初めての異世界
「ん〜、イタタ、ここは」
身体中から痛みを感じながら俺は目を覚ました。
「今日、二回目だよ。身体を痛めながらの起床は」
俺は世界管理局で美山との会話を思い出しながら、先ほど良くあるドッキリの仕掛けのような装置によって落とされたことを思い出した。
「あいつら、俺に悪いことしたとか思ってないだろ。間違って殺しておいて…」
自分が少し汚れているが服を着ていることを確認し、悪態をつきながら、今の自分がどのような状態にいるのか確かめ始めた。
「確か、転生が何ちゃらって…あっ‼︎」
そうだよ、転生。俺は女の子になって転生することを望んでいたんだ。でも、美山の野郎が勝手に設定したおかげで--。
俺は急いで自分の身体がどうなっているのか確かめた。
「胸は……ないっ‼︎男の夢が詰まった二つの柔い丘が見当たらない」
俺は絶望した。転生してまでも男だったら潔く死のう。そう、決意した時、不意に自分の股間部分に違和感を感じ、手を伸ばして見ると
「あれ、ないなぁ。男のシンボルとも言うべきあれが……ってことは」
自分の夢がここで実現して俺は歓喜の声を上げた。
「俺は女の子になったんだぁーーーー」
嬉しさのあまり、その場に背中から倒れこんだ。でも、おっぱいはなかったな。前世の俺と同じくらいに…、あと自分の顔も確認できないなぁ。早く見たい。
自分が貧乳であることをここを悟り、容姿が分からないことに気づくと冷静さを取り戻した。
「まずはここが何処だか確かめないと」
そう思い周りをキョロキョロ見渡すと
「なんで、薄暗い密林なんだ」
そう、今、俺がいる場所はどう見ても密林。森ではない、アマゾンとかのあれだ。なんか湿度高いし、木が生い茂ってるし、なんか変な鳴き声とか聞こえて来るし…。
俺はその密林の中の比較的木が無く、光が射す、いわゆるギャップと呼ばれるところにいたのだ。
そうやって状況を把握しながら、体を動かすと自分がいたすぐ横に手紙とその下に一冊の本が置かれているのに気が付いた。
「いったい何なんだこの本は」
その答えが手紙に書いてあることを願って読み始めた。
"この手紙を読んでいるのでしたら、うまく転生できたみたいですね。どうも、こんにちは美山です。まず初めての手紙ですね。いろいろ書きたいのは山々なのですがこちらにものっぴきならない事情が有りまして、手短に話します。まずは貴方に与えた幻想工作について説明しましょう"
美山の長い前置きを飛ばして読み進めていった。
"幻想工作は自分の思い描いたものを具現化し、また魔法などを付呪することができるギフトです"
なんかいきなりチート臭がプンプンするような感じがする。
"しかし、二つだけ注意しなければならないことがあります。一つは作りたい物のイメージが正確でなければなりません。二つ目は作りたい物と同じ材料を揃えなくてほいけないことです"
そうか、なるほど。これだとそこまでチートってわけでも無さそうだ。
"あと、魔法に関してですが…"
魔法はとても重要だ。魔法有りきの世界だとあった方が断然、強みになる。
"全魔法解放という事にしておきましたから、使えない魔法は無いと思います。しかし"
しかし?
"元々の魔力保有量が著しく少ないため、魔法はほぼ使えないと思います。これはそちらの世界で何とか考えてください"
はぁ、だったら全魔法解放ってやつ、全然意味がないじゃん。こいつ馬鹿なんじゃない。俺は心の中で美山を罵倒した。
"最後になりますが、この手紙と一緒に置かれていた本についてですが……こちらからはなんとも言えませんので最初に自分の血を一滴本に垂らしてみて下さい。では、また"
最後まで読み終わるのを見計らったのか、手紙は突然に燃えて消えてしまった。
「なんか、次から次へと謎が増えて行く」
そう呟くと俺は手に持っている謎のほんを開き、そこらへんの鋭利な枝で指に傷をつけ血を一滴、本のページに落とした。
百合百合の道はまだまだ険しそうです。