俺の魔力と盗賊と
ドラゴンを倒した。
名前はフォレストドラゴンと言うらしい。左翼がほとんどなく、飛ぶことはできなかったみたいだが、あそこまで執念深く追って来るあたりは腐ってもドラゴンと言うことだ。
俺は美山が言っていたように足の速さは常軌を逸して速かったため、ドラゴンにすぐ捕まることはなかった。
普通だったら即死もんだろこれ。俺はそう思った。
足だけではなく、腕力にしても、瞬発力にしても、俺が死ぬ前の世界より、一回りも二回りも上でこれが女の子なのだからこの世界はどうなっているのかと思う。俺だけが化けものかもしれないが。
そんな感想に浸っていると英知の書が話しかけてきた。
「主、ドラゴンの中にある魔石を取りましょう。ドラゴンの魔石はドラゴンソウルと呼ばれ、凄まじい魔力を秘めております。この森は危険区域なため、人の手が及んでいなく、あのドラゴンも他より魔力を秘めているはずです」
そう言うと、英知の書は俺に催促してきて、そのまま俺は付いていき、心臓の辺りから魔石を取りし出した。
それはビー玉位の大きさだが、青く光り、今までに感じたことのないような魔力がした。
「凄まじいですね、主。これは500年かけて洗練されたドラゴンソウルです。このような物は滅多に出回りませんね」
英知の書はこれで龍の契約をすると良いと勧めてきた。
龍の契約とは自分の倒したドラゴンの魂と自分の魂を融合させてドラゴンから恩恵を受けるものだそうだ。
俺はすぐに龍の契約をした。英知の書が何かを呟くと魔石から色が消え、その代わりに青い光が俺の目の前に浮かんでいた。
すると、その光が俺の胸の中に入ってきて光の中から伝わる鼓動と俺の心臓の鼓動が同調するのを感じた。
これで龍の契約を終わったらしい。……何も強くなったとは感じないが。
「主、魔力が増えました。リボルバーを使ってみてください」
そう言われると俺はリボルバーを鞄から出して弾を込めて魔力を流しながら、引き金を引いた。
バンっと音が響き狙っていた木に穴が空いていた。
よっしゃー、これで俺の魔力の問題が解決した。明日からは魔術の練習を始めよう。俺はそう意気込み新たな家を作った。
そして、今日ゲットしてきた二番目に硬い強度をもつ鉱石で新斬影刀とリボルバーを深夜まで掛けて作っていた。
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それから何日かが経ち、魔法が中級まで粗方使えるようになった俺はこの密林を出ることにした。英知の書のお陰で安全に過ごすことができたが、この森だけで過ごすわけにはいかない。
俺はこの密林で得られるだけの素材を得て、万全の準備をして出発する明日を待った。
翌日、密林を抜けるために歩いていると前方から複数人の話す声が聞こえてきた。俺は息を潜ませなが近づき話の内容を聞いた。
「ガッハッハ、今日は大量だな。これだけ有れば一年間は遊んで暮らせる」
「そうですぜ、頭。村一つを破壊した価値はありあっしたぜ」
「頭も人が悪い、村の男を皆殺しにして若い女や子供を奴隷として売り捌くなんて」
「この位、下衆くなけりゃ盗賊なんてできねぇーよ。お前らも将来は俺みたいな下衆になれよ」
そんな言葉が聞こえてきた。
くそ、なんてことだ女の子を奴隷として売り飛ばすなんて人間のすることじゃない‼︎(←こいつも村の男のことを忘れているかなりの下衆野郎です)
こいつらは皆殺し決定だな。
俺は盗賊達の後をついて行った。そこには洞窟があった。
「英知さん、この洞窟の中には何人位の人がいますか?」
「24人ですね」
24人か以外と多いなぁ、でもこの恐ろしい強度と斬れ味を誇る新斬影刀と練習を重ねたリボルバーの前に出る奴はいないな。
良し、女の子の仇を取ろう。
百合の道を邪魔する悪の根源を抹殺するために支度を始めた。
その夜、暗視ゴーグルもどきをつけた怪し人物が洞窟の前に現れた。
「英知さん、敵はまだ洞窟にいる?」
「24人全員がいるようです」
「了解」
今日、仮住居でずっと魔力弾の改良をしていた。英知の書から得た知識で発砲時に出る音をなくした弾を開発した。これにより、敵に音で気付かれることなく撃てる。
かわいい顔をした女の子がマッドサイエンスティストみたいなことをしているのはこれはこれでいいと思った。
洞窟の前では見張りが2人立っている。
暗視ゴーグルを頭にあげて、移動魔法を使った。ドラゴンの恩恵より魔力が増えたことで魔法が使えるようになり、数種の魔法を覚えた。その一つが移動魔法の視線転移だ。視線転移は自分の視野が届く範囲に瞬間的に移動する魔法で目で一定の場所に集中すると移動できる。
そして、一人の盗賊の前に瞬間移動した俺は言葉を放った。
「こんばんは、盗賊さん。そして永遠にお休みなさい」
右手で、刀を抜くと同時に首を跳ねて向こう側にいる盗賊を左手にあるリボルバーで撃ち抜いた。
全く音のない一瞬の出来事だ。
見張りを片付け、洞窟の中を進んだ。途中で宝を守っているだろう盗賊を始末して、奥に進むと広いホールのような空間に出た。
そこから、下の方を見ると今朝見つけた盗賊の頭らしき人物と子分達が酒を飲みながら騒いでいた。
「今日、見つけたあの銀色の耳をした狼人族の女は上玉だったな。あれなら、俺が1回犯してもよかったな」
「そうですぜ、なんせ未だ処女でしたからねぇ〜。あんな高値で売れるとは思いませんでした」
「次からは処女の女をさらって売ればまた、儲けれるに違いない。笑いが止まんねぇーな」
ガッハッハと下品な笑い声が洞窟に響き渡った。
なんだと狼人族?その獣ミミ少女を売るだと‼︎ふざけやがって百合ハーレムを目指す俺の敵だ。この世の地獄を見せてやる。グッシッシ
そして、魔法を使った。
「ブラックアウト」
そう唱えた瞬間この洞窟内にある全ての火が消えた。
「なっ‼︎何が起きた。暗くて何も見ん、早く誰か火を持って来いっ」
「へっへい!」
下の方では灯りが無くなった事により、盗賊達は慌てふためいていた。
こちらには幻想工作で作った暗視ゴーグルもどきがあるため、盗賊達の慌てぶりがよく見える。
「よし、英知さん、下におりるよ」
そう言って、風魔法を使い音無く降りると少しずつ盗賊に忍び寄り静かに斬り伏せていった。
盗賊は何が起きているのかも分からずに死んでいるに違いない。
「主は鬼でございますね」
英知の書がそう言い終わると俺は最後の子分を斬り終えた。
少しずつ静かになっていく洞窟に盗賊の頭は不安の色を隠せないでいた。
「おっおい‼︎お前らどこにいった。一体なんの真似だ。返事をしろ‼︎」
「はい、分かりました」
俺は頭に返事を返した。
「ホワイトアップ」
そう言うと今まで消えていた火が一気について辺りを照らした。
そこに広がっていたのは見事に体と頭が分断された20を超える遺体と血の海だった。
「こっこっこれは、全ておっお前がやったのか‼︎」
俺はその問いに刀についた血を布で拭きながら、ニヤリと笑って盗賊の頭に近づいた。
「やっ止めろ‼︎俺に近づくなこの化け物がぁー」
そう盗賊の頭は言い放った。
「ボクの名前はルート。この洞窟に迷っちゃったんだ。おじさん出口知らない」
俺は子供っぽい声で尋ねた。
「なんだ未だ、ただのガキじゃねぇか。おいっお前ここにどうやって入った」
冷静さを少し取り戻した盗賊の頭は少し笑っていた。俺は刀を鞘に収めた、次の瞬間っ
「へっ最後の詰めが甘かったな。俺はこう見えて移動魔法がつかえるんだよ。お前の高そうな刀は頂いた。命が欲しけりゃそこに跪け、殺しはしねぇー、たっぷり犯してから奴隷として売ってやるよーはっはっはっは」
下衆な笑い声が響いていたがバンっと銃声がかき消すように鳴った。
「がっあっあっああー‼︎、俺の右足が、俺のあっあ」
後ろにしまっておいたリボルバーで頭の足を撃ち抜いた。弾は音でる魔石弾にしておいた。そして、頭に近づきながら質問した。
「ねぇー、今日奴隷として売った銀色の耳をした少女は今どこにいるの?」
「ハァッハァ知るかよそんなこと。今ごろ誰かに買われて慰みものにでもなってんじゃないか」
バンっまた銃声が鳴った。
「ぐぁっあー‼︎左もハァッよっよくも、くそぉ‼︎」
「どこに売ったのぉー、それ以外は聞いてないよ」
「知るかぁよ、誰が教えぇ」「バンっ」
またまた銃声が響いた。
「がぁーー‼︎分かった言うっ言うよ。……ここから5キロくらい先に行ったとこにあるガーシルって言う街だ。そこのアッバス奴隷商館てとこに売った」
「その奴隷商と売った女の子の名前は?」
俺が冷たく尋ねる。
「ハァッ奴隷商は、ミハエル・アッバスでハァッハァ奴隷の女はミーシャだ。これでいいだろ、助けてくれ」
そうして悲痛な叫びをあげる、盗賊に俺は笑いながら声をかける。
「ありがとう、おじさん。お礼にその痛みから解放してあげるよ」
そう告げると盗賊に取られた刀を拾いあげ、盗賊の両腕を切り落とした。
「あぁー‼︎畜生、畜生、覚えていろよ。呪い殺してやる、絶対に‼︎」
俺は「呪われるのは嫌だなぁー」と言って手榴弾を盗賊に投げ与えてホールを後にした。その後に爆音が聞こえたかと思うと洞窟内は本来の静けさを取り戻した。
洞窟内にあったお金や道具はちゃっかり全て持ってきた。
「これで悪者退治は終わったね、英知さん」
「いやはや、どちらが悪者なのか途中から分からなくなりましたよ」
この英知の書の回答にそうかもっと笑った。
「次の行き先は決まった。ボクはガーシルって街に行こうと思う。英知さんもこれでいい?」
そう尋ねると英知の書は
「主の好きなように致したら良いのではないですか」
と応えた。
俺らは夜が明け始めた森をまっすぐ歩いて行った。
次はいよいよヒロインが登場するのか?主人公の百合ハーレムは一体どうなっていくのか?頑張って書いていきます。