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59僕の宝物

「アハハっ!今頃、由恵達びっくりしてるね!」



楽しそうに笑い出す美咲。


―事の始まりは僕が駅前へと着いた時だった―



一台の車に目が止まる。


車に乗ってるのは…智博。


…?


…今日、歩いて駅前まで行くから車で迎えに来いって言ってたよな…?


とりあえず、智博が乗っている車の前に僕の車を停める。


…しかし、そこである事に気付く。


智博の隣に誰か乗ってる…


僕は目を凝らしてルームミラーを覗き見る。



…由恵…だよな…?


由恵は風邪でもひいたのか、帽子をかぶってマスクをしていた。


…何してるんだ?


僕は不思議に思いながらもある事に気付く。


通りすがる男性が皆同じ方向を見ていた…。



…何度となく見てきた光景。


視線の先には…美咲だ。


美咲は長い髪をばっさりと切っていた。


…凄く可愛いのだけれども


美咲の切られた髪が、僕との関係を吹っ切ってしまった気がして…


僕の心に影を落とした。



…しかし…



目の前には美咲…



後ろの車には明らかに不自然な智博と由恵…。



…もしかして…



「美咲!」


僕は美咲に声をかける。


驚いた様子で戸惑ってる美咲。


「美咲…とりあえず車に乗らないか?」


僕の言葉に戸惑いを隠せない様子の美咲は、ゆっくりと車に近付くとドアを開けた。


「…マコちん…?何で?」

美咲は驚いている様子だったが…


「…いいから車に乗って!」


と、美咲を車へと促す。



〜♪



美咲が車に乗ると、直ぐに鳴りだした着信音。



…やっぱり…



美咲は電話に出ると、戸惑った様子で話をして電話を切った。



〜♪



…まるでタイミングを見計らったように流れだす着信音…


…相手は…


…智博…



僕は電話を切ると、ため息をついた。



…やっぱりな…



「…美咲、悪いけどちょっと付き合って!」



「…えっ!?」


僕は美咲の返事を待たずに車を発車させる。

美咲はかなり驚いた様子で僕を見ていた。



「…あのさ、気付かれないように後の車見える?」


僕の言葉に、美咲は訳がわからないまま車のシートに身を隠して後を振り向く。


「…トモと…由恵!?」


美咲は驚いた様子で僕を見つめる。



「…ああ、多分二人でくだらない作戦でも立てたんじゃないか?…バレバレだっつーの!」


僕はそう言いながら笑い出す。

美咲もやっと状況が理解出来た様子で笑い出す。


「アハハ!由恵、あれで変装してるつもりなのかな?」


「どう見ても、風邪ひいた由恵だよな!」


僕と美咲は二人で笑い転げる。



「とりあえずさ、引っ掛かったふりして一泡吹かせよう!」


僕の言葉に美咲も頷く。



…という訳でファミレスにやってきた僕等。


智博達も一足遅く入って来た。


しかも、僕等の後に座り始めた。


…もう少し隠れればいいのに…



僕も美咲も必死で笑いを堪える。



僕はわざと智博の話を面白おかしくし始めた。

智博が後からちらちら気にしているのがわかる。



そして


「…なあ美咲…二人で写真でも撮らないか?」


僕の言葉に、美咲も気付いて隣へと移動してきた。


そして二人で写真をとるふりをしながら…


携帯の画面にはちらちらとこっちを見ている智博と由恵の姿が…



もう、笑いを堪えるのに必死だった。



そしてその後はラブホに入るふりをして裏から抜ける…



…智博達は見事に引っ掛かった。



「もう、笑いたくてしょうがなかったよ!」


僕の言葉に美咲も笑い出す。


「アハハ!本当にお節介な二人だよね!」


本当だよ…



…でも僕は智博に感謝していた。


また美咲と笑い合えるなんて思ってなかったから…



僕等はそのまま海へとやってきた。


まだ明るい事もあり、風がとても気持ちいい。


美咲は短くなった髪を風になびかせて海を眺めていた。

僕はそんな美咲の姿を後から見つめていた。


「由恵のお節介っ!」


突然、美咲が海へ向けて叫びだした。

そんな美咲の後ろ姿が、笑っているような気がして僕も笑顔になった。

そしてそのまま


「美咲!髪、似合ってるよ!」


と美咲に向けて叫んでみた。

僕の言葉に振り向いて僕を見つめる美咲。そしてそのまま

「ありがとう!」

と言うと、笑顔を作った。


それが本当にキラキラしていて…僕の鼓動を高鳴らせた。



…ドクン…



僕は胸の高鳴りを抑えられない。


僕はまだ、こんなにも美咲を求めているんだ…




「…美咲!…僕、美咲の事諦めなくてもいいかな!?友達のままでいいから好きでいたいんだ!」


…僕の叫びに美咲が見つめる。


…ドクン…



ここからの距離じゃ、美咲の表情がわからなかった。


…ドクン…



美咲が大きく口を開く。



…ドクン… 


「いーよ!私もマコちんが諦められないから、友達でいてもいいかな!?」 


…美咲…



美咲の言葉に僕は笑顔が隠せなくなる。



「大歓迎!」



…僕等はそのまま笑いあった。




…ゆっくりだけど、確かに見え始めた美咲との未来。


繋がり始めたこの糸を、決して解く事がない様に…


そう心で誓いながら、僕は美咲との距離を埋めるように近付いていく。


美咲はそんな僕をキラキラした笑顔のまま見つめていた。






―あれから三年半―


僕の隣ににはいつも美咲がいた。 


僕は、僕の肩に顔を埋める美咲の長い髪を撫でる。 


「美咲?CM終わったぞ?」


僕の言葉に美咲はそのままで


「もうテレビは見ない!」

と言った。


…まったく…わがまま娘め


「…マコ…大好き…」 


美咲はゆっくり顔をあげると深くゆっくりキスをした


―僕の宝物―

ずっとこのまま、同じ時を刻みながら二人で歳を重ねていこう。



大切な大切な僕の宝物。



―完―

僕の宝物を応援して下さった皆様へ〜無事完結を向かえました!これからは少しずつ編集しながらより良い作品に仕上げて行きたいと思います。時間があれば、続編なんかも書いてみたいと思います。本当に御愛読ありがとうございました!〜バックハイ〜

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