転生前の一仕事
「俺、女の子になれますか?」
「あ、いえ、勿論なれますよ」
美山は俺の唐突な質問に驚きながら答えた。
遂に俺の念願だった夢、自分で百合を体験するが叶う。今日は赤飯だ。と俺は舞い上がっていた。すると、美山が
「こんなに喜んでくれるなら、こちらとしても幸いです、しかし、渡会さん、すぐに転生できるわけではありません。その前には準備がありますので」
「では、すぐに、今すぐにやりましょう。その準備とやらを」
もう俺の頭の中には百合の二文字しかなかった。
俺は美山に連れられて一つのノートパソコンの前にきた。
「これから、あなたの転生先を選んでもらいます。今後のことに関わりますので慎重に選んでください」
そう言うと美山はパソコンの画面にある「世界リサーチ」という場所をクリックした。
「この世界リサーチであなたにあった世界を検索します。好きなキーワードを入力して下さい」
俺はまず「魔法」と入力した。
"1000件以上の世界が検出されました。さらに、絞り込みを行いますか?"
と表示された。すると美山が
「渡会さん、世界は無数にあるんですよ。そんなちまちまやっていたら何年経っても転生なんてできません。ここは一気に5個くらいキーワードを入れて下さい」
俺は美山に急かされながらも入力を続けた。
「魔法・獣人・エルフ・人間・ドラゴン」
"1000件以上の世界が検出されました。さらに、絞り込みを行いますか?"
少しだけため息をして美山が言った。
「そんな、在り来たりねキーワードだと絞り込むことなんてできませんよ。では、違うやり方でも試しましょう」
確かに考えて見ると安直だった。こんなの日本の小説だと無数にある。美山は新しい検索方法を勧めた。
「これはどうですか、名前は『地球と比較でリサーチ』です。いろんな尺度で地球と比べて検出しますよ。勿論先ほどの検索結果から」
ふむふむ、確かに面白いし、分かりやすい。例えばこの「地球との大きさ比でリサーチ」とか「地球との平和比でリサーチ」とか。
俺はさらに検索を続ける。
「じゃあ、地球の5倍の面積の星で少しだけ平和、通貨は統一、貴族とか王族とかがいて、さらに気候的に過ごしやすく、海がある世界」カチッと
"5件の世界が検出されました"
結構絞れたな。俺はこの5つの世界から選ぶことにした。
横で美山が唸っていた。
「うむ〜、地球の5倍もある星で一気に少なくなりましたね」
俺はそう呟く美山にさらに注文をつけた。
「地球でのヨーロッパ、中世みたいなところを選んでください」
そう言うと「わかりました」と返事をして美山は詳しい内容を話しはじめた。
「では、この3つの世界ですね。一つ目の名前は『ルームハイツ』地球と同じくらいの環境で最近は目立った戦争もなく平和な世界です。まぁーわたし的にはあまり面白い世界とは言えませんね。
そうだな。あまりにのどか過ぎると異世界に転生しても楽しくないし。
「二つ目は『クラシュリー』若干海よりも陸の方が多い気もしますが、生き物も豊富ですし、人間の様な種族も沢山いますね。あ、砂漠が多い、陸地の半分が砂漠ですね」
砂漠はやだなぁ。暑そうだし、転生してまで砂漠には行きたくない。
「最後は『サルヴィニア』こちらは海と陸が半々くらいで生き物も多く『クラシュリー』と同じくらい種族もいますね。でも、戦争もあり、奴隷制があって少し殺伐としています、さぁ、どれにしますか?」
「最後のところ」
俺はすぐに答えた。少し殺伐としていた方が転生しがいがあるじゃん。
「なるほど、渡会さんが宜しければそれでいいでしょう」
と言うとすぐに違う場所へと連れられていった。
「渡会さん。あなたのいく世界ではギフトと呼ばれるものがあるらしいです。なのであなたにもそのギフトと言うものを贈ろうと思います」
「ギフト?」
いきなり専門的な言葉が出たが多分スキルとかのことだろう。しかし、
「美山さんは最初にチートスキルはあげるられないって言ってなかったですよ」
そう、美山はチートは無理だと話していた記憶がある。割とあやふやだが…。
「なにせ、あなたの行く『サルヴィニア』では人口の3割がこのギフトやらをもっているみたいなので、せっかく転生するのでしたら少しは楽しい方がいいと思いまして…いらないのでしたら無理せずに」
「いや、絶対いりますから、てか、ないと困りますから」
俺は全力で答えた。スキルとかあった方が絶対に特だろ、人口の3割だと使えるだけで凄いじゃないか。そんな考えをしていると美山が
「では、ギフトは幻想工作に致しましょう」
「え、なんでもう決まってるんですか?」
すると美山はおもむろに何かを入力した。
「ハイ、これで全ての設定が終了しました。お疲れ様です」
「えー、ちょっと何やってるんですか‼︎俺まだギフトに関しても何も意見できてないんですけど、それと全てってキャラクターメイキングみたいなのも終わっているんですか?‼︎」
「キャラクターメイキングが何かは知りませんがあなたの魂が入る身体も設定しましたが、何か問題でも?」
俺は一番楽しみにしていたところを飛ばされて何言えなかっ…わけないだろ、マジかよ、これでまた男とかだったりしたら俺はどうすればいいんだ、なんのために異世界に転生するのか分からないじゃないか‼︎
俺があたふたしている間に美山は何かスイッチらしきものを押していた。ガコン
すると、俺の立っていた床が無くなり、俺は地面へと吸い込まれていった。
上から見下ろすように覗き込んでいる美山の顔が小さくなっていき、俺の落下速度が加速していった。
「大丈夫ですよ。渡会さんの悪いようには致しません。こちらからも手紙を送りますからぁー」
と言う声が小さくなりながらも聞こえて、俺は意識を失っていた。
これで序章は終わりです。次からやっと異世界、早く百合展開が書けるように頑張ります。