いきなり、逃げる。
はっはっはっ、俺は息を切らしながら全速力で走っていた。
「なんで、モンスター、しかもドラゴンに追われる事になってるの‼︎」
恐ろし咆哮と凄まじいスピードで追い上げてくるドラゴンを背にして叫ぶとそれに英知の書が呆れながらに応えた。
「それは、主が我の忠告を無視して素材を欲張るからこんな事になるのですよ」
英知の書は自分は関係がないとばかりに余裕だった。
「仕方ないじゃん、モンスターに一回も遭遇せずに洞窟の最深部まで行けて、目の前にこの世界で二番目に硬い鉱石が大量にあったんだもん。欲しくなるでしょ」
俺は何の苦労もせずに素材をゲットできていたので調子に乗ってしまった。
「いや〜、あそこまであからさまにドラゴンが守っていて、動かないからいいだろと言って採ってしまう主には感服します」
「そんな事よりもこの状況を何とかする方法を考えてよ‼︎」
これは俺が素材を集め始めて3日目の事だった。
〜3日前〜
素材を探して4時間、外が暗くなり始めてきたため素材集めを中断することにした。
「英知さん、幻想工作って知ってる」
「ハイ勿論、主はその能力がおありで」
「うん、まぁね」
数時間の間に英知の書の物腰が柔らかくなったような……まぁいっか。俺は自信なさ気に応えた。なぜなら、幻想工作に魔力が必要だった場合、魔力が著しく少ない俺にとって宝の持ち腐れだからだ。すると、英知の書は
「では、魔力の少ない主にはピッタリなギフトですね」
「えっ」
「幻想工作は素材の中に含まれる魔力を使うため、本人の魔力は使いません。魔力のないものはこの世界にありませんから」
俺は初めて美山に感謝した。ここまでの事を考えて俺にギフトをくれてありがとうございますと。
「では主、日が暮れて来ているので今日の寝床を作りましょう。一階建てのログハウスくらいでしたらすぐに作れるでしょう」
そんな簡単にできちゃうの。家建てるのが。俺がポカンとしていると英知の書が続けざまに言った。
「普通は難しいでしょう精密なところまでをイメージしなければならないので、しかし我が主の記憶媒体に我の知識を転写するので簡単でしょう」
これこそチートでしょ。俺が凄いんじゃなくて外堀が優秀なだけでしょ。マジで神だわ美山。そう俺が歓喜して、すぐにログハウスの建築に移った。
英知の書曰く
第一に素材に手を添える。ログハウスの場合そこら辺に生えている木に手をつけた。
第二に精錬と頭の中で唱える。すると木々が余すところなく木材に変わった。これをログハウスを建てる分だけ用意する。この作業が一番疲れる。
第三に加工した木材の中から滲み出ている魔力を感じながら目を瞑り頭の中でログハウスをイメージする。英知の書の助けで頭の中に設計図が浮かびイメージがしやすかった。
最後にまた、頭の中で幻想工作と唱える。
すると目の前に立派なログハウスができていた。
……凄すぎるだろこのギフト。何がチートはあげられないだ。
俺はログハウスに入る前に英知の書で結界を張る魔方陣を調べて書き(魔方陣は魔力が要らなかった。変わりにとても複雑だったために時間がかかり二度と書かないと誓った)、周りからは見えないようにした。
家の中に何個か家具を作って置き、今日採ってきた素材を確認した。
今日の素材
よく分からない鉱石いろいろ・なんかのモンスターの毛皮・薬草っぽい草数種類・凄く強そうなモンスターの皮・光る綺麗な石……以上。
やっぱり持ち運べる量は少ないな。英知の書に聞いてレアっぽい素材だけ持ってきたが鞄を作るべきだな。英知の書に聞いてみるか
「英知さん、この中の素材を使って何か凄い道具作れない?」
「ふむふむ、そのモンスターの皮と中魔石を使えば、魔道具:底なしの鞄が作れるが…底なしの鞄は素材が無限に入る鞄です」
中魔石?あっこの光る石ね。なるほど、この森は凄いな魔道具に使われる素材がそこら辺に落ちているんだから。
でも、これで素材の運搬は楽になる。そうして、俺は底なしの鞄と薬草でポーション(名前が面倒くさかったので勝手につけた)と鉱石でナイフ、毛皮で服を作り、その日は寝た。
そうして、2日が過ぎて、鏡を作ることができた。顔は前の自分よりもシュッとカッコいい感じになっていてしかし、どこかにあどけない女の子っぽさが出ている、多分14歳位だろう。髪は肩につく位の短さで瞳と同じく黒。身長は160センチくらい、胸は断崖絶壁だがスラーとしたスタイルだ。男の子見たいな女の子って感じだな。申し分ない、悪くないできに俺はニヤニヤしていた。
ちなみに今の装備はこんな感じだ
装備※モンスターの名前は英知の書に書いてあるままで
大きめのツインヘッドベアーのミリタリージャケット
薄めだが丈夫なアイアンスネークの胸当て
伸縮性のあるダッシュラビットのパンツ
ポイズンサラマンダーのベルト
スリーホーンパイソンのブーツ
これがいまの防具、俺の趣味が全面に出ている仕上がりになった。
武器は
斬影刀ー八雲ー(命名は俺)
コルト・パイソンをモデルに作ったリボルバー:これは英知の書に書いてある魔道機関を見てオリジナルで作った仕組みを採用したものだ。魔石に大量の魔力を流すことで爆発を利用して火薬と同じ威力のスピードで弾丸を出す。
しかし、俺は魔力が少ないから、いつか使える日が来ることを願っている。
これを腰のベルトに帯刀(まだ、リボルバーは使えない)して、抜刀の練習をした。
そして、今に至る。
〜現在〜
「ど、ど、どうしよう。このままだと完全にあいつの餌になっちゃう。何とかして、英知さん‼︎」
「無茶を言わないでください。我は知識は与えられても、攻撃愚か防御もまともにできません」
何か、良い方法はないか……あっ!
「そう言えば、ボクの家に大量のニトロ岩を置いてあったよね」
「そうですが」
ニトロ岩とは強い衝撃を与えると爆発する岩である。某ゲーム会社の「モン○ターハ○ター」のタル爆弾のような物を作ろうとして保管してたものだ。
「それにドラゴンを突っ込ませてこの試作品の爆弾を投げ入れれば倒せるんじゃない」
「それなら、いけるかもしれないです」
俺はマイホームまで走った。
ドラゴンはしつこく付いて来てあと数メートルで食べられるところまで来た。
そして、家に差し掛かったとき
「これでも、食べてな」
と言って俺は爆弾を家の中に投げ入れた。次の瞬間、凄まじい爆音と共に爆風が吹き、俺は飛ばされて木に背中を打った。
「んー、イタっ……ドラゴンはどうなった?」
そうして家の残骸を見てみると首から上がなくなったドラゴンの遺体が焦げて残っていた。
「何とか、助かったかぁ〜」
俺は地面に座り込み、震える足を抑えながら、安堵と表情を浮かべた。
年齢を書いていなかったので14歳にしました。