その2:状況確認
漫画の中に転生したと知ってから、一週間が経った。
最初の頃はかなりのショックで、幼子である俺は知恵熱を出した。すぐに病院へと運ばれた。
その際に、熱に苦しみながらもなんとか村の様子を見てみたが……やはり、雷アドの世界と一緒だった。
ライとアツヤは同い年設定なので、恐らく彼に出会えるのは当分先か……というか会いたくない。
だって、アツヤの運命って、ほとんど俺と一緒なんだよ!?
才能あるのに努力せずに開花せず、怠けた挙句ラスボスの魔王に操られて、悪堕ちして主人公と戦わされて、最終的に和解はするが、最後は胸を突かれてジ・エンド。
わぁすごい。死因が刃物関係なところまで一緒だ。わーい。
……冗談はさて置き。ていうか、そもそも操られたりはしないしね。
今のところ、自分の体で動くのは難しい。
母に抱かれ、トイレにも行けないので仕方が無くオムツにおねしょをする……すごく恥ずかしい。
それだけなら、まだ良い。
オムツ交換する時なんて、下半身を露出するんだぞ!?
前世で覚えている限り、トイレ以外で下半身を露出する機会なんてなかった。あぁ、一度たりともなぁ!
まさか、ここまで恥ずかしい行為だったとは……路上とかで全裸になったりする奴の気が知れない。
漫画で元々情報を持っていたのもあって、周りの人間の名前などは割とすぐに分かった。
父の名前はアキラ。母の名前はアユミ。皆「あ」から始まる名前にしているのは、確か作者の遊び心からだったハズ。
っと、話が逸れていた。というか、無意識に現実逃避をしていたのだろう。
だってさぁ……俺だって、アツヤには同情したけど、また同じような人生を送ることになるなんて嫌だから!
大体、悪堕ちとか、割と女子とかには人気の部類らしいけど、別にやらなくても良くねぇ!?
と、どこにもぶつけられない怒りを叫んだところで、それは俺の頭の中で虚しく響くだけ。
今叫んでも良いけど、「あうあうあー」みたいなのしか出ない。無念。
そんなことを考えていた時に、唐突に、雷アドの中の一場面が脳裏によみがえる。
それは、確か……ライがまだ幼く、アツヤにボロボロにされたシーンだ。
アツヤは、その頃はまだ才能の力でかなり強く、「俺に勝てるわけねぇだろ」と、嘲笑していた。
すると、ライはそれに「未来は変えられる。これから先なんて、誰にも分からない!俺は絶対に、お前を越えてやる!」と決意するんだ。
うわー懐かしい。あの場面が週刊誌に出てた時、俺は中学生に上がったばかりの頃だったかな?
今いる場所があの漫画の中なんて、未だに考えられない。
でも……そうだ。未来は変えられるんだ。
それどころか俺は、これから何が起こるのか知っているし、努力さえすれば強くなれる力だった持っている。
じゃあ……やってやろう。
未来を変えて、前世やアツヤみたいに落ちこぼれにならずに生きるんだ。