栄える街の表と裏
盗賊退治をしたルートは整備された街道を歩いていた。
「あっ盗賊の首でも持ってきたら街で報酬とか貰えたかな?」
「大丈夫ですよ。盗賊の中の魔力、魂みたいなものが殺した相手に入ります。ギルドで調べたら分かりますので、報酬は多分貰えますよ」
いろいろと上手くできてんだなぁとルートは感心した。
街に向かう道すがら、英知の書にあれこれと質問した。
まずは通貨について
この世界のでは鉄貨、大鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨と十進法で上がっていく。
パンが一斤で大銅貨くらいだから鉄貨は日本円で一円くらいの価値だろう。てことは、白金貨は一億円の価値か、あんまり見ることはないんだろうな。
盗賊から頂いた金は大金貨1枚と金貨5枚、大銀貨3枚だった。
あの盗賊こんなに沢山持ってたのか、いろいろと悪いことしてたんだな。
次に時間について
時間は地球と同じで60進法が使われているみたいだ。1日も一週間も一年も単位は同じだった。
次は地理について
この世界は約14の大国と100余りの小国がある。今いるのが『シュルヴェージュ王国』この世界で3番目に大きい国だ。今は停戦中だが、隣国と戦争をしているらしい。そのほかにも魔導師の国『ハイルス帝国』やこの世界の宗教の総本山とも言える『アルカイト教国』などがある。
言語は国によっと異なるみたいだが英知の書を持っていれば自動で翻訳される。問題無しだ。
最後に種族だが大まかに分けると人族、獣人族、精霊族、魔族に分かれる。世界全体では人族が半数を占めているため圧倒的に有利だ。
人族は能力的には他種族に劣るが圧倒的な数と魔道具を武器にしている。獣人族は魔力が少ない代わりに凄まじい身体能力を保持している。精霊族は他種族を凌駕する魔力を誇るが寿命が長いためか繁殖力が少ない。魔族は夜行性で夜になると身体能力と魔力共に増加するが太陽がある日中は人族よりも能力が劣ってしまう。
ざっと世界の知識はこんな感じだ。
そうこう話しているうちに、目の前に大きな街が見えてきた。
「あれがガーシルの街か」
ガーシルの街は貿易と軍事共に『シュルヴェージュ王国』の中で4番目に大きな街だ。その背景には危険区域である『パブラフの森』の存在がある。ここの防衛により様々な仕事があるため、国中から商人や冒険者などが来る。
街に近づいていくと巨大な門の前に兵士らしき人が立っていた。
「英知さん、街に入る時に身分証とかって必要?」
「ええ、犯罪者や盗賊などと区別するためにそれぞれの国で身分証を発行しています。持っていない人は追放者くらいでしょう」
マジか、どうしよう持ってない。あそこで聞いたら間違いなく追放者と思われるでしょ。うんー何かいい方法は……そうだ俺には幻想工作がある。これで身分証を作ろう。
そう思いたったルートは鞄から身分証のための材料を英知の書から聞いて取り出し、作り始めた。
「良し、できた」
身分証を作り終えたルートは門の前にきた。
「坊や、身分証はあるかい?」
そう兵士に聞かれたルートはポケットの中から取り出した。
「はいっ」
「坊や、君一人で来たのかい?」
「これでも立派な冒険者だよ」
ルートは口からスラスラと嘘をついた。
「この街にきた。目的は?」
「もう、冒険者なんだから目的はモンスターを倒してお金を稼ぐことだろ」
「はっはそうだな、スマンスマン。でもこれだけは気をつけろ。あんまり人気のないところや、夜なんかは外に出歩かない方がいい。最近、人さらいやら、強盗やらあるから、君みたいな男の子でも奴隷として売られるかもしれない。十分、肝に銘じておけよ」
この兵士は実に思いやりがある。初めてきた人にここまで親切に注意してくれるなんて。
「うん、分かった。ありがとう、兵士さん」
「おう、気をつけなよ坊や」
そうお礼をするとルートは街に入った。兵士はルートが女の子だとずっと気がつかなかったようだ。
街の中は賑わいを見せていた。様々な商品を商人が店に卸して、店頭には見たこともないような食べ物が売られていた。
ここはこの街のメインストリートのようだ。街にいるのはやはり、半分が人族であるが猫人族や犬人族などの種族も見られる。
しかし、ルートが目にいくのは虚ろな目をして、主人らしき人物の後ろを歩く奴隷達だった。
英知の書から聞いたら話しでは奴隷にもランクがあるらしく、種類は無印奴隷:私用奴隷で商人がお金をかけて教育し、購入者との奴隷契約により購入者の命令を強制させる。烙印奴隷:国有の奴隷で国がかける強力な魔法で烙印を押し強制的に主人の命令を聞かせる。烙印の保有国からは出られない。廃棄奴隷:奴隷としての調教や主人の暴行などにより心身共にボロボロになり廃人と化した奴隷と分けられる。
ほとんどの烙印奴隷が一般的だが、お金持ちなどは無印奴隷を買うみたいだ。値段も高い。
ルートはそんな奴隷を見ていると悲しくなってくる。
あんな可愛い顔をした女の子が死んだような目をしているのは俺は耐えられない。女の子の未来をなんだと思っているんだ。
ルートはせめて自分のハーレムのメンバーになる女の子には苦しい思いは絶対にさせないと誓った。
今日のところはまずギルドとやらに行って素材の換金をすることにした。
商人に買って貰おうとしたが、モンスターの素材はギルドを通すことが暗黙の了解になっているらしい。
商店が立ち並ぶ道を歩いていくとひときわ目立つ立派な建物が見えてきた。
どうやらここがギルドだ。
ギルドの中に入っていくと酒の匂いがした。酒場とギルドは同じ建物ないにあるみたいだ。
酒に酔った冒険者達がうようよいる。ところどころに女の冒険者もいるようだ。
辺りを見ても俺と同じくらいの歳の子はあまり見かけない。
受け付けとところまでいくと綺麗な女の人がいた。
「ようこそ、ガーシルギルドへ。今日はどのようなご用?」
女の人は元気に応えた。
「今日は素材の換金にきました」
「そうなの、じゃあまず証明書を見せて」
ルートは証明書を出した。
「ふむふむ、君は14歳なんだ。冒険者になりたてってことね。今日は家の人に頼まれてきたの?」
この世界では冒険者になれるのは14歳からだ。
「ううん、違うよ。ボクには親がいないんだ。叔父の家で暮らしてたけど、嫌になって出てきたんだ」
「君みたいな男の子が一人で暮らすのは、大変だよ。冒険者になりたてだとお金もあんまり稼げないし、これからどうするの?」
身分証を男の子にしておいたのはこっちの方がなにかと都合がいい。受け付けのお姉さんは心配そんに尋ねた。
「まぁ、なんとかするよ」
子供っぽく、ルートは元気に応えた。
「そう、じゃあ、ギルドメンバーに登録したらどう。お金が少しかかるし、ギルドの義務とかも発生しちゃうけどギルドカードを作れば換金価格が10%アップするよ」
ルートは考えた。10%アップは嬉しいが自分としては何にも縛られない自由な旅しようと思っていた。
「いいや、義務とか面倒くさそうだし」
「分かったはじゃあ、今日は何を換金するの?」
「これだよ」
ルートはパブラフの森で採ってきた素材を少し出した。あまり多く出し過ぎて注目されても困る。
「はい、これね……。ちょっと待って、えっこれって、奥の方で調べてくるねっ」
お姉さんは慌てて素材を持っていった。
何かまずったかなと少し不安になりながら待っていた。
すると奥の方から一人のおじさんが出てきた。
「坊や、ちょっと奥の部屋に来てくれるかな」
そう言うとおじさんはルートの手を引いて連れていった。
「この素材はどこで手に入れたんだい」
俺は部屋に座らせられて、質問された。
「パブラフの森の近くで拾ったんだ」
そう返すとギルドのおじさんは少し声を大きくして言った」
「これはパブラフの森でも最深部にいるメイジイーグルの羽根だ。子供の君が採って来れるものじゃない。一体どこから盗んできたんだ」
そう言われるとルートは少しむすっとして応えた。
「ボクは盗んでなんかいない。それはボクのだ‼︎」
「そうかい、そうかい、君はあくまでシラを切るつもりだな。認めたら、今回のことは不問にして役所には申告しないで買い取ってあげようと思ったがしょうがない。これはギルドで没収する」
そう言い残すとおじさんは素材を持っていった。そして、ルートはギルドから追い出された。
「くそ、なんなんだよ。俺は嘘をついていないのに」
ルートは呟いた。すると英知の書がいきなり開き、文字が浮かんできた。
"主、あいつは嘘をついている。ギルドの職員なら鑑定魔法が使える。勿論、主が持ち主だって分かったはずだ。あいつは主が魔法をまだ使えない子供だと思って騙したに違いない"
書にはそう書かれていた。これは前に人が多いところでは筆談をすると言う約束をしたからだ。
大人は汚いな。そう思いながらルートはギルドを後にした。
ヒロインは次に登場します。
地の文での主人公の呼称が「ルート」と「俺」になっていますが基本はルートでいきます。本の主人公の感情や吐露については「俺」でいきます。変になりますがよろしくお願いします。
話の都合上により一部変更します。
・無印奴隷→私有奴隷
購入者との契約により強制力がある
・烙印奴隷→国有奴隷
国にが発効する烙印により強制力がある。(国外には出られない)