人の価値って
まだ、出していない素材だけが大量に余ってしまった。
全てはあのお堅いギルドの役人のせいで台無しだ。
ハーレム作りにはお金がかかる。盗賊から頂いた資金だけだと足りない気がする。
奴隷とかは高いだろうなぁ。そう思いながら歩いていると、先ほどギルドから追い出さらてから後ろをつけてくる人物に気がついた。
ルートは小走りで路地裏に入り、ストーカーを待ち伏せした。
やはり、ストーカーは路地に入ってきて、ルートは小脇から出てその怪しげなフードを被った人物の首筋に新斬影刀を突きつけた。
「あなたは誰ですか?」
そう男に尋ねると男は驚きながら喋った。
「やはり、使っているその剣はソルライト鉱石……あなたは只者じゃありませんね」
そう言うと男はフードをとった。中からは金髪で顔の整ったどこかの王子様のような男が出てきた。
「申し遅れました。私はシュルヴェージュ王国で裏取り引きを行っているとサルートと申します」
ルートはそれを聞くとさらに剣筋を立てた。
「大丈夫ですよ。私はあなたの敵でもないですし、味方にもなるわけではない。ただの商売相手ですよ」
この男からはさっきのギルドの男のような雰囲気が感じられなかったのでルートは刀を男から離した。
「ありがとうございます」
「ところでお兄さんはボクに何のよう?」
ルートが少し睨みながら尋ねた。
「はい、私は先ほどあなた様とギルドマスターの話しを聞いておりました」
それを聞くとルートは更に警戒を強めた。
「あの部屋にはボクとあのおじさんしかいなかったけど」
サルートが少し笑って応えた。
「私もこの裏での仕事がらある程度の魔法は熟知しております。あのくらいの場所でしたら気付かれずに盗聴するのは朝飯前ですよ」
「それでお兄さんは何かボクに頼みたいことがあるんでしょ」
ルートが聞くとニヤっと口角を上げてサルートが話した。
「お察しの通りです。なんでも、ルート様は珍しい品をお持ちで。私はあの、人のことを屑呼ばわりしかしない役人どもとは違います。適正価格で商品を買いましょう。あなた様は英知の書をお持ちですね。そんな人を騙そうなどとは思いません」
男が英知の書の存在に気づいているのを知り、ルートは男は鋭く威嚇した。
「心配しないでください。商売は信用が大事ですから誰にも話しません」
「誰かにはなしたら、その首がなくなるよ」
ルートは男の要求を聞くことにした。
「では、品物を見せて頂けないでしょうか?」
ルートは男に後ろを向かせて素材を3分の1ほど鞄から出した。男に見せると顔を綻ばせながら言った。
「ほう、これは素晴らしい。早速、鑑定しましょう」
男は一つずつうなづきながら見ていった。そして最後の素材を見終ってから口を開いた。
「白金貨3枚でどうでしょう」
それはルートが思っても見なかった数字だった。
「鑑定結果から申し上げますと白金貨3枚が相場ですね。いや、ここはこれからの関係を見越して白金貨3枚と大金貨3枚でどうでしょう」
ルートは考えた。あの森のものがこんなに高く売れるのならあまり沢山出し過ぎるのは良くない。これからはもっと少なく出そうと思った。
「あなたのことはあまり信用してませんが、いいでしょう」
ここでルートで素を出してしまったがまぁいいか、男に売ることにした。
「いやー、ありがとうございます。これからも何とぞこのサルートをよろしくお願いします。今日のことは一切話しませんのでご心配なく」
そう話すとサルートは同じ底なしの鞄に素材をしまうと転移魔法で消えていった。
「英知さん、闇取り引きしちゃったけど、身分証に書かれないよね?」
そう聞くと
「安心して下さい主、それを取り締まるとこの国から人がいなくなります」
それを聞くとルートは肩を撫で下ろした。
臨時収入が入ったため、かなりのお金持ちになった。そこでこの街に来た目的を果たすことにした。
ーーーーーーーーーーーーー
街の外れにあるひときわ大きな建物ここが『アッバス奴隷商館』である。
ここに来る前に道端で冒険者が話しを盗み聞いた。
「なぁなぁ、あの話聞いたか」
「あの話って?」
「奴隷商館に大量に奴隷が入ったって奴だよ」
「あぁ、それなら俺も聞いたぜ。でもよ、ほとんどの女が貴族に買われたって話じゃねぇか」
「それはそうだがな。狼人族の女だけはミハエルの野郎、売らなかったらしいぜ」
「どうして?」
「なんでも、あのセレスト公爵が高値で契約したって話だ」
「セレスト公爵って言えばあの処女だけを買ってきて持て遊んだ後にペットの魔獣に食わせてるって噂の公爵か」
「あぁ、間違えねぇ裏筋からの情報だ。今日が売買の契約最終日らしいぞ。かわいそうだが公爵より高く出す奴はいないだろうよ」
こんな内容だった。
そこの前でルートが立っていると門の前にいた男が近づいてきた。
「おい、ガキ。ここはお前が来ていいような場所じゃねぇ。邪魔だ、消えろ」
そう脅してくる男にルートが応えた。
「ボクにも奴隷を見せて下さい」
「お前、ふざけてんのか。お前みたいなガキが買えるようなーーー」「ボクにも見せて下さい」
ルートは門番の男に大銀貨を握らせた。
「ふんっ、最初からそうすればいいんだよ」
そう言うと商館に入れてくれた。
商館の中は豪華に飾られていて貴族の屋敷みたいだった。しばらく眺めていると、前から少し太めの一人の男性が出てきた。
「これはこれはお客様。ようこそアッバス奴隷商館に、支配人のミハエル・アッバスでございます」
この商館の持ち主であるミハエルが腰を低くして迎えた。
「ボクまだ14歳だけど、大丈夫ですか?」
すう尋ねるとミハエルは少し笑った。
「あの門番が通したということはそういうことでしょう」
お見通しのようだ。
まずはミハエルから奴隷についての説明を受け、それから奴隷を見にいった。
無印奴隷は比較的に良い暮らしをしているようだ。それに比べると烙印奴隷は監獄のような場所に入れられていて奴隷の中の格差を感じた。
廃棄奴隷はここでは扱っていないらしい。手に入れるには王都に行かなければならない。
奴隷の価格は金貨5枚〜大金貨2枚くらいだ。
それなりにするなとルートは思った。そして、客間についてから本題に入った。
「今見た中にミーシャという奴隷はいませんでしたが」
それを聞いた途端ミハエルは少し、止まった。
「良くご存知じで、彼女はとある貴族様がお買い上げなさっています。ですのでお売りすることは……」
「でも、最終契約日って今日じゃないの?じゃあセレスト公爵にはまだ渡さないんでしょっ」
そう告げるとミハエルは椅子に腰をかけて話した。
「なるほど、貴方様は上書き契約をなさりたいと」
「うん、そうだよ」
ルートは元気良く応えた。
「貴族様の物に手をつけるとどうなるかはご存知で?」
「知らないよ、でも、ちゃんとした手続きなんでしょ、上書き契約って」
ミハエルは笑っていた。
「ずいぶんと、面白いことを言いますね。そうですよ、上書き契約はれっきとした、公正な手続きです。法には触れません」
ルートは子供の笑顔で言った。
「なら問題ない」
これを聞くとミハエルは腹をくくったのか、凛として話した。
「分かりました。こちらは商人です、約束は守りましょう、ですが、セレスト公爵は私のお得意様でございます。ミーシャの提示価格は少し上がりますがいいですか?」
ルートはすぐに応えた。
「では、今のミーシャは無印奴隷ですので公爵の契約価格は大金貨4枚と金貨5枚……こちらとして公爵とのこれまでの関係が有りますから、それを考慮すると、大金貨6枚でならお売りしましょう。まだ、教育もしていないですけどそこはご了承下さい。後、購入後の不祥事は保証しませんよ」
「買った。ありがとう、ミハエルさん」
ミハエルは即決したルートに驚きながらも更に何か考えてこう付け足した。
「ルート様、これからは何かと物騒になるでしょう。身を守るためにオススメの奴隷が二人ございます。とても珍しいので今を逃せば手に入らないでしょう。ご覧になられますか」
物騒ってことはセレスト公爵の奴隷に手を出したことによる報復かなにかだな。でもハーレムを作るんだし、何人いてもいいか。
「うん、見るけど。女の子ですか?」
「はい、一人は女性です」
ミハエルは奴隷を連れにいった。数分後、ある一人の奴隷が部屋に入ってきた。
「彼女は魔族、淫魔でございます。まだ15歳と若干幼いですが魔族では貴族の娘でしたので闇魔法は上級魔法まで使えますし魔力の量も非常に多い。また、処女でございますので夜のお供にはぴったりです。お値段ですが無印奴隷ならば大金貨7枚はくだらないのですが、大金貨4枚でどうでしょう」
なんでも、この世界では魔法は貴族か有力商人の子どもくらいじゃないと入れないような学校でしか教えていない。魔法が使えるだけ貴重ということだ。
それと、この国の人はみんな俺のことを男だと思うのか?こんなにも愛らしい顔をしているのに。女の子っぽい男の子って感じかなぁ。
そうルートは不思議に思った。
でも、俺の百合ハーレムには持ってこいの女の子だ。
「じゃあ、その子も欲しいけど……もしかして烙印奴隷ですか?」
彼女はミハエルの説明の間ずっと自分の唇を噛みながら拳を握りしめ、震えていたからだ。喋るなと命令されているのだろう。
「はぁ、その通りです。こちらとしても無印奴隷として売りたかったのですが、調教師が一人が殺されまして止む無く烙印奴隷にいたしました。しかし、烙印の効果は絶対です。ルート様を襲うようなことはありません」
烙印奴隷か、国からの強力な力で無理やり言うことを聞かせるのは俺の目指す百合道からはずれてるな。
ルートはミハエルに尋ねた。
「烙印は消すことができますか?」
ミハエルは少し遅ればせながらに応えた。
「消すことはできますがお金がかかりますし、王都に行かなければなりませんよ。あまり、オススメはできません」
「分かりました、ありがとうございます。支払いはどうすればいいですか?」
「はい、ここでお支払いいただき、今日中に上書き契約が無ければ、明日にはルート様に2人をお渡しします。明日の朝9時にいらして下さい」
それを聞くとルートは白金貨1枚を払い商館を後にした。
ーーーーーーーーーーーーー
ルートは昨日、大銅貨3で泊まった宿を後にして商館へ急いだ。
商館の前に着くと、入り口のところで兵士を何人か連れている金ぴかに着飾った太った男とミハエルがいた。
「奴隷が他の奴に買われただと、ふざけるな‼︎トランスヴァールからどれだけの距離があると思ってるんだ‼︎さっさとよこせ」
太った男はミハエルに怒鳴り散らしていた。
「イヤー、そう言われましても……あっルート様丁度良いところでいらっしゃいました」
ミハエルが手を振りながら名前を呼んでいる。
ミハエルのところまで歩いていくと彼の横に立たせられた。
「この方が新規契約をしました。ルート様です。ルート様、こちらにいらっしゃいますのがセレスト公爵でございます」
「こんにちは、ルートです」
そう挨拶をすると凄まじい人相でデブ公爵がルートに迫ってきた。
「おい、お前、奴隷を違法な手で横取りしたらしいな。俺はシュルヴェージュ王国公爵カート・セレストだ。お前のような身なりの奴がそんな高額な奴隷を買えるわけがない、どうせどこかから盗んできた金だろ。大人しく、俺に奴隷をよこせ‼︎」
デブは変な言いがかりを付けてきた。
「ミハエルさん、ボクの女の子はどこですか」
ルートはデブ公爵を無視した。
「貴様ぁ‼︎俺のことを無視するのかっおい、こいつを捕らえろ‼︎」
デブ公爵は周りにいた私兵に命令した。私兵たちはルートを捕らえようと掴みかかってきたがルートはするりとかわし視線転移で公爵の隣に立ちリボルバーを頭に押しつけた。
そして、公爵の耳元で周りに聞こえないように呟いた。
「おい、これ以上ふざけたこと言ってると、お前の頭が飛ぶぞ」
そして、公爵と目を合わせてニコッと笑うと続けて言った。
「ちゃんとした手続きですよね、ミハエルさん。ボク、ズルい事なんて一つもしてないよ」
ミハエルは常人では分からない動きで公爵の頭に謎の武器を突きつけるルートに圧倒されながらも、すかさず応えた。
「はっはい、そうですね。正規の手続きですから奴隷は……ルート様の物になります」
ミハエルは長年の経験から感じる、恐怖を抑えて無理やり笑顔を作った。
公爵の私兵たちは公爵に謎の武器が向けられているためにどうすることもできないでいる。
ルートが決着がついたと言わんばかりの雰囲気を醸し出し、リボルバーをホルスターにしまうと公爵に話しかけた。
「公爵さん、今度からは仲良くしようよ」
そう、右手を差し出すと公爵ははじいた。
「貴様、覚えておけよ。このセレスト家を敵にまわした事を後悔させてやる。おいっ‼︎今日は帰る」
そう言い残すと兵を引き連れ出て行った。
ミハエルはため息を吐いた。
「今日は厄日ですね。奴隷の方は準備出来ています。中へどうぞ」
ルートはミハエルの後をついて行った。
昨日と同じ客室に案内されると、ミハエルの部下らしき人が2人の女の子を連れていた。
俺から見て右に立っているのは狼人族のミーシャだ。銀色の耳がピクピクしててとても可愛い。身長は165センチくらいで俺よりも高い。胸はCくらいだろうか、大きな瞳と肩より少し長いサラサラの髪はどこかアイドルのような雰囲気を出している。
一方、淫魔の子は昨日よりも綺麗になっていて短めの紅い髪が少し動くたびに揺れている。Dカップくらいのおっぱいと少し眠そうにしている目は彼女をおっとりとした感じにさせている。多分、日が出ているため、魔力と体力ともに落ちているんだろう。
2人のことを見ているとミーシャの方が一歩前に出てきた。
「私はミーシャって言います。今年で16歳になりました。ご主人様のために精一杯がんばっていきます」
そう言い終わるとニコッと笑った。
ミーシャすっごく可愛いんですけど俺、同性?だけどドキッとしちゃったじゃん。
次に淫魔の子が挨拶をした。
「あのー、私は淫魔のー、アミュル・サーズですぅ。15歳です。お日様には弱いけどご主人様のためにがんばりまーす」
この子はいつもこんな喋り方なのか?でも、心が癒される。
顔合わせを終えるとルートは奴隷契約をした。契約書に自分の血と奴隷の血を垂らすと赤い文字が浮かび上がってきた。
"狼人族ミーシャ:保有者・ルート"
" 淫魔アミュル・サーズ:保有・ルート:保有国・シュルヴェージュ王国"
これで契約は完了した。
「ボクの名前はルート、これからよろしくミーシャ、アミュル」
女の子が2人も仲間になった。これから主人公ルートにはどんな百合百合展開が待っているのか?
勢いで書いているので回収しきれていない部分や矛盾があるかもしれません。