には指揮者としての教育が頭の中、いや体にも叩き込まれていた。


その途中で見せられたのは2本のビデオ


1本目には指揮者が兵隊と仲睦まじく話している姿が映し出されていた。


共に酒を飲み、笑い、故郷のことを思い出す隊員達


「俺、この隊に入れたこと絶対忘れねーよ!」


「俺もだ!この隊に入れて心から良かったと思う、絶対死ぬと思っていたが、前線から離脱しろとの命令おかげで故郷の妻にただいまのちゅーができそうだぜ!」


ははは、と笑い合う者達。


「しっかし、一時はどうなるかと思ったゼ!あのまま前線に留まっていたら俺らの命はなかったかもな!」


ボロボロになった軍服の男が言うと、なにやら緑色の羽のついたベレー帽を被った隊長らしき人物が答える


「ああ、軍部からのお達しが出てな。

お前達は前線を離れていいとのことで

あとは代わりの隊がなんとかしてくれるらしい」


「ほんとかよ!あれだけきつい前線だ、俺らの仲間も相当やられた。あとから来たやつでなんとかなるかねえ?」


「まあまあ、いいじゃねえか後の連中に任せれば!どれ隊長、ここは集合写真でもとっておきますかねえ!」


「ああ、いいな。記念に撮っておこう」


映像の最後に映ったのは肩を組み、仲間とともに笑い合う自分と同じベレー帽をかぶった隊長の姿だった


しかし、次のビデオを見せられると同時に強い衝撃と吐き気を覚えさせられた


2本目、最初に映ったのはさっきうつっていた上官と思われる人間の姿。いや、人間と言うにはあまりにも酷い(むごい)姿だった


髪はちぎられ、鼻や耳はもがれ、両手両足を拘束されながら熱した鉄の棒で灼かれ、阿鼻叫喚する人間らしかったものの姿だ


「なぜ命令を無視した、それ前線を離脱しろとはどういうことだ?軍部の命令は前線の死守だったはずだが」


拷問官らしき人物が先端を赤く染め上げた鉄棒を振り回しながら問う


もはや元の皮膚とわかる場所などないくらいに体を黒と赤に染め上げられた男は絶叫ながらも息も絶え絶えに答える


「ハァ…ハァ…自分は…じぶんには、故郷に妻や子供をのこ、してきた なかま をみすてることなどできません…」


「そうか。」


すると拷問官らしき人物がカメラに向かって真顔で話し始めた


「士官学校の諸君、覚えておきたまえ

戦場で情に突き動かされるとこのようになる」


瞬間、鋭い発砲音と共に男は頭を撃ち抜かれた。


ビデオはここで止まっている





ーー指揮者は非情でなければならない。


もし戦場を一般兵と共に駆けその恐怖を知ってしまえば、兵に思わず共感してしまうために情が湧いてしまうだろう


隊長にとって最も重要なもの


それは愛する妻でもなければ自らの子供でもない、ましてやそれを持つ仲間でもない。


最も重要なもの


それは戦局を見極める力と自軍を勝利に導くための判断力と冷静さである


そのためには苦楽を共にしてきた仲間であれ、親であれ妻であれ、勝利のために切り捨てる覚悟さえ必要なのである。



情など必要ない。

軍部より渡された兵隊で自軍を勝利へ導く。それこそが自分に託された任務である


初めて任された自分への任務、それは前線で戦う隊へ救援物資を行うというもの。


簡単そうに見えてなかなか事が運ばない。

持たされた兵隊はまともに教育も受けてなく、態度の悪いものや話を聞かないもの、ましてや救援物資の中のタバコを吸い始める者さえいた。



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