表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

シリーズ 『LOVE AFFAIR』

職業的恋愛事情Ⅱ

作者: 美籐

職業的恋愛事情

とある日本人キュレーターと英国人テニスプレイヤーが、雨宿りに入ったカフェで出会ったら。

イギリス、フィッツウィリアム美術館から出た武市蘭子は外の空気をひとつ吸って歩き出した。

そこは街の名前が付いた大学がある学園都市であり多くの学生の姿が見られた。

蘭子もそんな若者たちに混ざっても違和感のない若い顔立ちをしている。



***



慣れない場所、慣れない職場環境、正直体力的な疲れよりも精神的な疲れのほうが大きい。

上司の旧友だと言う人の頼みじゃなければボストンから大西洋を渡って、イングランドの東にまでわざわざ来ないだろう。

とは思いつつもフィッツウィリアム美術館のコレクションには興味をひくものが多くあり、私自身楽しんでいるのも事実だ。



しばらくの宿としているホテルに帰ろうと歩いていると突然のにわか雨に見舞われた。

傘も持っていないので雨が止むまで雨宿りしようとカフェに入る。


店内に入ってドアの前で服に付いた雨水をハンカチで拭いていると、またドアが開く音がして続いて男性の声が聞こえてきた。

「Can I come in?  [あれ僕、入ってもいいかな?]」

「I'm sorry...No offense meant. [ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったんです。]」

「Of course, I know.  [もちろん分かっているよ。]」

すると目の前の男性はあーとか、うーとか言い始めた。どうしたものかと首を傾げていると、聞き慣れた母国語が聞こえた。

少しぎこちないがきちんとした日本語だった。


「もしかして、大学生?」

「いいえ、大学はとっくの昔に卒業しましたから。」

「本当?ケンブリッジの学生だと思ったよ。そうだ!お詫びにコーヒーをご馳走するよ。」

「いえ、気にしないで下さい。」

童顔のせいで30歳にもなって学生に間違われることは珍しいことではない。

「本当はね、僕が君ともう少し話したいんだ。」

ストレートにそう言われてしまっては断れない。

窓の外を見ると雨が止む気配はないし、コーヒーをご馳走になることにした。


その人、名前をジムと名乗った。どんな仕事をしているかは言わなかったが、あえて突っ込んで聞くことでもないだろうと思ったので、私も名乗るだけで返答した。

「ランコはどうしてこの街に?」

「私、美術館で働いているんです。それで帰る途中で。」

「フィッツウィリアム美術館?」

「あちらには仕事で来ています。いつもはボストン美術館で働いています。」

「わざわざボストンから来てどんな仕事をしているの?」

「私の専門は日本美術なので主に日本美術品の整理のお手伝いを。」

「日本美術!それはステキだ!僕は日本にとても興味があるんだ。」

「日本語お上手ですものね。」

「本当?変じゃないかな?まだまだ勉強中なんだ。今は漢字を覚えたいのだけれど、難しくて。」

それから日本語や漢字のことをあれこれ聞かれた。

雨はすでに止んでいたが、彼との話が途切れることはなかった。


日本に興味を持っているというだけでも好印象であるが、まるで子供のようにキラキラした目で話す彼と過ごす時間は楽しかった。


「また君とは話したいな。」

「ええ、また会えたときには是非。」

時間を忘れ話していたが、彼のほうにはこのあと予定があるらしく、惜しむようにして店の前で別れた。


おそらくもう会うことはないと思っていたが、まさか2ヶ月後にまた会うことになるなんてこの時は思ってもいなかった。



その日はいつものように自分のデスクで仕事をしていた。すると同僚がやって来て私に会いに人が来ていると告げた。

それは決して珍しいことではないが、同僚の様子からいつもとの違いを感じとった。


「When and how did you met a personality?  [ランコ、あなたいつどこで有名人と知り合いになったのよ]」

「A personality? I don't even know what you are talking about. [有名人?話が見えないんだけど]」

「Don't try to deny it.   [誤魔化そうったってダメよ]」

詳しく聞かせてもらいますからね、とたいへんな剣幕で迫る同僚を振り切り、とりあえず席を立つ。

仕事の関係者であの同僚が興奮する有名人なんていたかしら、と思い出しながら応接室のドアを開けると、そこに居たのは数ヶ月前にカフェでコーヒーをご馳走になった、あの男性だった。



「ジム?…どうしてあなたがここに?」

あまりに予想外の人物につい慣れた母国語が零れる。

しかしそれにかまわずジムも日本語で返してくれた。


「会いに来たよ、ランコ!よかった僕のこと、覚えてくれていたんだね。」

「ええ。でも有名人だって言うから全然見当もつかなくて、驚いたわ。」

すると彼はそうだったのか、と驚いた顔になってカフェでは言わなかった自らのことを話し始める。

「僕の名前はジェームス・ウィリアム。君は僕のことを聞かないし、もしかしたら知ってるのかなって思っていたからあえて言わなかったんだけど、僕の仕事はテニスプレイヤーだ。」

そのときは彼の言葉の意味がいまいち理解出来なかったのだが、後日同僚から聞かされた話で、ジムことジェームス・ウィリアムが今急成長を遂げているプロテニスプレイヤーの1人だと知る。


それからジムがアメリカに来ることがあれば会って話したり、食事をしたりした。

その中で彼についてを知ることはどんどん増えていった。

例えば、小さい頃から兄と共にフットボールのプレイヤーを目指していたこと。

ある日見たウィンブルドン選手権のテレビ中継で日本人選手に釘付けになり、それをきっかけにテニスをはじめたこと。

その選手はテニスをはじめるきっかけであると同時に、日本に興味を持つきっかけであったこと。

何よりもよく笑う人だと知った。

あなたは感情が表に出にくいのね、とよく言われる私とは対照的に、彼はいつもニコニコしていて、周りの人まで笑顔にする力を持っていた。


何度も会ううちに私は彼に惹かれていくのが分かったし、彼も私のことを憎からず思っていることを感じていた。

はじめて会った時から約半年後、私の中で彼の存在は、カフェで会ったイギリス人から私の恋人へ変化したのだった。



***



ジムと付き合うようになって2年が経った。

その間に私たちの周りには、さらに幾つかの変化があった。

その1番大きなものを挙げるとしたら、イギリスで一緒に住むようになったことだろうか。


きっかけは私の先輩と久しぶりに一緒に仕事をしたという話していた時だった。

その先輩は今ボストン美術館を退職して、フリーランスのキュレーターとして仕事をしている。

「蘭子は独立を考えたことはないの?」

「え、私?」

「だってフリーのほうがもっと色々な仕事が出来るでしょ。それこそ君の専門分野のほうとか。」

「全く考えたこともなかったわけではないけど、デメリットの方が多いもの。」


独立してしばらくは収入が不安定になるだろうから、今住んでいるところにそのまま住み続けることは難しい。

だからと言って日本を拠点に仕事をするには、世界という壁は大きい。


「蘭子の能力を必要としている美術館はきっと世界中にあるはずだよ。」

確かにフリーなら自分の専門分野を中心に仕事が出来るし、より多くの作品に出会い刺激を受けるだろう。


「ここからは僕の個人的な意見なんだけど、蘭子がフリーになったら僕と一緒にイギリスに住めばいいと思うんだ。」

「そんなこと出来ないわ。一緒に住むなんて、あなたの負担が増えるだけよ。」

「君は僕と一緒住むなんて御免かい?」

「そんなわけないわ。」

お互いの都合が合わず会えないことの方が多い。決して言ったりはしないが、寂しいと思う時だって、一度や二度ではない。


「それなら考えてくれないか。僕のほうは全く問題ない。むしろ蘭子と一緒にいる時間が僕の支えになる。」

そんな過程があり、私はフリーランスのキュレーターになるとともに、ジムと一緒に住むことにした。



休日が合うことが圧倒的に増えた私たちは2人でフットボールの試合を見に行ったり、テニスをしたりした。

休日は部屋に引きこもっていたそれまでの私にとっては考えられないようなアクティブな時間だった。

また彼はイギリス国内では有名人らしく、街中ではよく声を掛けられるが、それもまた刺激的で興味深い体験だった。

イギリスに住んでいる今でもボストンに行くことは年に何回もあるので仕事の方では予想していたような大きな変化は無く、むしろそれ以外の部分で大きく変わったことのほうが多く、私の世界が広がった気がする。それもこれも彼のおかげだ。



そして変化といえば私の中のジムの印象も少し変わった。

恐らくそれはプロテニスプレイヤーのジェームス・ウィリアムに触れることが出来たのが大きな要因だろう。


ジムは勝ったときはすごく嬉しそうな顔をして帰ってくるし、負けてしまったときは残念そうな顔を見せる。それからその日の反省をその日うちに欠かすことなく行う。

そんな一連の行動は私が思っていたよりも普通で、彼にとってはあくまで仕事の一環なのだろうと思っていた。

落胆や無念さはその時々であっても、決して引きずるわけでもなく、また次の日にはあの笑顔で出かけていく。


けれどその認識はある出来事を機に大きく変わった。

それはジムの出身国、イギリスで開催されるテニスの国際大会、ウィンブルドン選手権でのことだった。

ジムはイギリス国内のテニスファンの注目を一気に集めながら決勝まで勝ち進んだ。もちろん彼自身もとても気合が入っているようだった。

帰宅時の表情がいつもより嬉しそうで生き生きとしていたようにも見えた。そういえば彼がテニスを始めたきっかけはウィンブルドンだったと思い出した。


久しぶりのイギリスのプレイヤーによる制覇が期待されたが、結果は惜しく優勝を逃した。そしてその夜、ジムは自らの心中をはじめて私に聞かせてくれた。

「僕にとってウィンブルドンは憧れであり目標だ。イギリス中のファンが期待しているのは知っているし、僕も優勝を目標に毎年参加している。けれどどうしてか気負いだけが先行して、自分を冷静に保つことが出来ないんだ。気付くと試合が終わっていた。もう、どうしていいか分からない。」


そこにはいつも前を見据えている頼もしいほどの瞳は無く、困惑と不安の色だけが表れている彼の姿があった。

初めて知るジムの気持ちと初めて見る姿。

かける言葉が見つからない私は、ただ何も言わずジムを抱きしめるしか出来なかった。



そしてまたあの季節がやってきた。

「あれ、ランコが専門書以外を読んでいるなんて珍しいね。」

ジムは私の手元にある雑誌を見て驚いた声をあげ、隣に座った。

その雑誌には6月の最終月曜日から開催されるウィンブルドン選手権に合わせて、注目選手としてジムのインタビュー記事が掲載されていた。

「いくら私でも、あなたの載っている雑誌くらい目を通すわ。」

「それは嬉しいね。じゃあもっと君に見てもられるように頑張らないと。」


その言葉の通り、始まった大会では圧倒的な強さで勝ち進んでいった。

相手にストレート勝ちを収めたというニュースを見ながら夕食後の時間を過ごしていた。


「まさに“破竹の勢い”ね。」

「“ハチク”?」

うつ伏せになってクッションに顔を埋めてリラックスしていたジムが私の独り言に反応した。

テレビのニュースに写っていたボールを追う真剣な姿とは対照的な締まりの無い格好に苦笑いが零れる。

「竹を割るときの様を例えた言葉よ。」

「竹か、見たこと無いから分からないな。いつか日本に行って見てみたいな。」

「一緒に日本に行ったことはなかったものね。」

「行きたいところはいっぱいあるんだ。大阪に京都でしょ、あと北海道。きっと美しい自然が待っているよ。」


明日が決勝だというのに呑気なものだと笑うが、内心では少し安心していた。

日本に思いを馳せるそんな姿も、ゴロゴロと床に転がって私と話す雰囲気もいつも通りだ。

気負いはあるだろうが、いつかの見たときような困惑や不安はない。



「明日の試合、君に観に来てほしい。」

やがてクッションから顔をあげて私に向き合うように座ったジムはそう切り出した。


私の予定が合ったときに試合を観に行くことはあっても、彼のほうからそう言われることは今まで一度もなかった。

きっとそれはジムにとって何らかの意味があるのだと分かり私は静かに頷いた。


そして次の日、決勝の試合が行われるセンターコートの観戦スタンドのチケットはとれなかったので、アオランギ・テラスで同じようにスタンドに入れなかった観客と大型スクリーンの前で試合開始を待っていた。


「ランコ?」

すると突然後ろから名を呼ばれた。

振り返るとそこにいたのは英国夫人を体現化したような初老の女性がいた。

「え?」

「あなたがランコさんね!」

「ええ…あのマダム?」

「説明はあとよ。早くしないと試合が始まってしまうわ!」

流暢な日本語でそう話すご婦人に引きずられるように建物の中に入ってゆく。

あれよあれよという間に気づくと私は所謂ファミリーボックスという席に座っていた。


初めて入るセンターコートが、まさかファミリーボックスとは。驚きはすでに通り越して、ただコート全体の雰囲気に圧倒されていた。

まだ試合は始まっていなかったが、観客の期待と興奮がひしひしと伝わってくる。


「よかった、間に合ったわ!」

「あ、あの。あなたは一体どなたですか?」

連れてきてもらって今更という気もするが、部外者の私をここに連れて来る辺り、ただ英国婦人ではないだろう。


「私?私はジムの母よ。もしかしてあの子に何も聞いてない?」

もちろん何も聞いていない。

勢いよく頷く私にジムのお母さんは、さぞおかしそうに笑う。聞くとどうやら写真と特徴と場所だけ伝えられて私を探しに来たらしい。

「あなたが何も言わないからてっきり聞いているのかと思っていたわ。」

「突然過ぎて…」

「ごめんなさいね。でも私テニスのことがよく分からないから、教えてもらえると助かるのだけど。」

「私、ちゃんと興味を持って見るようになったのは最近なので、お教え出来ることがあるかどうか分かりませんが、私でよろしければ聞いて下さい。」

「よかった!あの子の言う通りだったわ!」

「え?」

何があの子の言う通りなのか聞こうとする前に、コートをぐるっと囲むスタンドから大きな拍手と歓声が起こる。

決勝に勝ち進んだ2選手がコートに入ってきたのだ。その内の1人がイギリス出身で、且つ大会前から優勝候補の筆頭に挙げられていたジェームス・ウィリアムであれば、その歓声も一際大きくなる。


ファミリーボックスに座る東洋人に向けられる視線は様々あったが、一緒にいたジムのお母さんが私のことを紹介すると、ジムのコーチやトレーナー、友人たちは暖かい言葉で迎えてくれた。


大型スクリーンで見るつもりだった私にはこんなに近くで、しかもジムのお母さんと隣同士で座って見ているなんて思ってもいなかった。

試合中、時々あれは何?と聞くので私の知識を駆使して説明したり、一緒に声援を送ったりした。


ジムのお母さんは流暢な日本語を話すので聞いてみると、若い頃に日本に留学していたらしく、その時に日本語を習ったそうだ。

彼女がゲームの間にポツリポツリと話してくれたのはジムのことだった。

「あの子がテニスをはじめると言い始めたときは本当に驚いたわ。ある日突然よ、何の前触れもなくよ。」

テレビ中継でこのウィンブルドンでの試合を観て、居ても立ってもいられなくなった幼い頃のジムの姿が目に浮かび私も笑みが零れる。


「あの子はそういうことをあまり言わないけど、兄と比べられるフットボールが本当は嫌いだったのかもしれないわ。」

ジムのお兄さんは現在ドイツのフットボールリーグに所属するプレイヤーだと聞いたことがある。

小さい頃は優秀な兄と比べられたものだよ、と彼が笑って話していたことを思い出した。

あの時の顔にフットボールやお兄さんに対する負の感情は無かったように思う。


「ジムは自分の体の基礎になっているフットボールが大好きだし、感謝こそすれ恨んでなんかいないと思います。昔のことは誰にも分かりませんが、それだけは言えます。」

「そうね、あなたがそう言うのだからきっとそうだわ。」

ジムのお母さんはそう言って穏やかに笑った。



そして試合はジムが終始リードを保ったまま迎えた最終第3セット。

セットカウントは2-0と追い込んでいる。


ゲームカウント5-4。

デュースになったものの、先にアドバンテージを取ったのはジムだった。

マッチポイントを迎えたセンターコートには、観客の抑えきれない興奮がジムのサーブを待つ静寂の中に雰囲気として漂っていた。


ジムのサーブが相手コートに届く。

さらに返ってきたボールも難なく鋭い打球で返す。

その返球で若干体勢が崩される形になってしまった相手選手のボールは、ジムのコートに返ってくることはなく、ネットに当って地面を転がった。


その瞬間のスタンドが震えるように音を立てた。

ファミリーボックスのコーチやトレーナーが抱き合っているのも、スタンドで同じように抱き合って喜びを表現している観客や涙を流す人の姿も私の目に入ってこなかった。

勝利が決まった瞬間、ジムは天を仰ぎ握った拳を突き上げた。

その時、私は彼から目を離すことが出来なかったのだ。

それからファミリーボックスの方を向いて笑ったのが見えた。今まで見た中で一番きらきらした笑顔だった。


「あの子が勝ったのよね。」

隣でジムのお母さんが独り言のようは声が聞こえ、その時になってやっと意識が現実に戻った。

相手選手と抱き合い、健闘を讃えあった後、コートの周りをぐるりと歩き回りながら、観客の声に答える。

やがてジムはファミリーボックスのほうへ足を向け、観客の間を抜けながら、やってきた。


ジムがこの世界に入ったときから指導してきたコーチや、彼の心と体を支えてきたトレーナーと喜びのハグを交わす。

私がジムのお母さんと席に着いた時に、いつも話を聞いているよ、と冷やかし半分の暖かい言葉をくれたジムの友人たちともハイタッチやハグをしている。

そしてジムはお母さんの前にやってきた。

「Mom...」

2人の間にそれ以上言葉は必要なかった。ジムはただお母さんを抱きしめたし、お母さんも静かに手を回した。

その次は私の番だった。


おめでとう。良かったね。いい試合だったよ。

どんな賛辞も適切だとは思えなかった。私は何を言えばいいのか分からなかった

「蘭子、ありがとう。」

黙ったままの私にジムはそう言ったのだ。


ありがとうと言われることは何もしていない。

「そんなこと…私こそありがとう。」

そう言うだけで精一杯の私。彼は満足そうに笑ってくれた。

そして突然片膝を付くように、しゃがみこんだ。

どこか具合でも悪くなったのかと慌てていると、ジムは顔だけを上げて笑って言った。

「これから僕は君のために生きるよ。蘭子、僕と結婚してくれますか?」


後から聞いた話、ジムが跪いた時点で、周りの人にはそれから何が起こるか分かっていたらしい。

分かっていなかったのはランコだけだったね、と散々笑われた。


とは言え、そのときの私はジムの言葉の意味を理解し、ただ頷くしかなかった。

「答えは?君の言葉で聞きたいな。」

いつの間にか零れていた涙をぬぐいながらジムはなおも聞く。


「Yes、もちろんYesに決まっているじゃない!」




欧米で言うキュレーターと美術館の学芸員、厳密に定義すればちょっと違うんですが、ややこしくなるので割愛。申し訳ないです。


詳細は活動報告にて候ふ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ