表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

ある日森の中

  目が覚めたら木々が生い茂る森の中にいた。

 さて、ここは何処であろうか。思い出せる限りの記憶を遡ってみるが森の中に入っていった記憶は無い。

 唯一思い出せる記憶と言えば燻製を作るために自分で木を切っていた記憶がある。その際に森の中から現れた2m程のヒグマが襲い掛かってたのでチェーンソーで応戦していた記憶が残っている。

 うん、思い出してきたぞ。今夜は熊鍋にしようと熊にチェーンソー片手に立ち向かっていたのだが、思いのほか熊の動きが機敏で機敏で・・・。振りかざされる熊の爪でこちらも深い傷を覆う羽目になったし、その際にこちらもチェーンソーで熊の腕を切り落としたのだが、何度も繰り返される攻防の中で何故か熊との熱い友情を芽生えさせてしまった気がした。自身の体力もそろそろ限界に近付いてきており、熊も心なしか体がふらついているように見えた。

 次が最後の一撃になるだろう。互いがそれを察し頷きあう。交差は一瞬、勝ったのは俺だった。熊が倒れ伏す音が聞こえ、こちらも限界を迎えたのか倒れこんでしまう。地面が段々と近づいて来る感覚、その際に眩い光が視界を包んだ気がした。

 それを考えると自分は死んだと思うのだが、その際に見えたあの眩い光は何だったのだろうか。

 しかし死んだのであれば何故自分は記憶を保持したまま元気に立っているのだろうか。見た所怪我一つない元気な状態であるし、チェーンソーも刃こぼれなく新品同様綺麗なままである。


「さては・・・ここは天国?」


 天国であれば怪我一つないのも納得が出来るかもしれない。チェーンソーまで持っている所が不思議でならないが、まぁ神様が天国へのお伴として授けてくれたのだろう。

 ともあれここが天国であるかどうかを確認するためにも人を探してみるとしよう。

 地面に突き刺さったままのチェーンソーを片手に持ち一先ず森を出て人と会うことを目標とする。





-------





 てくてくと森の中を歩いてどれほど時間が経っただろうか。

 気が付けば頭上に上っていた太陽も陰りはじめ、気温が下がってきている気がする。そう考えると大分歩いていた筈なのだが一向に疲れる気配が見えない。それを踏まえるとやはりここは天国なのでは?勝手なイメージではあるが死んだ人に体力なんて概念が存在するとも思えないし。

 そんな時、お腹が空いてきた。疲れは感じないが空腹を感じるのか、むぅ仕留めた熊を食べれなかったのが悔やまれる。ともあれそこは気にしていても詮無き事である。今はこの空腹をどうやって乗り切るかを考えよう。

 1、川でも探して魚釣り。

 それが出来れば良いのだが、如何せん歩いてきた中で川のせせらぎなんて聞こえてこなかった。そのことから近くに川は無いだろう。

 2、食べれそうな山菜を探してみる。

 選択肢に挙げては見て物のこれは除外しておいた方が良さそうだ。だってこの森に生い茂ってる植物、見たことも無い物ばっかりだし。下手な物食べて腹痛を起こして寝込むなんて事に成ったら大変である。

 3、昆虫を食べよう。

 ・・・出来るなら、これは本当に最後の手段にしたい。昆虫は見かけるには見かけるのだが、色鮮やかで食指が微塵も動かない。

 どうしたものか、やはり頑張って川を探してみるべきか・・・?そう思っていた矢先絹を裂くような悲鳴が聞こえた。

 何事かと思い声の聞こえた方向に走り出す。

 トン、トン、トンと全力で走り出して分かったのだがこれはもう走るでは無く跳ねるだ。一足で移動する距離が可笑しなことになっている。

 これは楽しい、移り変わる風景を楽しく思いながら跳ねていると一瞬人が視界の端に移った気がする。慌てて滑るように立ち止まり、恐らく悲鳴を挙げたであろう女性の元に。

 見れば何かに襲われている所だったみたいで、その何かと女性の間に体を割り込ませる。

 その何かは人型だった。何処かで見た記憶がある形状、確か名前は・・・


「ゴブリン、だったか・・・?」


 自身の半分ほどの体躯に尖った耳、そして笑った口元から見えた牙。ぶっくりとした腹部に腰に巻いてあるボロ布が特徴的だともいえる。どちらかと言えばやはり尖った耳が特徴か。ボロ布が特徴って何なんだろうか・・・。

 守る様に飛び出したのは良いのだが、これで万が一悲鳴の主がゴブリンだったらどうすれば良いのだろうか。背後に座ったまま動けないでいる女性を見ると怯えているみたいだし、やはり助けるべきはこちらの女性・・・?


「えっと、こんばんわ?」


 念には念の為とゴブリンに声を掛けてみるが帰って来たのは手に持っていたこん棒の一振り。

 あ、これ確定でこいつが加害者ですね、女の子の方が被害者だわ。

 迫るこん棒をエンジンを起動したチェーンソーで受け止め・・・


「え?」


 スパッと簡単にこん棒が切れてしまった。刃の部分で受け止めたわけでは無いのだが切れてしまった。

 その事実に自分も驚きゴブリンも驚いた様子。と、取り合えず襲ってきたということは敵意があるということだしこちらも応戦するとしよう。

 武器が失われた事により一度距離を取ったゴブリンに対して


「ほっ」


 と軽い掛け声と共に跳ねて近づく。

 スパンと軽い音と共にゴブリンの首が宙を舞う。頭が胴体から離れた瞬間、噴水の様に青い液体が吹きあがった。

 これは中々にグロテスクである。


「きゅぅ・・・」


 なんて事を思っていたら女性は力なく倒れてしまった。

 ・・・・・・どうしようかこれ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ